22.圧が凄い冒険者達

眠りキノコをそれぞれ持ちながら、すやすや眠ってる冒険者達。

キノコ探しの為の解析込み探索魔法を使ってた時はいなかった筈。

て事はここまでくる間にここに来た事になるけど、それにしてはすやすや寝過ぎ。

持ってるものが眠りキノコだから、原因は明らか。毒キノコと痺れキノコは念動力で採取したから、俺には影響なかったけど、直接触ったらいけないのかもしれない。


鑑定をかけて、名前確認しかしてなかったので、ちゃんと見てみる。



【眠りキノコ】

睡眠薬等に使われるキノコ。

抜く時に人の手が入ると胞子を飛ばす。

眠りへと誘う胞子なので、火バサミ等長い物で距離をとって尚且つ口を布等で覆い採取する。人の手の温かさで反応するようなので、長いハサミは必要なさそうだか、偶然繁殖の為の胞子の撒き散らしに遭遇すると同じく眠りへと誘うものなので距離をとる必要がある。



成る程。眠ってるみんなはそのまま引っこ抜いて、胞子にやられたわけね。

えーー.....とりあえずバンダナを異空間から引っ張り出し、口と鼻を念の為覆う。

さっきと同じように念動力で眠りキノコを40個採取してそのまま異空間へ。



「ふぅ。では、この人達起こさないとね。おーーい、みなさーん。こんなとこで寝てると魔物に襲われるよーぃ。」



呼びかけてみるも、反応なし。

眠ってる冒険者達を改めて観察してみる。

短い赤い髪の、ローブを着た小柄な男、おそらく魔法使い。でっけー杖側に転がってる。

ゴワゴワの薄い茶色の長い髪の大柄の男、おそらく剣士。でかい剣が仰向けに寝てるのに背中からはみ出てる。

青い髪をポニーテールにした、軽装の女性、おそらく弓使い。弓背負ってるし。

薄い茶色の短い髪の若い男。この人も剣士?普通のサイズだけど.....あれ、この人ポーション(特大)の人じゃない?


.......起こしたくなくなってきた。でも起こさなきゃ駄目だよなー。

呼びかけても起きないし、キュアでいーか?ーーや、胞子残ってたら同じ事かも。洗浄にしようかな。水責めなるけど、仕方ないよね。



「洗浄」



4人全員を包み込むように温水流と光が発生。途中みんな目を開けて驚いた顔をしてガボガボなってる。収まると、やっぱり服もどこも乾燥してる状態になった。なんだか薄汚れていた装備もやたらピカピカになった。俺の洗浄超優秀だね。



「ガハッゲホゲホゲホッ」

「ゲヘッゲヘゲヘゲヘッ」

「ゴホッゴホゴホゴホッ」

「ケホッケホケホケホッ」



へー、面白ーい。人それぞれむせる声って違うんだー。



「なっなんて事しやがる!溺れるかとおもったわ!」



呑気に観察してると、小柄な魔法使いが啖呵を切ってきた。

むむ。起こしてやったのに。



「だってしょーがないじゃーん。眠りキノコで寝てたら危ないかと思って起こしても起きないし、状態異常回復魔法かけても胞子くっついてる服だとまた眠るかもしれないでしょー?洗浄魔法使ってあげたんだから感謝してほしいくらいだよー?」



ちょっとムカッとしたが状況説明をしてやる。そして褒めて。洗浄魔法で君たちピカピカだよ?



「ーーーマジか。うわ、俺達Dランク依頼にも載ってるようなキノコで寝てたのか.....。」

「ーーーホントだ。ドロドロだった装備、凄く綺麗になってる......。えぇ?髪もサラサラだし、肌もなんかしっとりすべすべしてる.....。」

「ーーそうか!それは感謝しないとな!ありがとう少年!」

「ーーーー天使様?」



うわぉ早速気づかれた。だがしかしその呼び方はいただけん!



「天使様って誰。俺はアキって言うの。ペーペーのCランク冒険者だよ。」

「ーーいや!一昨日俺に凄いポーション使ってくれた天使様だろ!?」

「俺・は・ア・キ!」



ポーションは有耶無耶にしたいのと天使様呼びは勘弁願いたいので、肯定して欲しいのかイケメンタレ目の男が肩を掴んで来たが、アキ呼びを強要する事で対抗する。



「アキ君と言うんだな!俺はブラウン!このハクの兄だ!貴重なポーションを使ってくれた天使みたいな美しい少年と聞いていてな!いやー本当に美しいな!そうだ!弟の恩人にポーション代を払わねばと思っていたんだ!今回の事といい助けられてばかりだな!ありがとう!」

「あー、うん、ポーション代は勝手に使ったからくれなくてもいいけど、俺がした事は口外しないんでほしいんだ。あと天使はやめて。」

「むむ!こう見えてBランク冒険者だぞ我々は!金ならある!使ってくれなかったら二度と歩けない身体になっていたと聞いたぞ!本当に感謝してるんだ!ーーー口外しない方がいいのは何故だ?誇っていい事だろう!」

「そんなに言うなら代金は貰うけど......。出所聞かれても困るんだよポーション。だから秘密。ね?」

「もしかして.....君が作ったの?そのバッチ、薬師のバッジよね?」



ハク君とバチバチしてたら、お兄さんのブラウンさんが熱く迫ってきた。迫るのは変わらないな!流石兄弟だよ!

頑張って応対してたら、今度は青いポニーテール髪のお姉さんが参戦。あーもう!



