35.魔力限定鑑定バンザイ

「俺は鑑定スキル持ってないけどな!魔力がどんだけ宿ってるかなんて魔法使いなら大体わかんだよ!」

「え、そうなの?俺鑑定かけないと全然わかんないけど。」

「おっ前鑑定までーっ.....いや、いい、お前が規格外なのはわかってる。魔力多すぎて一見なさそうに見えるのもわかる。」

「ーーー??」



意味が分からなくて、コテン、と首を傾げる。



「アキ君、シグナルの言う魔力わかるっての、嘘だから。魔法使いだからって、魔力どのくらい宿ってるかなんて、わかる人そんなにいないから。」

「いるにはいるんだ?ーーーでも、俺の魔力多いのは分かりづらいの?」



サルビアさんが捕捉してくれたけど、結局意味がわからない。


実は俺も人のオーラというか、生命の色みたいなのは見える。赤ちゃんとか凄く光が強くて、老人とかだと薄かったりするから、生命力かな、と勝手に思ってる。人となりと言うか、その人によって色あいも違うから、どんな性格してるとか、双子とかでも若干違うから見間違いは先ずない。


でもシグナルさんが言ってるのは魔力の大小だから、俺のとはまた違うと思うんだよね。ま、見えるように意識すれば鑑定みたいに見えるんだろうけど、鑑定があるもんだから、その仕様はいらない。


シグナルさんに意味を問うと、人や物の魔力が意識するとモヤのように見えるそうだ。大体は物の真ん中に、人なら心臓とかの周辺に。色もより濃い方が濃縮されてるそうな。

俺の場合、身体全体にあるそうで、集中せず全体にあるものだから一見すると何もないように見えるそうだ。あー、∞だから減らないしね。


「魔力限定鑑定バンザイだね?」

「ビミョーな言い方すんな。ーーで、この魔水晶、形は中型だけど魔力値大型よりあるだろ?純魔水晶じゃん。それが小銀貨1枚だと?馬鹿かお前。価値100分の1で言ってんじゃねーよ。」

「元を考えると充分ボッタクリなんだけど。」

「ああん?」



コソコソとシグナルさんに耳打ちする。

(「元は角ウサギの使い終わった魔石2個なんだ」)



「ーーーは......あぁぁぁぁぁああ!?」



煩い。シグナルさん、リアクション大きいなぁ。なんて呑気に思ってたんだが、肩を物凄い揺さぶられて念押しされた。



「おっ前っー.....!マジで他で言うなよ!!」

「みっっ、みみっ、みみうちっしたっじゃっんんんんん〜〜わっ、わかっわっかかったっっからっっ揺さぶんな!」



バシッと掴まれてた肩にあった手を引き剥がす。

舌噛むわ!



「あのー、アキ君、会って早々あれなんだけど、洗浄かけてくれない?あの髪サラサラを!あの肌しっとりスベスベをもう一度!」



サルビアさんがギャースカ言うシグナルさんを押し退けて俺の目の前に。おぅ、最初遠慮がちかと思ったら段々と前のめりに。



「はいはい。じゃ、ここじゃあれなんで、外に行きましょー。」



ぞろぞろとギルド外に移動する。肌しっとりスベスベ!の部分でギルドの受付嬢たちがグリンとこちらを凝視してたのは見なかった事にする。サンディさんに怒られる未来しか見えないから他の人は受付ませーん。



「じゃあ行くよ?息止めてーー?ーー「洗浄」」



いつもの温水と光が発生し、皆んなの身体がピッカピカになる。

たった3日でまたゴワゴワになってたブラウンさんの髪もうるツヤサラサラだ。

心待ちにしてたであろうサルビアさんは自分の髪や身体を触ってご満悦だ。



「ねぇ、気になったんだけど、ハク君はそうでもないのになんでブラウンさんはすぐ髪ゴワゴワになるの?」

「ーーえ?俺と兄さんの髪?ーーー髪の長さの違い?」

「使ってる整髪剤の違いじゃねーの。ブラウン、石鹸で全身洗ってるだろ。」

「ああ!洗えればなんでもいい!でもアキの洗浄受けると痒くなくなっていいな!」

「ブラウン、それ、石鹸で髪洗うから痒いのよ。ちゃんと整髪剤使いなさいよ。」

「む、そうなのか?」

「今まで疑問に思わなかったの?」



なんと言うか、豪快だ。痒いのに気にしないところが。



「そういえば、宿どうするかって話だったよな。俺達の泊まってる宿まだ1部屋くらいなら余ってるってよ。一応まだ更新はしてないから、今日までだな。ブラウンとハクは2人部屋だから、俺とアキの2人部屋でもいーし、1人部屋ずつでもいい。」

