33.ニコちゃんパパを悩ませる。

瓶のサンプル10本が手に入ったけれど、本格的に生産して出来上がるまではまだ時間がかかる。出来た数からでいいからと、次は2日後の昼過ぎにお願いした。薬師ギルドに行って洗浄魔法施して買い取りとかも考えたが、サンディさんに怒られそうな未来しか見えないのでやめとく。


材料があれば瓶だって自作できるけど、採取云々もめんどくさい。時間とお金で解決できるものは、それに越した事はないのだ。お金は使ってこそ世の中に回るとも言うし、自分に返ってくるとも言う。実際瓶の注文によって生産が行われ、それによって生産者にお金が入る。瓶を受け取る側の俺も、ポーションを作って売る事でその瓶以上の価値が生まれる。生産する側も俺のとは限らないけどポーションを買う機会もあるだろう。


薬師のレシピを買ったのも、いずれは買った金額以上に稼ぐ事が出来る。要は自己投資するといつか自分に返ってくるよと言う事だ。


ーーーま、金稼ぎはあんまり考えてなくて、面倒臭い事の他人任せ、時間の有効利用だなんだと自分に言い訳なんだけど。テヘペロ。


そんな訳でポーション類を作るのは諦めて、

何をしようかなー、と考える。

明日は冒険者ギルドに集合だけど、お風呂作りも魔水晶作りも依頼のポーション作りも完了した。

あ、蜂蜜ある事だし、料理なり菓子なりに使えるよね。キラービーの蜂蜜、買い取り高かったし、それ程美味いって事だよね。俄然興味出てきた。宿屋に戻って厨房の一角借りようそうしよう。



ーーーーーーーーー

ーーーー

ーー



宿屋に戻ってきて、厨房の一角を借りるねー、と、風呂の件の取り決めなので、堂々と入る。ニコちゃんパパがジャガイモの皮を剥いていたけど、持ってたジャガイモごと左手を挙げてくれた。了解の意味だ。ジャガイモ使った料理って何するのかな。



異世界料理と言えばオーク肉でしょ、と先日自分の納品分から分けて置いたオーク肉のバラ2キロくらいと、ももの部分2キロくらい、でかいフライパン、鍋、まな板、包丁、油、米、酒、醤油、塩、胡椒、生姜、ニンニク、小麦粉、片栗粉、キラービーの蜂蜜も異空間から出す。

日本酒はヴィンさんのとこになかったけど、俺はヤマト大国から来てる事になってるし、醤油も味噌も存在するなら当然日本酒も存在するとふむ。たまたまなかったか、瓶入りの輸送は割れるから諦めたか。幸いラベルのない瓶に入ってるし、ヘーキヘーキ。あれかなー。日本じゃなくてヤマト酒とかそんな名前なのかなー。


さて、蜂蜜といえば、豚角煮と唐揚げっしょ。


俺の割り当てられたコンロはちゃんと2つあったので、片方に鍋を置き、水魔法で水を張る。厨房なので水道は勿論あるけれど、魔力の大きさによって水はより清らかに、飲み水としてはとても美味しくなると属性魔法の本に載ってたので。


........俺∞なんだけど美味いのか不味いのか気になってきた。

コップを異空間から出して、荒めに氷をカランコロン。水を生成し、水流を小さく発生させて冷やす。ーーーよし、いざっ!



ーーーーあーーー。超美味い水だわ。

湧水よろしく無添加みたいな美味さだわ。

ーーーま、水は水だわな。

なんにしても美味いなら問題なし。

鍋に火をつけ、もう片方のコンロにフライパンを置いて、と。



バラ肉は適度なゴロゴロな大きさに切って、

全面を焼き色がつくまで焼いていき、米粒一掴みと共に鍋の中に。

米粒はもったいないけど肉の余分な脂と臭み消しに使う。ギットんギットんの角煮は許さん。


まな板と包丁に洗浄をかける。

キャー、洗い物知らずでラックラク。魔法はやっぱりいい。

生姜も洗浄して、皮付きのまま薄い輪切りに。

フライパンも洗浄して、酒を入れて沸騰させて火魔法で少しの種火を。ーー生活魔法の着火増えてそうだな。

アルコールを飛ばし、醤油とキラービーの蜂蜜投入。混ぜ混ぜー。うん、いい感じのとろみ。鍋の中のオークバラ肉を米粒払いながら出して、投入。一煮立ちしたら落とし蓋をして弱火で放置。40分から1時間てとこかな、と腕時計を確認。


