27.ギルドカードの仕様変更

さんざん生活魔法の範囲じゃないあり得ないと騒がれた後、檜を結構な数譲って貰い、異空間に入れていると、収納スキルもおかしくないかとまた騒がれ、半ば脅されて口外しない代わりにヘルプをたまに頼まれてくれと了承させられ、木材屋を後にした。解せぬ。



来た道を戻り、鍛冶屋を覗き、投げ用にナイフをいくつか買い上げ、屑鉄等余ったものを安く買えないか交渉。廃棄にもお金かかるからと二束三文な価格で譲って貰った。結構な量で次々収納して容量にまた驚かれたけど気にしない。錬金術で風呂場にする床や洗面台を作っても余り有る量でホックホクだ。



「ねぇねぇ、冒険者ギルドの向こう側にも武器防具屋があったけど、ここは鍛冶屋って店先に書いてるでしょ?何が違うの?」

「はい?ーーあぁ、あそこはこういう鍛冶屋から武器防具を買い上げて販売してる、仲介屋みたいなもんです。うちみたいな鍛冶屋は一般の料理用の包丁とか農具とかも依頼があれば作る、鉄製品のなんでも屋ですね。」

「既製品というか、一般的に売れそうなのはあっちの武器防具屋に行った方が揃う、て感じ?」

「そうなりますかね?一応お客さんが買ったような投げナイフとか槍とか剣とかも、見ての通り置いてますけど、基本的に受注生産かなぁ?」

「あ、じゃあじゃあ、珍しい鉱物があったらそれ持ち込んでも武器防具作ってくれるの?」

「受け付けてますよー。でも時間は貰います。うちの父ちゃん、職人ギルドでもランク上の方なんで、人気なんですよー?」

「へぇ。わかったその時は宜しく。今日は屑鉄とか売ってくれてありがとう。」

「いえいえ。返ってお金かかるから、なんだったらまた溜まったら買いに来てくださーい。」



疑問を投げかければ、愛想良く答えてくれる見た目15、6の兄ちゃん。どうやらここの鍛冶屋の息子さんなようだ。丁稚でっちか何かかと思ってたよ。屑鉄譲ってくれた時も相談もせずだったから大丈夫かと思ったが、家族経営だったか。しっかりした息子さん持っててよかったね、と会ってもない親方に心の中で語りかけた。



前に見つけてたガラス工房も、割れたガラスの廃棄物があったので、安く譲って貰った。

つい最近商人ギルドでガラス瓶1000本頼んだんだけど、ここで作ってたりする?なんて話を振ったら、快く出してきてくれた。

まぁ狙って話したんだが。テヘペロ。



「鍛冶屋とかの屑鉄もそうかと思うんですけど、ガラスって言っても様々な用途の混ざった廃棄物ですよ?いくら錬金術ができても、分けるのは大変なのでは?」

「えー?纏めて魔法で分解して抽出すれば済む話じゃない?廃棄物あるか賭けだったけど、聞いてよかったラッキー、と思ってるけど?」

「分解?抽出?そんな魔法があるんですか?」

「あるよ?」

「聞いた事ありませんけど.....あると便利ですね。.......でも、一度に沢山は魔力的にやれる人が少なそうだから、工房等で仮に魔法使いを雇ったとしても、かえって人件費がかかるかもしれませんね。」

「そんなもんかなー?」

「そういう事にしておきましょう。出来ないものを損得勘定しても意味がありませんし。」

「確かに。」



工房長と呼ばれて対応してくれた優男とそんな話をして、なんにしてもありがとう助かった!とお礼を言って工房を出た。


抽出はわからんが分解はこの世界の魔法としてスキルに出てきてたから、多分抽出も使えばスキルに出てくると予想。


俺はやろうと思えばなんでも創造できてしまうので、この世界の魔法として出てくるかは試してみてまたステータス確認してみようかな。俺のごちゃ混ぜ索敵魔法も探索と索敵と鑑定と分かれたように、この世界にない魔法なら表示されないと思うのだ。


ーーさて。

浴槽と壁と桶用の材木も、床と洗面台用の鉄屑等も、鏡用のガラス片も手に入れた。

あと足りないものはーーーー?



「あ。肝心の魔水晶ないじゃん。」



実験用のちっこいやつしかないわ。別に作ろうにも空の魔石は角ウサギの小さいの1つしかないし。



「ーーん、材料タダ同然だったし、風呂入りたいし、商人ギルドで買おう。」



来た道を戻り、商人ギルドに入って行くと、プランプさんが慌ててやって来た。



「アキさん!?瓶のサンプルは明日ですよ!?」

「分かってます。今日は魔水晶見に来ました。」

「魔水晶?魔水晶ならあちらの商品棚に置いてますけど.....アキさんご自宅がこの街にあるんですか?」

「え?ないです。」

「宿屋暮らしで魔水晶なんて........あ、ポーション代わりに?ーーーいえ、ご自分で調合できますよね。いざって時用にですか?」

「魔力切れは起こさない自信あります。魔法陣と魔水晶の勉強をしたので、丁度泊まってる宿屋にお風呂がないので、実験させて貰おうと思っています。」

「...........えぇ!?魔法陣なんて凄く繊細な魔法操作力と膨大な魔力消費しますよ!?まずは小さなのから実験を.....」

「あ、小さい実験はもうしたんです。見ます?」



そう言って午前中作ったミニチュアバッドを出す。凝りに凝った力作なので見せたいとも言う。



「ーーーーわぁ。凄く凝ってますね.......」



出したお風呂のミニチュアを、プランプさんは右から左から上からしゃがんで真横からと食い入るように見だした。思ったより食いつきがいい。



「ーーーちょっと待って下さい、アキさん?ここの......触ってもいいですか?あ、やっぱり!ここ!この蛇口、なんです!?温水が出てるの一つじゃーーーな、なんです!?とれーーてない!伸びた!え、ええぇぇぇえ......?」

