17.ポーションとランクアップ

次の日、朝食を頂いた後、とりあえず1週間分の部屋更新を、片付けをするニコちゃんに良く似た綺麗なお姉さんに声をかけてお願いする。



「あの、ニコちゃんのお姉さんですか?」

「え......?あらあら!まぁまぁ!どうしましょ!お姉さんだなんて!こんな叔母さん捕まえてお上手ねぇー!ニコの母ですよぉー!」



いや、マジでお姉さんだと思う見た目してるから。あれかな、獣人の方は若い見た目なのかもしれない。



「失礼しました。女将さんでしたか。部屋の更新を1週間お願いしたいのですが、いいですか?」

「はいはい。受付までお越し頂いていいですか?」

「はい、お願いします。すみません片付けの途中に。」

「いえいえいーのよぉ、もう他のお客様は出てますしぃー」



コロコロと笑う愛想のいい女将だ。綺麗だし。



「1週間更新なさるという事でしたけど、1回大銅貨1枚で洗濯も受付ています。洗濯籠に収まる量までで、洗濯の難しい服は斜向かいのクリーニング店を勧めています。洗濯終わりは出した日を含めて3日目の朝受け取りできます。出発日にご注意頂ければと。洗濯を注文する時は、クローゼットに部屋番号付きの洗濯籠がありますので、その洗濯籠に洗濯したい物を入れて、各階の洗濯受付の棚に置いて下さい。」

「ありがとうございます。雨の日続きとかは、受け取り延びないんですか?」

「ええ、私が水魔法と火魔法、うちの人が風魔法と火魔法と使えるから、温水と温風が出せるのよ。うちは基本的に裏庭向きの日差しの下で1籠ずつ洗濯と乾燥を魔法でするから、4籠くらいなら1日にできるの。日中は皆さんいらっしゃらない方が多いから、もし私達に用事があってこの辺りにいなかったら、そこの廊下の突き当たりが裏庭に続く扉になってるから、いない時は宜しくお願いします。」



おお。異世界っぽい。



「成る程。よくわかりました。ついでに聞きますけど、クリーニング屋さんも魔法を?」

「あら、うふふ、好奇心旺盛ですね。そうですね、クリーニング屋さんは何人かレベルの高い洗浄魔法を使える方を雇ってるそうなので、そうでしょうね。」

「洗浄魔法.....ニコちゃんも洗濯したりするんですか?」

「ニコは、お客さんに洗浄魔法を使う事もあるので、魔力温存の為に、洗濯に魔法は使いませんよ。洗濯物を畳んでくれたりはしますけど。」

「いい子ですね。」

「うふふ、そうですね。よくここを手伝ってくれる、働き者です。午前中は神殿に勉強に行っていませんけど、午後からはいます。昨日は洗浄魔法をされたみたいですけど、いかが致します?」

「えーと、この街にお風呂屋さんてありますか?」

「お風呂屋さん.....えぇ、ここ宿屋街の、奥の方にありますよ。ただ.....」

「ただ?」

「団体客の方や、地元の方もたまにいったりで、なんというか.....いつもとても混んでいて.....」

「芋洗い状態、と?」

「ーーーまぁっ!ふふ!的確な言い方ですね!そうです、そんな状態なので、綺麗にちゃんとなってるのかは疑問です。」



芋洗い、の言い方はこの世界にはないのか。食べ物の呼び方一緒みたいだからあるかと思ったけど。



「そっかぁ。じゃあ、1週間毎日洗浄お願いってできますか?回数的に無理なら自分でかけます。」

「あら、洗浄魔法が使えるの?」

「はい、でもポーション作りに使ったりするので、お願いできればと。」



嘘だけど。なんせ魔力∞だし。

昨日聞いたら、ニコちゃんのおこづかいが増えるそうだから、お願いしたいだけ。



「あらぁ、錬金術師の方でしたの。」

「冒険者でもありますよ。どっちも登録したばかりですけど。」

「まぁまぁ、頼もしいですこと。何かあったらお願いしようかしら?」

「精進しますね。」

「ふふ。洗浄魔法でしたら、利用される方はそんなに多くないですから、毎日でも大丈夫ですよ。」

「じゃあお願いします。朝食夕食つきと洗浄魔法で1日大銅貨9枚でしたよね。」

「はい。7日分ですから、小銀貨6枚と大銅貨3枚になります。」

「はい、ではこれで。では、外出してきます。」

「はい、お部屋掃除しておきますね。いってらっしゃーい!」

「行ってきます。」



ほんわかした人だな。

あと、1週間は7日と判明。24時間に7日、月はどうなんだろう。


ーーーまぁとりあえずいいか。まずは薬師ギルドにポーション売りに行こっかな。ランクあがる筈。バッジ貰ったら、一般販売もしやすくなるんだよねー


今日の格好は崩した綺麗目だ。薄手のパーカーに、ジャケット、細身のスラックスにそれに合わせた革靴。昨日は黒ばっかだったけど、今日はパーカー白、ジャケットとスラックスは濃い灰色。

