29.Let'sお風呂!

夕ご飯を食べに食堂に向かい、カウンターに座る。ニコちゃんパパに報告だ。



「パパー。」

「おめぇのパパじゃねぇ。」

「あっはは。おやっさん、お風呂出来たよ。」

「ああん?」

「えぇ?なぁに?お風呂?」



丁度誰かの夕食が出来たのかカウンター越しに料理の乗った皿を持ってニコちゃんパパがやってきたので、お風呂が出来たと報告をすると、料理を受け取りに来た女将まで反応した。あれ、ニコちゃんパパったら奥さんに話してないの?女将の顔は笑顔だが何かを問いたげな視線を旦那に向けている。



「ーーーあ、や、こいつがよ、魔法陣と魔水晶試したいって言うから、やらせてみたんだ。ーー今日夜に言うつもりだったんだ。言ったの15時半だぜ!?今日出来ると思うかよ!」

「まぁぁぁ!本当にお風呂なの!?アキさん、うちの宿に、お風呂作ってくれちゃったの!?」

「ーーーおい、この料理......ニコ!これ運んでくれ!」



その後料理を運んだニコちゃんも加わって、俺が作ったお風呂の話しで盛り上がった。

早く見たい!と騒ぐニコちゃんに気付いたお客さん達が、何?風呂?と騒めくくらいには。


夕食のお客さんが誰もいなくなった後、片付けを手伝って、早くお風呂入りに行こーとニコちゃんパパを誘う。

皆んなでお風呂ー!とニコちゃんが騒いだが、男女別だよ?と言うとガクーッと項垂れた。今の面白い、もう1回やって、とキャッキャして、後片付けはワイワイ楽しく終わった。

異空間からタオルととっておきだよ、トゥルトゥルになるよ、と近代製のリンスインシャンプーとボディーソープと、泡立ちたくさんするボディタオルを2枚出してニコちゃんにあげる。ママと洗いっこするんだよ、と使い方教えながら言うとわーい!と素直に受け取ってくれた。

横で聞いていたニコちゃんパパにも同じものをあげる。気になってたのか、おぅ、悪いな、と照れた様に言うから、どこに需要あるんだと思った。ニコちゃんパパも猫の獣人だが、黒い毛並みの耳と尻尾が目立つだけの眼光鋭い三白眼のイケメンだ。あ、イケメンだから女性には受けるか。



裏庭に続くドアを開けると、余りにも裏庭が変わったからか3人ともドアを開けて直ぐのとこで立ちすくんでいた。


こっちが女湯の脱衣所ですよー、後でわかるように女湯とか書いた赤とかの布でもかけて下さいねー、と言いつつ押し込む。脱衣所出たらお風呂見えるから、道順まではいいでしょ。

同じくボッとしていたニコちゃんパパを男湯はこっちでーす。家族で入りたかったら立ち入り禁止時間を設けてどっちかで一緒に入ればいいと思いますよー。と言いながら脱衣所に連れて行く。


棚と脱衣籠がきちんと8つ分あるのにも驚き、長椅子にもこれはいい、と頷いていた。


素っ裸になり手拭いを腰に巻き、浴槽へーーーの前に洗う事!と洗面所に連れて行き使い方の説明。やはりシャワーには凄く驚いてたが便利だな、とこれにも頷いていた。

1番可笑しかったのはボディソープとボディタオルを使う時だ。

よく泡立つよ、と説明したのに、「これは便利だ、液体の体洗う石鹸か。」と呟いたかと思ったら静かになったので、髪を洗ってから横を向けば、黙々と泡立てたらしく、泡まみれになってもまだ泡立たせているニコちゃんパパを見た時だ。「いつまで泡立ててんの!?」と言えば、「ーーいや、どこまで泡立つのかと思って。」だと。



「こんなのそこそこ泡立ったら洗わないとキリないよ!?」



そうやって横でワシワシとそこそこ泡立たせゴシゴシ身体を擦る。

あ゛ーーーー。洗浄魔法で綺麗にしてても、やっぱりこの痒いとこが妙に発生してボディタオルでゴシゴシするの、いーわー。全身ゴシゴシして満足し、シャワーで洗い流す。ふぅ。超満足。

