21.虫は嫌いでバリバリバリ

「はい〜身分証見せてください〜」



街を出る為に門に着いたら、ヴィンさんがやる気なさそうに出る人をチェックしていた。



「おはよーヴィンさん。やる気ないの態度に出てるよ。」

「あ〜ん?おー、アキか。はよーす。」

「うわガラ悪っ」

「うるせーやい。俺は夜勤明けなんだよー、つれーんだよー。上司が次の交代要員なんだが、交代の時間になってもこねーのよ。やってられっかよー。ずっと立ってて腰も痛いしよぉー。古傷の膝もいつもより痛い気がする。あーやだやだ。あー、街出るんだろ?身分証出せや。」

「はい。」

「お、冒険者になったんだな。ーーと、何だ? Cランク?ーーーその上薬師の銀ランクついてるじゃねーか。どーなってんだ?」

「そうなってるんだよ。」

「あぁん?」

「俺ね、収納スキルと回復魔法が使えるの。魔法なしでも戦闘も出来るから、足手まといにならないサポート枠で Cランクスタートだってさ。ーーまぁ、魔法は回復魔法だけじゃなくてもなんでも使えるんだけど。そんなわけで錬金術も使えたから、薬師ギルドにも登録してポーション作って納品して銀ランクになりましたとさ。」

「ーーーわけわかんねぇな。」

「頭働いてないんじゃないの?回復魔法かけたげよっか。」

「あぁ?」



言うが早いかパチンっと指を鳴らしてヴィンさんに疲れもなくなるように回復魔法をかけてやる。ヴィンさんの身体が発光して、収まるとーーー。



「うぉ、なんだ、身体が軽い。ーー古傷まで痛くねぇんだけど。」

「えっへん。俺凄いだろ。」



踏ん反り返ってやると、ヴィンさんは俺の頭をワシワシした。



「おー、凄い凄い。アキって便利だな!疲れてたらまた頼むわ!」

「本来はお金とる事案だかんね!ヴィンさんだけだかんね!」

「おー、優しー優しー。」

「心がこもってなーい!」



軽口を叩き、行き先の方角を聞き、ヴィンさんと別れた。



ーーーーーーーーー


西街道と呼ばれる整えられた道になり歩きやすいなー、と思っていたら時々ゴブリンが出るようになった。

討伐部位は右耳で、魔石しか売れないようなので3〜5体でくるのを刀の一閃一閃で倒し、右耳切り取り、『アポーツ』で魔石引き寄せ、異空間に放り込み、『ファイア』で塵と化すまで燃やす。


.......ダイオキシン大丈夫かな....いや、あれは不完全燃焼と塩素系の話だった筈....高温を意識しよう。二酸化炭素は知らね。核がない世界だから平気だろう。........多分。


そろそろ探索強化の索敵魔法使おうかな、と思って森に入る。

薄らと広げると、地形と魔物の位置が分かる。キノコも探さないとな。草木を含めて解析........やべ、これは膨大だ。


仮にも神と同等の力が使えるってんだから、やってやれない事はない。力を上手く使えるようにの修行なんだから、こうゆう事もたまにはやらなきゃな。

きっとただの人間がこれやったら頭パンクする。



「キラービーの巣、みっけ!ーーーの近くの湖付近、キノコ多数!ゴー!」



見つけたら用はない!と直ぐに解析は解除する。パンクしなくてもうぜーわ!

頭を振って、ヨーイドン!と鬱憤を発散するように駆け出す。自重しないで走ってるから草木がビュンビュン通り過ぎる。


途中単体のキラービーが巣を守る為か攻撃してくるが、俺のスピードに追いつけないのか空振る。正面からくるのは針の根元を引っこ抜きつつキラービーのみ燃えるように引っこ抜いた部分から燃やす。あ、やべ魔石忘れた。高温短処理で走りながら倒して異空間に針を放り込み、巣まで到着した。


勢いよく来ちゃったもんだから止まるのにズザザッと大きく音が出た。働き蜂だろう、そこかしこにいるキラービーがみんなこっち向いた。



「虫はあんまり、好きじゃない、から!こっち見んなーっ」



天に向かって腕を上げ、振るう。

ーーと、バチバチッと雷がそこかしこで光る。

これがほんとの青天の霹靂じゃ!