「シャワーですよ?」

「し、しゃわぁ?」

「シャワーです。ノズルです。はまります。頭くらいなら直接洗えるでしょ。」

「えーーーあ、そうか。そういう意図が......いや!そうじゃなくて!アキさん!これ!商人ギルドに登録しませんか!?ーーは!そうだ!蜂蜜!蜂蜜の容器の件もあったんです!あれも登録しましょう!?」

「蜂蜜の容器?ーーーあぁ、冒険者ギルドで昨日売ったやつ?」

「そうですそうです!ビックリしたんですよ!なんだか画期的な容器に入ったものが依頼した品物として当ギルドに到着した時は!誰がこんなのを!と聞けばアキさんだって言うじゃないですか!瓶のサンプル確認の時でも是非登録を!と話してたのに、もっと凄いの出してくるんですからまったくもう!」



何故か怒られた。なんでだ。



その後商人ギルドに何故か登録させられ、俺のギルドカードが仕様変更された。ランク部分だけが。

冒 【C】薬【銀】商【E】と。

商人ギルドは冒険者ギルドと一緒のSABCで数えるらしく、1番下がEで薬師ギルドと一緒で1段階少ないらしい。因みに職人ギルドは薬師ギルドと同じ数え方で、同じ数え方のギルドが被るとこういう仕様になるらしい。ここまで揃うと職人ギルドにも登録したろか、とチラッと考えた。



「皆んなCと銀だけで冒険者と薬師だって分かってましたけど?」

「あぁ、ギルドの出来た順番ですね。商人ギルドと職人ギルドは後から出来たので、仕様変更は後付けなんです。最初から変更してしまうと、それまで登録してた人のギルドカードと差が出てしまうので、商人ギルドか職人ギルドを登録したら仕様変更になるようになっているんですよ。」

「最初に商人ギルドに登録してる人のギルドカードの表示はどうなってるんですか?」

「僕のは商人ギルドだけなので、見ますか?職人ギルドだけでもこうなります。」



プランプさんのギルドカードを見せて貰うと、『商【C】』と表記されている。成る程。


ギルドカードが統合できるように、預貯金も統合できる、というかギルドカードを統合した時点で預貯金は自動的に統合され、登録しているギルドならどこの国でも出し入れ可能だそうだ。なんだそのハイテク機能は。どうなってるんだ預貯金システム。あの謎のパソコンみたいなものと一緒でお金も管理されているんだろうか。猛烈に気になる。だがしかし俺には異空間収納があるから全く関係ない。いつ転移するかわからないのに所持してないと消えてなくなりそうで嫌だよね。


商人ギルドのランクは単純に稼いだ金額による。

4月から3月までに「商人ギルドを通した商売」の「純利益」が日本円で言うところの

100万以下Eランク、年会費なし、

100万以上でDランク、年会費1万〜、

500万以上でCランク、年会費5万〜、

1000万以上でBランク、年会費10万〜、

1億以上でAランク、年会費100万〜、

10億以上でSランク、年会費1000万円〜

と、収入の1割が年会費となるようだ。

地球で言うところの税金のようだな。



商人になるつもりは.....と言うと、薬師や錬金術師の方は結構登録していて、ポーションも商人ギルドに卸したり商人ギルドの繋がりで販売先が広がるとか。先程言っていた物の登録は特許登録で、こちらは薬師ギルドと似ているが買い上げではなく1つ1つに利益が発生し、「商品代金の」使用料が5年単位で3割、2割、1割と減り、1割になると固定され、死亡まで保証されるから、是非とも登録を、と言われた。


似た商品も出るものでは?と言うと、登録の早い者勝ちだそうだ。そんな殺生な。

また、これはあくまで商人ギルドが介入している商売に限るので、登録していない商売人には適用されないが、薬師以外で商売をしていて商人ギルドに登録していない者は証明もなくそこまでの利益は見込めないそうだ。所謂いわゆるモグリってやつだな。上手く出来てるんだなー。


特許ねー.......,まぁ、俺の考えたものじゃないけど、誰かが登録して俺が使うのに不便なのも嫌だな。

人のふんどし相撲すもうをとっていいのかという話にもなるが、ここには褌の持ち主いないからね。


特許申請と相成り、またしても仕様を書けと紙と羽根ペンを渡された。.........羽根ペン面倒。

なんのペンで描いてもいい?と、万年筆を異空間から出した。これも食いつかれた。

そうなるかと思ったんだけどね。羽根ペンは書くの面倒だから広がればいいと思うよ。

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