冒険者ギルドは今日行く気ないし、瓶探しに薬師ギルドから近いし商人ギルドに聞いてみようかと思う。



ーーーーーーーー

ーーーーー


《ーリリリン》


繊細なドアベルの音を鳴らして、薬師ギルドのエントランスに踏み入る。そのままカウンターへ。あ、サンディさんいた。



「こんにちわー」

「あらアキ君。昨日ぶりね。今日はどうしたの?そんな格好してると、冒険者には見えないわねぇ。」

「似合う?今日はね、ポーション作って来ましたー。」

「似合いすぎよ。生地も上質そうだし、顔もいいから、みんな振り向くでしょ。ーーってポーション納品?早速ね。私鑑定スキル持ってるの。レベルも5よ。どうぞこちらに出して。」

「お願いします。」



異空間から魔力ポーション(普通)7本と、魔力ポーション(良品)1本、ポーション(良品)を5本だす。(良品)の1つずつは必要なるかもしれないから残しておく。魔力ポーション(特大)も勿論出さない。



「ーーー待って。多くない?」

「ーーーえ?この他に3本作ったけど......多いの?」

「16本も作ったの!?昨日1日で!?しかも夕方からよね!?」

「えぇ何その驚きよう.........。夕食食べた後だから作ったのは夜だけど?レシピ見て、悩みながらだったし1時間くらい?」

「えぇーー.....何その短時間。どうしたらそんな事できるの.....?普通、魔力回復しながら休み休み作るものよ.....?それだって魔力多い人でも1日7本くらいが限度よ。薬師でも工程色々あるから時間かかるし......。」

「魔力多いの。」

「そうみたいね.....凄く凄く多いみたいね.....いいわ、鑑定する。ちょっと待ってて。終わったら呼ぶから、あっちの椅子に座っててもいいし、売り物見ててもいいし。」

「はーい。」



そっか多いのか。最後の18本作らなくて正解だったな。

ポーション売り場に行ってみよ。



ポーションの列と、魔力ポーションの列と、毒消しポーションの列と、麻痺消しポーションの列がある。瓶にはタグがつけられていて.....あ、調合者の名前とポーション(微)とか(普)とか書かれていて、それぞれ仕切りわけされてるんだ。へぇ。賞味期限は1年程。効果が切れると透明になる....へぇぇぇぇぇ〜〜。値段は.....棚に直接値段表貼られてる。えー、日本円だと....


ポーション(微)35%回復)3600円

ポーション(普)50%回復)5000円

ポーション(良)75%回復)6000円

魔力ポーション(微)35%回復)4400円

魔力ポーション(普)50%回復)6200円

魔力ポーション(良)75%回復)7200円 

毒消しポーション 7600円

麻痺消しポーション 7600円


ギルドから一般に売るとこんくらいか。ギルドに降ろすのはこの半分くらいかな?

誰かに売る時の参考にしとこう。


他に化粧水やら洗髪剤やらを見ていく。

げ、どっちも銀貨1枚って書いてる。1万もすんのー。あ、しかもこれシャンプーだけじゃない?リンスはどこじゃ。いや寧ろリンスインシャンプーにしよーぜ。



「ーーーー君」



風邪薬、腹痛薬、頭痛薬は、おお、割とお手頃、大銅貨2枚。魔法だと「キュア」1回で全部治るけど。それ言っちゃうと毒消しも麻痺消しもポーションもだよね。「ヒール」「ハイヒール」とかさ。魔法って反則。魔力回復だけはアイテムのイメージだけど。