「錬金術の方ね。ーーーまぁそうだね。偶然出来たものだから、また作れって言われても困るんだ。これも秘密の話のうちだからね?」

「薬師のポーションって不味いんだよな!直接煮るらしいから!そうだ!俺ら錬金術師の知り合いはいねーんだ!ポーションって常備品だからよ!お前欲しくなったら売ってくれねえか!?あ、俺シグナルな!宜しくアキ!」

「あ、わ、私も!私、サルビア!洗浄魔法、凄いわ!こんなにピカピカな装備、どこのクリーニング店にも負けてない!髪も整髪剤使うよりサラサラ!肌も温泉浸かるよりしっとりすべすべ!だから.....時々....いえ、3日に1回は!.........お願いできないかしら?」

「えぇ........いや、いいけど.....薬師ギルドの人には魔力温存の為に洗浄魔法のバイト雇えとか言われたのに逆に行ってる気がする.....。洗浄魔法なんて微々たる魔力だしいいんだけど、薬師ギルドの受付嬢に聞かれたら怒られそうだから、こっちも内緒で受付します.....。」

「何だぁ?アキお前その受付嬢の尻に敷かれてんのかぁ?」

「そういう訳じゃないけど......なんか登録初日から瓶買い占めたり調合レシピ買いすぎで驚かせるなって怒られて。」

「苦手意識になっちゃった?」

「いや、いい人だし、美人だし、甘えてるよ。怒らせたくないだけ。」

「それを尻に敷かれてると言うんだ!はっはっは!」



なんだかんだ話してるうちに仲良くなり、聞けば幼なじみのBランク冒険者達、『アダマンタイトの絆』達と帰路に着く事になった。

なんでも護衛依頼の帰りに、ただで帰るのもと森に入って少し魔物狩りでも、と入り、キノコは各種類薬師ギルドで普通買い取ってくれるらしいが、たまたま大量に見つけたから初めて採取しようと試みたらしい。

俺もたまたま念動力使ってたからいいけど、何か採取する時は初めに鑑定魔法を使おうと思った。


途中、オーク5体と遭遇したが、1人1体で事足りた。

Bランク冒険者の実力やいかに、と見ていたが、

大柄の熱い兄さんブラウンさんは背負ってる巨大な剣を危なげなく振り回し、胴体を一撃で真っ二つ。小柄な魔法使いの言葉使いの荒いにいちゃんシグナルさんは水魔法『ウォーターカッター』で首を跳ね、青髪ポニーテールの紅一点お姉さんサルビアさんは弓を放つのに風魔法付与して打ったらしく、こちらも首を一撃で跳ねさせた。

ちょっと苦戦したのはおそらく最年少のタレ目少年ハク君。それでも1人でスピードを生かして胴体に足にと何度か剣で攻撃して、倒れたオークの首を体重乗せて剣を突き立てて絶命させた。

俺はそれらを横目にほうほう、と観察しながらも刀を一閃して首を跳ねた。



「アキ、思ったよりやるなー。細っこいのに。」

「筋肉あるもん。」

「どれ、おぉ、意外や意外、結構なマッチョじゃん!」

「へっへー。だろだろ?」

「はいはい、筋肉自慢は置いておいて、どうする?オーク5体もなんて、解体しても肉そんなに持ってけないわよ?討伐証明部位と牙、魔石抜いて、1体の半分くらいの肉分けて待つ?後は燃やそうか。」

「えーっ勿体ない!」

「あのねアキ君、こんなに持てないし、欲張って重いの運んで違う魔物と遭遇して遅れをとったら目も当てられないわよ?」

「大丈夫!俺収納スキル持ち!入る入る!」

「マッジー!?アキ、でかした!お前超便利な奴じゃん!」

「うん、今解体しちゃうから、待っててね。」



言うが早いか、入れ物として近くの木を一閃し、木魔法発動して、ペラッペラにする。肉屋ではさんでるあれだ。木の最大幅で作ってあるけど、オークの大きい肉ならこんくらいないとでしょ。木1本分あるからそりゃー大量に出来た。今後も使うだろうから大量なのは大歓迎。洗浄魔法発動し、とりあえず切り株になった所に置いておく。



「解体」



討伐証明部位の右耳、牙、魔石、肉に分ける。肉は肩ロースとかももとかバラとかヒレとか色々あるけど、そこまではきっと分けなくてもいいだろう。それを一括りに.....できねぇな。3枚繋げて肉を一括り!鑑定によると300キロ弱は圧巻だね!ここまで全て念動力で浮かせつつ行っているんだが.....。



「ねー!このまま収納入れていー!?1人一括りにしたからさー!」



返事がない。どうしたと振り返ると、ぽっかーーーんとした『アダマンタイトの絆』の面々。あんだよ。



「い、いやいやいやいやいやいや」

「お、おかしいおかしいおかしい!」

「嘘だろ無詠唱何回したんだ何個属性持ってるんだそもそも魔力量どんだけあるんだおかしいだろ!自信なくすわ!」

「凄い奴もいたもんだ!!」



ハク君とサルビアさんはただブンブン首を振って否定の言葉だけだったが、シグナルさんが一息に疑問と憤りを口にしてくれた。

成る程。ここまでやると魔力量多いって事になるのか。ーーーまぁ隠すの面倒なんでそこは自重しないけどね!!


魔石と牙は売らないつもりなので、とそれぞれ渡し、今度こそ聞いてから浮かせたままだった肉を異空間に放り込んだ。

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