18.瓶を製造依頼

「そういえばサンディさん。ポーション納品ってなんの瓶でもいいの?」

「消毒してる透明な瓶ならなんでもいいわよ。ただ、持ち込み瓶だと調合者の印になるものが必要で、回収ボックスに混ざってくる瓶にうちで販売しているもの以外があったら、洗浄なしで返還されるわよ。返還費用も徴収されるし、自分で洗浄もしなくちゃいけないし、瓶1つ1つに印もつけなくちゃいけなくて、他に瓶用意してる人はあんまりいないわね」

「でも、昨日瓶いっぱい買ったら怒ったよね?瓶足りなくならない?」

「まだ裏にもあるだろうけど、洗浄魔法使える人がね、不足してるのよ。手作業となると、洗って、煮沸して、乾かして、でしょう?」

「どっちにしても他から買わなきゃいけない?」

「あんなにいっぺんに買うもんじゃないのよ。5個とかで間に合うの!」

「えー、毎度来るのは面倒臭いし、例えば角狼の魔石なら18本一気になくなるよ?」

「だから、そんなに一気に普通は作れないんだってば.......アキ君、昨日の調合レシピの買い方からいけば、相当お金持ちよね?貴族様の出なの?」

「ううん。たまたま前に商売で儲かってただけ。」

「その年で商売?大商人の子とか?」

「そういう訳じゃないけど、まぁ、そういう事でもいいよ。」

「言う気はないのね.....まぁ、犯罪に関わっていればギルドに所属もできないし、いいけど....それで?お金持ちなのに、ポーション売りたい訳は?」

「作れたから?」

「なんで疑問系なのよ.....」

「だって冒険者も錬金術師も、ワクワクするでしょ。」



そう言ってニッコリ微笑めば、サンディさんは呆気にとられた顔をして、次にしょうがない子ね、と困った顔をした。



「商人ギルドが近くにあるから、印付きの瓶製作を頼めばいいわ。そうやって他のポーション瓶と区別して人気の出てる錬金術師の方もいるから。その方は洗浄魔法のバイトさんを確保してるみたいだけど。」

「うんわかった。元々瓶探しに商人ギルドに聞きに行こうと思ってたんだ。制作を依頼できるなら、お願いしてる間に冒険者ギルドで依頼でもしてようかな。」

「洗浄魔法のバイトさん募集もギルド依頼にしてみたら?」

「自分でできるけど.....まぁ、気が向いたら聞いてみるよ。」

「洗浄魔法は錬金術師の方なら結構使える人多いけど、生活魔法がいくら微小の魔力だって言っても瓶や素材に毎度かけるなら魔力温存の為に雇ってもいいと思うわ。」

「うーん、洗浄魔法くらいならそんな苦にならないしなぁ。」

「........魔力どれだけ多いのか気になってきたわ。」

「秘密って事でひとつ。」

「.......もう。秘密も魅力のひとつって言うけど.....もう魅力的よ?」

「それって口説き文句?」



ニヤリとすれば、生意気よ、と言われた。それにまた笑い、瓶の注文して来るねー、と言って薬師ギルドを出た。



ーーーーーーーーーー

ーーーーー


「瓶の注文ですか?ーーーあぁ、そのバッジ。薬師様ですか。」

「錬金術師の方かな?登録したてだけど。」

「いやいやご謙遜を。銀のバッジはもう一人前ですよ。その若さで将来期待持てますな!」



商人ギルドの受付に瓶の制作を相談しに来たら、ここの受付は小太りのおじさんだった。愛嬌のある調子のいい感じのおじさん。制服にネームタグがついてる。プランプさん。おぅ。名前まで小太りっぽい。



「どういった感じの瓶がいいですかな?印のデザインはどのように?」

「えーと、香水の瓶ってあります?」

「香水の瓶ですか?ちょっと待って下さいね。」



不思議に思う事なく、プランプさんは奥に引っ込んだ。すぐに戻ってきて、いくつか香水を手にしている。



「うちで扱ってる一部になります。香水の瓶を参考にポーション瓶を作るのですか?少しお高くなりますよ?」

「ギルドで回収もしてるって言うし、個人で売るとしたら作業料分と瓶分くらいで高くすればいいかなって。」

「まぁ.....需要があれば売れるのがポーションですしね。裕福層や貴族向けなんか特別感があっていいかもしれません。」



いくつか並ぶ香水瓶を手に取り、漏れなそうな捩れている蓋が付いているクリスタルガラスみたいな細かいカットの瓶を選ぶ。



「これをもう少し長くした形って出来ます?もう少しカットは粗くてもいいんだけど。裏表の部分はカットなくして、正面のここに印入れようかな。印は......どうしようかな。」

「紙と羽ペンをお出ししますので、お望みの瓶の形も含めて、書いて頂けますか?複雑な印でも大丈夫ですよ。型を作りますので。」



そう言われて受け取り、羽ペンを持ってしばし考える。用意されたインクにつけ.......描きにくいよな羽ペン。ボールペン出しちゃだめだろうか。だめだろうな。チッ


1番馴染み深いのは、悔しいが親父達のシンボルだ。最初に使った杖もそれだったし。

特に思いつかないし、薔薇の蔦と鷲を書き、真ん中にアキのAを装飾的に書く。横に瓶の形も書いて、プランプさんに渡す。



「これでお願いします。」

「拝見します。ーーわぁ、絵、上手ですね。これならわかりやすい。それで、いくつ作りますか?」

「1000本で。」

「え......多くないですか?」

「いいんです余っても。収納スキル持ってるし、作りたい時に数がないとモヤモヤしますから。出来た分から納品お願いします。数はいくつからでもいいですよ。1週間後ずつ来てもいいですか?」

「そうですか......最初はサンプルを作って確認しますので、そうですね....3日後でどうでしょう。」

「サンプル確認ですね。わかりました、3日後来ます。料金はいくらですか?」

「あ、はい、ガラス瓶でカットも入りますし、印入りですけど.....1000本と大量注文ですから、割引きして1つ大銅貨1枚!いかがですか。」

「小金貨1枚とキリいいですね。ではこれで。」



財布から小金貨1枚を出す。領収書を貰い、異空間に放り込む。

異空間が雑多になってるけど、そこはご都合主義、ソートができるしフォルダ分けみたいにもできるのだ。一覧もできる。たまに整理している。



じゃあもう今日は用事ないかな、街探索でもしようかな、と思って入り口に向かうと、ここでも掲示板がある。何書いてあるんだろうー、と思って近づく。



ーー周辺の道の状況ーーと、この街の商店の位置情報、あと、なんとカレンダーがあった。ペラペラとめくる。ーーー成る程、全部の月が30日だ。1年は360日と判明。

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