鍋はギトギトだ。これも洗浄。ーーおりょ、米粒もどこかにいった。汚れと判断されたかな。なんにしても魔法って楽でいい(しつこい)。

洗浄した鍋は異空間に収納して、今度はでっかいボウルとおろし器、揚げ用のでかい鍋を出す。ちゃんと温度計がついてるやつだ。


生姜とニンニクを剃ろうとして、これも魔法でいける?と念動力をしてみる。ーーーできたわ。ひゃっほい。

自動でおろされてる生姜とニンニクの横で、またしても洗浄したまな板と包丁でオークもも肉をぶつ切りに、フォークで穴をいくつもぶっ刺して、ボウルに入れる。


おろした生姜、ニンニク、塩、胡椒、酒、醤油、キラービーの蜂蜜を念動力で混ぜ混ぜ。魔法で圧力加えながら、時間短縮。


別のボウルを出して小麦粉と片栗粉を半々に、こちらも念動力で混ぜる。

まな板と包丁は洗浄し、横にずらして、揚げバットを異空間から取り出し、置いておく。

よし、あとは揚げるだけだ。

揚げ用の鍋に油をとくとくとくー♪

これを180℃まであっためて........




............すげー見られてる。



「おやっさん、気になるの?」

「お?おぉ.....変わった料理してんなと思ってよ。それに、なんだ?やたらと洗浄魔法使うし、生姜とニンニクおろしてたよな?なんか魔法で。サイコキネシスか?料理に使ってるの初めて見たぜ。便利だな。」

「(念動力、サイコキネシスって言うんだ。まぁ、同じ意味だけど。)自分の手汚れないし疲れないし便利だね。おやっさん、その大量のジャガイモ、何に使うの?」

「これか?ポテトサラダの予定だな。」

「これから揚げ物やるんだけど、ちょっとくれない?ついでにフライドポテトにしよう。おやつおやつ。」

「あ?ーーまぁ、少しならいいか。ーーフライポテトってなんだ?」

「え。」

「ーーえ?」



なんだと、ポテトサラダがあってフライドポテトないのかよ!?

5個くらい皮を剥いたジャガイモを貰い、フライドポテト用に程よい大きさに切る。ちょうど油も180度になったので、揚げる。

キツネ色になるくらいで取り出し、塩をふりかける。皿と油とり用の紙を異空間から出し、盛り付ける。



「ーーーほい、フライドポテト。」



皿をズイッとニコちゃんパパに差し出す。

片眉を上げて、恐る恐る手を出すニコちゃんパパ。口に入れてーーー目を見開いた!



「おまっ、これっ!すげえうめぇじゃねぇか!何だこれ!ホントにイモと塩だけなのか!?」

「そうだよー。180度でキツネ色まで揚げたただのジャガイモだよー。」

「マジかよ......でもなぁ、油も塩も高いしなぁ......」

「あぁそういう....あ、もしかして唐揚げも知らないの?」

「から、あげ?」

「まじかぁー。角煮は醤油使うから勿論知らないよねー。.....まじかぁー。」



ま、見てたのニコちゃんパパだけだし、食革命はニコちゃんパパがやるかやらないかだな。



その後出来た唐揚げと角煮も試食させると、美味しさに震え、悶えてた。そしてとても悩んでいた。

レシピは使ってもいーーよーー?と俺が気楽に言ったからだ。

油も塩も高いけど、ヤマト大国の品物は更に高いらしく、高級路線で少なく宿の料理に提供するか、値段を高くして食堂としての一品にするか、うんうん唸ってた。


頓着なかったけどそういえば日本にいた時より10倍くらいしたかも?

ーーーまぁ、この世界の輸送費入ってればそうなるよね。


うははは、俺は食革命身内だけにするもんね。金額なんて商売じゃないから気にしなーーい。


夕食の時間が迫ってきて、唸ってるニコちゃんパパのとこに女将さんとニコちゃんが寄ってきた。時間も忘れて唸ってたみたいで、気軽にコーヒー飲みながらこうしたらあーしたらと口出ししてた俺だけど、2人にも異空間に収納してた例の料理を食べさせると感動してた。そして是非メニューにしようよ!と盛り上がってた。



「夕食の支度、いいの?」



そう聞くと、慌てて準備し始めた。

俺が原因ってのもあって、手伝った。

主に洗浄とか洗浄とか洗浄とか。

とても感謝された。ニコちゃんも真似してちょっとしてたのには笑った。

魔力温存!って女将さんに言われてたけど、今日は洗浄魔法アキくんにだけだもーーん♪大丈夫大丈夫♪と言っていた。

俺も今日はポーション作らないもーん♪と便乗してキャッキャした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る