28.お風呂作り

特許料はギルドカードに振り込まれるらしい。思いがけず謎の預貯金システム使いどこあったわ。


ーーーと、そうだ。俺はミニチュア風呂を自慢しに来たわけでも、ギルド登録をしに来たわけでも、特許登録をしに来たわけでもなかった。魔水晶だよ、魔水晶。商品棚にあるって言ってたな。


諸々の手続きを済ませ、商品棚に向かうと、様々なものが置かれ、その中でも日用品が多めに置かれていた。


ここにも化粧水と整髪剤がある。あ、価格は薬師ギルドと変わらず小銀貨1枚だ。直接取引とかしてるのかな。どちらがより売れるかで卸すの決めてるのかな。


魔水晶はーーあった。俺が試作したのと同じ大きさくらいのが小、他に中、大がある。

値段はーーうぉ、それなりにするね。日本円にすると小が25万中が50万大が100万とな。どれ、鑑定。



「あれ?」



おかしい。小で残魔力3千、中で7千、大で1万5千になってる。

俺が試作したやつ6千だったんだけど。



「プランプさーん!」

「ーーはい?どうしました?」

「魔水晶大中小ってあるんですが俺のミニチュア風呂を大きくしたとしたらどれが妥当です?」



受付まで戻って、プランプさんに質問。聞いた方が早いと思われる。



「ーーそうですね、浴槽2つに洗面台16個ですよね。利用者常に満杯って事はないでしょうし、小さいので1年分は充分じゃないでしょうか?」

「そうなんですね。もう1つ聞いていいです?このミニチュアで試した魔水晶なんですけど、大きさあそこの小さいのと一緒なんですけど含まれてる魔力が違うんですよね。なぜ?」

「え?ーーー失礼しますね。『鑑定』。あれ、本当だ。これはもしや、「純魔水晶」じゃないでしょうか。」

「純?」

「はい。純粋な、採取したままの魔水晶です。一般に出回っているものは、空になった魔水晶と交換すると小銀貨1枚値引きとなるのですが、その持ち込まれた魔水晶は国の管理する充填じゅうてん区域、ーーまぁ、魔力溜まりと言われている所ですが、そこで魔力を充填します。採取した時の魔水晶程魔力を溜めると時間もかかるので、半分程の魔力で市場に戻ってくるのです。需要が供給に追いつかず、苦肉の策でいつからかこうなってしまったようなんですが、それでも適切な大きさの物を使えば1年は保ちますから、これが普通となったようです。」

「大きいのは充填するのにもっと時間もかかるんですよね?」

「それが、大きければそれだけ早く充填するみたいです。ただ、大きく成る程やはり数が少ないみたいですね。」

「へぇ。だから大きくなると高いけど、少し魔力的には多いと。」

「そうなりますね。この純魔石、どうしたんです?売ってない事もないですけど、小さくても中型と同じか少し高いくらいの値段でしょう?持ち運びが便利だとか希少だとか色々理由はありますけど。」

「ん、ちょっと手に入れられる伝があって。一般のと違うとは知らなかったですけど。」

「その伝は教えてーーもらえないですよね、分かってます.....。」



プランプさんの目がキラリと光った気がするが、ニコリと微笑んでやると言う気がないと分かったのかガクリと頭を垂れた。

成る程。俺が試作したのは満杯充填したからって事ね。と、いうか、元は2千円の角ウサギの魔石、しかもポーション作った後のいらない空の魔石が50万の価値になるって事ね。

どこのボッタ。


そういえば空の魔石って薬師の人とかどうしてるんだろ。実験の時できたみたいな魔鉱石とかにしてんのかな。今度薬師ギルドで聞いてみよ。


なんにしても角ウサギの魔水晶でも充分すぎるくらいなのがわかったので、空の魔石でもう1個作ってシグナルさんに売りつけよう。宿屋の風呂のは少し使ってしまったけどまだ大分残ってるだろうし、このミニチュアの使い回そう。



リンスインシャンプーもボディーソープの作り方も知識としてはあるけど、材料が足らん。あとそこまで作るのは面倒だし、異空間に実は大量にあったりする。近代主軸の物語も転移してるからね。近代じゃない物語の中では材料分からない所から手作りするという目に遭ったので、近代の物語の時はこれでもかと大量に購入したのだ。タオルも新品のふわふわホテルタオルが同じだけ入っている。こっちは洗い替えすればいいのだけど、今後途方もない時を過ごすと言われると不安になって、そのせいで俺の異空間の中は雑多に色々ある上に数も相当あるのだ。最初の物語の魔法界で作って販売した万能飴だとかも大量にあるけど、この世界はポーションも回復魔法もあるから出番はやってこないだろう。



とにかく、リンスインシャンプーもボディーソープも自分用には何百年分と充分すぎる程あるけど、製法云々また言われても困るのでお風呂が出来て使う人が困らないように薬用シャンプーと石鹸を20個ずつ購入して宿屋に帰る事にする。



ーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーー




「ーーと、言うわけで、お風呂裏庭に作ってもいいですか。」

「なーーーんにも説明しとらんだろうが。」



宿屋に帰ってきてすぐ、厨房で夕食準備に入っていたニコちゃんパパにお風呂制作の許可を取ろうとカウンター越しに話しかけると、突っ込まれた。説明したていで話したらいけるかと思ったけど駄目だった。ちぇ。