「あ、俺の泊まってる宿、お風呂出来たよ!しかも俺と俺の仲間限定で風呂代タダ!飯も旨いし難しいやつ以外の洗濯受付してくれて出した日含めて3日目の朝受け取れるよ!俺厨房の一角借りれる権利貰ったからこの街でなら宿移りたくないの!」

「ーーーー気のせいかしら、今お風呂「できた」って言った?」

「言ったな!しかも自分と仲間の風呂代タダって言うのを考えると、アキ、君が作ったな!」

「あ、やっぱり?厨房の一角まで借りれる権利貰ったとか言ってるしね。」

「ーーーおい、お前らこいつの非常識に順応しすぎてないか?」



シグナルさんの呆れた視線に、3人は顔を見合わせて、「だって最初からおかしかった(でしょう?)だろう?」と言った。



「魔力量もそうだけど、魔法属性も多いよね?実際何個属性持ってるの?」

「え?全部。」

「やっぱり。」

「規格外。」

「凄いな!」

「わー......。」



仲間になった事だし、サルビアさんの質問に素直に答えると、皆んなそんなに驚いてない。ーーーいや、ハク君だけ妙にキラキラした目で見てる。ーーー君はそのままでいてくれ。(2回目だなこう思ったの)


洗浄1回大銅貨1枚ってのは定着してるらしく、この前のも払ってなかったと2枚ずつ貰った。本当にこれでいいのかとシグナルさんからは小銀貨1枚魔水晶代貰った。



「あ、ポーションも出来たよ。不味いのやだって話だから果物味のポーション。で、普通のと魔力ポーションのとどっちだった?」

「普通の。ーーーー果物味?微効果しかねぇって話じゃなかったか?」

「良品ダヨ。」

「ーーーなぁ、なんか目が泳いでないか。」

「ーーー今まで微効果しかないからって商人ギルドと薬師ギルドと味見して値段決めるって言ってマシタ。」

「おっ前........もうやらかしてたか......」

「テヘッ」

「やめろ可愛こぶりっこ。可愛いから困る。」



薬師ギルドの良品の買取価格3千円分と、果物代分千円って事にして(メロンが高いからの平均)1つ大銅貨4枚×5本分をサルビアさんから貰う。メンバーの経費はサルビアさんの係らしい。なんでも依頼の2割は経費代で貯めて、帳簿までつけてるそうな。

堅実だったアダマンタイトの絆。



3万8千円儲けたー。



もうけたもうけた言ってたら、シグナルさんがジト目を向けてきた。

なにー?



「お前、金に頓着ないだろ」

「えー?いっぱい貰ったら嬉しいよ?お金がないと、生きていけません。ーーーそんな事もないかも。」

「それだ。その緩さ。ーーーまぁ、なんとかなるって精神は、嫌いじゃないけど。」

「そうそう、なんとかなるなる。稼ぐ時は稼いで、使う時は使う!やりたいようにやらないと、楽しくないじゃん。幸い俺、なんだかんだお金持ちになってるよ?」

「アキは冒険者らしいな!」

「見た目は騎士様よねー。」

「才能に溢れてるから、なんとかなってるって言うのもあると思う......。羨ましいな。」

「えー、ハク君も筋力あげたら、スピードあるしいい線行くと思うなー?」

「そ、そうかな?」



その後昨日の商人・ヤンファットさんの事を話すと、ここらを生業にしている行商人だから知られてる人みたいで、いい人だからと割と好印象らしい。護衛依頼は別にやってもいいって事で、宿替えするのもあってヤンファットさんがいたら顔合わせもついでにしようと、夕方に枕の誘惑亭に1度皆んなで行く事に決まった。

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