あー、スッキリ、と横を向けば、恍惚こうこつとした表情をしたニコちゃんパパ。わーーー....。


見てはいけないものを見た気がして、そっと一人で浴槽に向かう。


浴槽はお湯がなみなみと溜まっていて、溢れている。途中コックつけた方が無駄ないかなー?後で意見聞こう。

何日かぶりのお風呂だし、檜の香りもするしで、とても気分良く入ってると、周りを見渡しながらこちらに向かってくるニコちゃんパパ。もう最初から手拭い桶のとこに置いてきてるね。フルチン堂々と出して来ないでよーやだなー。と抗議すれば、すまん、と素直な返事。そして後ろで上に向かってゆらゆらしていた尻尾がくるんと後ろから前に出てきてフルチン部分を隠した。



「ーーーなんだか尻尾で隠すと変な気がするけど、便利だね。」

「まぁな。厨房じゃ邪魔だけどな。ーーー入っていいか?」

「なんで確認するの?こんなに広いんだから、遠慮しなくてものびのび入れるよ?」



そう言って手足を伸ばして、浴槽のヘリに肘をのせた。段差をちゃんとつけた俺、偉い。リラックスできるわー。檜の匂いが病みつきで、リラックスしすぎてのぼせそう。



「ーーや、なんかよ.....イケナイ事をしているようで......」

「ーーーはぁ?」



髪が滴ってきたので掻き上げる。



「ーーそうゆうのだよ!妙に色っぽいの出すな!」

「そんな殺生な。」



色っぽさは知らんがな。

魅力SSS効果だろ。出している気はまったくないが、相手が顔を赤くするのは慣れてるので、スルーしてまぁ入りなさいと促す。風邪ひくよ?


ニコちゃんパパは浴槽に入ってしまえばまた恍惚とした表情になり、「あ゛ーーー」と声が漏れてた。わかる。出るよね。


女性陣にも好評だったようで、とても感謝された。特にあげたリンスインシャンプーとボディソープとよく泡立つボディタオルが。


そういや商人ギルドで薬草シャンプーと石鹸買ってきたよ、と買った半分の10個ずつだす。



「ーーーそうよね。いるわよね。」

「販売するか、料金に織り込んで貸し出すか。石鹸は販売でいいと思うな。ケース入りの方買ってきちゃったし。」

「ーー成る程。どちらにしても買い取るわ。シャンプー小銀貨1枚でしょ?石鹸は大銅貨2枚だったかしら?」

「うん。その値段だった。」

「お風呂の設置は普通小金貨5枚から大金貨1枚かかるのよ。脱衣所や壁、屋根まで作ってくれたでしょ。あれだけやったら大金貨出るわ。鏡までついて、しゃわー?も画期的だし。」

「え、実験場所欲しかっただけだからいらないよ?」

「駄目よ!あんなのタダにしちゃったら大損よ!材料もだけど技術に魔力と、価値が凄いんだから!」

「えー。材料ほぼタダだよ?屑鉄とかガラス片とか安価で買ったし、魔水晶もちょっと伝があって手に入れたものだし。」



その後払う払わないの大論争。なんか過去にもこうゆう事あったな。


最終的に、今度メンバーになった冒険者4人こちらに泊まらせてもいいかっていうのと、お風呂に関する料金はこの先永年無料ってのと(むしろ宿代いらない言われたけど泊まりづらくなるから却下でと断った)、厨房に入り放題を頼んだ。首を傾げられたが、一昨日のように飲み物入れたり、料理作りたい時に作りたいのだと言えば納得してた。よっぽど混雑した時しか使ってないコンロ(まさしくコンロ。温度調節もできる、火が出る魔法陣込みで、これも魔法陣業者が請け負ってるそうな。本にこれも載ってた。携帯コンロは存在しないみたいで、出来ないか試そうと思ってた。)の所を案内された。こっちを使えと。


それでも足りないと思うと言われたけど、今の俺の希望はこんなものだ。あくまで実験の場所提供してもらったんだよ!なんだったらホントにタダにするよ!と押し通した。


そんなこんなで、枕の誘惑亭にお風呂が出来た。

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