「魔法陣と魔水晶の勉強したの。ミニチュアも作ったんだ。これを大きく作ってみたくて。見てみて!力作!」

「俺は今忙しいんだがーーーーなんだこりゃ。すげぇな。」

「でしょでしょ?ここがね、シャワーヘッドって言って、ここがノズル伸びてね、髪ぐらいなら直接洗えるんだよ。」

「ーーーーおぉ。」

「ここの床ね、溝あるでしょ?傾きも微妙に入れてるから、お風呂から溢れたお湯も体洗ったお湯も洗浄の魔法陣に戻るんだ。まぁ溝じゃない部分は掃除しなきゃいけないけど、ほらほら、このシャワーでしゃわーっと流せば、後始末も楽でしょ?あ、掃除用に長いノズルのシャワー、ここの側面につけるのもいいかもね。」

「ーーーーおぉ。」

「でねでね、浴槽はミニチュアではただの木の端材だけど、今日檜の木材タダで貰ってきたんだ!いーい匂いだよぉー?檜風呂、人気出ると思うよぉー?」

「ーーーーそうだなぁ。」

「ーーーで、お風呂作ってもいい?裏庭に。」

「ーーーーーおめぇが作んのか?」

「そう言ってるじゃぁん!大丈夫!気に食わなかったら元に戻すからぁ!脱衣所も作るし!ね!ね!」

「ーーーーそう、か?じゃぁーーーまぁ、やってみろ。」

「やっふー!楽しみにしてて!今日の1番風呂はおやっさんと入るからね!」



許可とった!とスチャッと敬礼をして乗り上げていた椅子から降りてスタタタと裏庭に向かう。



「ーーーーーきょ.....う?」




ーーーーーーーーーーー

ーーーーーーー



裏庭で仁王立ちをして腕を組む。まずは床だな。

屑鉄を分解、抽出、錬金してインゴッドにする。金やミスリル、木材も少量出た。木材はブロックにして、と。当然だけど鉄が多いね。劣化防止の魔法かけるし、魔法陣刻めればなんでもいい。


沢山の鉄を錬金して薄く伸ばし、思ったより大きかった裏庭の半分程に違和感がない程度の絶妙な角度の傾斜をつけつつ広げる。檜の木材を取り出しこちらも錬成。あっと言う間に浴槽2つが完成。


なんでも入ってる俺の異空間には岩も沢山入ってたりする。異空間利用しての攻撃もできるからだったりするが、それは今は置いといて、岩も取り出して洗面台を錬成する。シャワー部分は後から魔法陣に沿って作るから後回し。本当に台だけ。これを男女2列ずつ作る。


真ん中には男女分けの壁を後から付けるし、脱衣所の予定の部分手前まで魔水晶ポケットを伸ばさないとな。ーーーーうん、この辺りかな。


あとはミニチュア制作でやった通りにーーーーいや、ミニチュアの浴槽の魔法陣念写魔法すればいいんじゃね?


ーーー結果、あっさり魔法陣は完成。それぞれの魔法陣から魔水晶までの道のりもつけたので、劣化防止の魔法をかける。

錬金術でシャワーもつけ、掃除用のシャワーも取り付け完了。ミニチュアと違って、こちらのシャワーはちゃんと開け閉め用にコックをつけた。ガラス片も分解、抽出、錬金し、鏡も設置。桶と椅子は余ってる木材を使用。

床が鉄と魔法陣剥き出しだと滑るので、岩を取り出しタイル風に錬成し設置。


男女で分ける為の壁は、魔法陣を壊さないようにいくつか穴を堀り、柱を何本か立て、その間に木組みをする。手前に脱衣所をそれぞれ作り、ここは四方木材にした。木材の端材を使って脱衣籠を作るのも忘れない。長椅子も作って、完璧に温泉の脱衣所だ。体重計も欲しいとこだけどこの世界あるかわからないからやめとく。時計があるならありそうだけどな。計りはあるだろうし。人に使う体重計を作るか否かってとこだよね。


脱衣所から男女別の入り口までは角を設けて丸見え回避。大事だよね。ラッキースケベは認めない。風呂付近の壁は少し浮いてるけど、寝そべっても見えないくらいにギリギリまで板を組んだ。覗きも認めない。


裏庭は都合良く四方が高い壁に覆われていたので(風呂を作る予定だったから?)新たに壁はいらない。雨でも入れるように全体的に屋根をつける。なんとなくアーチ状に。


せっかく作ったものが腐ったりも嫌なので出来上がりを確認しつつ劣化防止魔法をかけてまわり、殺風景なのに気付いた。



「草木がないからなー。せめて石でも置いとこか。草木は丁度いいのあったら今度引っこ抜いてこよう。」



攻撃とは関係ない、ただ綺麗だったから異空間に入れておいた石コレクションを放出。

ザラザラしてたりツルツルしてたり、少し光ってたり。色とりどりの大きめの石を設置して満足して頷く。



入り口付近に設置した魔水晶ポケットのところまで戻り、ミニチュアで使用したちっこい魔水晶をセットする。キラリと魔水晶が光り、それぞれの線を伝ってお湯が流れていく。シャワーはコックを閉じてるので今は浴槽を満たすだけだ。シャワーの一つに近づき、コックを上げてみる。うん、ちゃんと出た。


時計を見ると18時前。錬金しながらとかタイル風にとか色々こだわったものだから2時間弱かかったね。

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