「ーーふう、ちょっとスッキリ。」



ちゃんと調整したので、飛んでいたのが落ちたのは半数程。発散は計画的に。後は睡眠の魔法を使う。



「スリープ」



よぉーく眠れ〜

煙が発生し、半数の生き残りと、巣の中にも充満するように煙を操作する。


後は引き寄せ便利魔法、『アポーツ』をかけて蜂蜜各部屋から半分ずつくらい採取すればいいかなー、と思ってたが、入れ物どうすべ。入れ物の事なーんも考えてなかった。

巣がでかいんだよな......。思ったより採れそう。



「ま、作りますか。」



ないなら作ればいーじゃない、とその辺の木を刀でスパスパっと切り、軽量カップの持てる範囲で最大の形(凡そ5リットルくらい)に木魔法で整形。これを沢山作り、蜂蜜が浸透しないように保護魔法、ついでに軽量魔法、洗浄もかけて完成。20個できたけど、足りるかな。足りるだろ。足りなかったら戻す。よし。



「アポーツ」



ーーーーあ、もういっぱいになる。やべ、溢れる前にストップ!ーーーむう、半分もらう筈が、4分の1ってとこだな。まぁいいか。沢山あっても困るだろ。買い取れない部分は異空間の中身がまた増えるだけだ。お菓子作りにもってこいだからまぁそれは歓迎する。


もう遠い昔だけど、地球では料理の専門学校行ってたくらいだから料理は好きだ。どっちかというと、お菓子の方が食べるの好きだから作る回数も多い。


あ、ラップはないな。納品で蓋ない容器も微妙なので、注ぎ口も含むようにピッタリと沿って溝を作って蓋を作る。勿論保護魔法と洗浄魔法もコンボで使う。これで倒れても溢れない。20回それを繰り返して、満足して異空間に入れる。



「さ、てーーー」



一息ついて立ち上がると、ボッタボタ落ちたキラービー。

眠りの魔法をかけた方はいずれは目を覚ますけど、その前の雷に打たれた方は少し焦げて絶命している。んー、見て回るのも面倒だし、やっぱ魔法で集めようか。土魔法を発動させて土の地面を陥没させる。



「探索・状態死亡、アポーツ」



別に声に出して言わなくてもいいんだけど、詠唱はあった方がこの世界普通らしいし、周りに何をしてるかも示しやすいので、慣れの為に声に出す事にしている。咄嗟の時と連発する時はなかなか声に出すのは難しいけど。

なるべくならの方向で頑張ろう。



「分解」



陥没した所に集まった死亡したキラービーを針と魔石だけ纏めて抜き、そのまま異空間へ。後処理を高温焼却処分し、跡形もなくなった所で土魔法で陥没を元に戻す。なんだか焦げた気がするので、その辺りの落ち葉と混ぜ混ぜしながら整形する。湿った平らな地面を見て、1人頷く。


ここまでやってまだ眠らせたキラービーが起きない。

このまま放置で他の魔物に襲われてもなぁ、と思って全体に『キュア』を使って状態異常を回復。回復をかけたそばから湖に向かう。起き上がって攻撃されても困る。


湖の側まで来ると、木々であまり日のあたらない場所にキノコがびっしり生えてた。

『鑑定』を使って見ていくと、毒キノコ、毒キノコ、毒キノコ......痺れキノコ、痺れキノコ、痺れキノコ.......おりょ、この2つはいっぱいあるけど眠りキノコがない。

とりあえずそのまま念動力で(この世界ではなんて言うんだろう。サイコキネシス?)それぞれ40個採取して異空間へ。30個は上限の依頼数、10個は勿論自分用。


眠りキノコはどこじゃ。

この辺に反応はあった筈なんだけど。

湖の周りを鑑定しながら歩き出す。

途中癒しの薬草の群生地もあって採取しつつぐるりと周り、ちょうど毒キノコと痺れキノコを採取した反対側らへんに、眠りキノコはあった。あったけど.........。



「この人達、なんで寝てんの?」



そこには眠りキノコをそれぞれ持ちながら、すやすや気持ちよさそうに寝てる冒険者達の姿があった。

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