でも昨日の感じだとあんまり回復魔法って万能じゃないのかな。「フルケア」とか使えば部位欠損も状態異常も治りそうだけどなー。



「ーーキ君」



王都だと凄腕の回復師がいるかもしれないね。ここの回復師さまじゃー、て話してたし。



「アキ君!」

「ひゃい!」



大きな声で呼ばれてビクッとする。

サンディさんの声だ。声の聞こえた方ーー受付カウンターの方に振り返ると、ムスッとした顔をしたサンディさんが手招きしている。

慌てて小走りで近寄る。



「はい!はい!すみません!気づきませんで!」

「ーーもう、随分精霊の世界にいってたんじゃない?何を考えてたの?」

「ーーーーいえ、回復魔法の事をば少し.....」



精霊の世界とは。と思ったけど、今のニュアンス的に考えると思考の海に沈むとかそんな言葉だろう。頭の片隅にでも覚えておこう。



「あぁ、回復魔法使えるのよねアキ君は。回復魔法使えたらポーションはいらないだろうけど、誰でも回復手段を持てるのは大きなアドバンテージよ。」

「そう思います。ただ、魔法って反則だよなって、ここの回復師さまはどうゆう回復魔法使うんだろう、とか、王都の回復師さまとかだとすんごい回復魔法使えるのかなと。」

「色々飛んだわねー。でもアキ君、ポーション代金が出たから、こっちの世界に戻ってきてくれるかしら?」

「はい、ごめんなさい。戻りました。」


「量にも驚いたけど、品質にも驚いたわ。確かに慣れてないうちに錬金すると魔力入れすぎて良品も出てくる事はあるけど、逆に足りなくて出来る微品のものがないのよね。これをポーションの方は5本とも良品だし、どうやったの?」

「えっと、魔力ポーションの方を先に作ったんだ。1番は自分の魔力を入れすぎるのが問題で、 やってくうちに魔石の魔力が使われるのが多いのに気づいて。必要数がわかったから、最初から必要数で最大で出来る分の素材を出して、一気に作ったら、ちゃんと錬金したかった普通のができたから、感覚覚えてるうちにと、テンションあがって鑑定しないままポーションの方にとりかかったら.....みんな良品になった。難しいよねタイミング。」

「.......失敗なのか成功方法なのか判断に迷うわ。普通はね、いっぺんにつくれるだけ魔力がないから、もっと自分の魔力の流し具合がわかるのよ。魔力量が多いと逆に流しすぎの弊害がおこるのね....予想外だわ。」



そう言われても困っちゃう。やっぱり慣れるまでは、鑑定しながらじゃないとポーションは作れないなぁ。魔石使うタイプは、そっち基準で一気にが有効な事がわかったので、何より一気に出来るのも魅力的で、一石二鳥だ。



「それより、代金精算ね。

ポーション(良)は1つ大銅貨3枚よ。5本だから小銀貨1枚と大銅貨5枚ね。

魔力ポーション(普)は大銅貨3枚と小銅貨1枚。7本だから小銀貨2枚と大銅貨1枚、小銅貨7枚ね。

魔力ポーション(良)は1本だけね。大銅貨3枚と小銅貨6枚。全部で小銀貨4枚と小銅貨3枚ね。はい、お納め下さい。」



4万300円なーりー。チャリーン。



「はい確かに。ここで売ってる半分の金額って覚えやすい。」

「そうね。何処かでお店出す事があったら、出来ればここと同じ価格帯にしてほしいわ。こっちが売れなくなっちゃうから。」

「個人的なのは卸価格っていうか、今の価格でもいい?」

「本当はもう少し高い方がいいと思うけど.....そこまでは縛れないから、好きにしたらいいわ。」

「そんな専門で売ったりしないから、大丈夫だよ。」

「そう祈るわ。アキ君みたいに1人で沢山いいもの錬金できたら、囲い込みたいって貴族とかも出てくるわよ。気をつけてね。」

「うげー。」



そんなんいたら、最悪逃げるわ。



「さて。アキ君、規定数を超えました。ランクが上がります。ーー銀レベル昇格おめでとうアキ君。これが認可証とバッジよ。ギルドカード更新するから、カード借りるわね。」



いつの間に作ってたのか認可証とバッジをくれた。カード借りると手のひらを上にして出されたので、ギルドカードを異空間から取り出す。そして認可証を異空間に入れ、バッジはーーーー



「はい、ギルドカード更新したわ。」

「ありがとう。ねぇ、このバッジは、服とかにつけるの?」

「そうね、つけとくとギルドに所属している銀ランクの薬師もしくは錬金術師として認知されるわね。」

「そっか。ん、今日はジャケットにつけとこうかな。サンディさん、つけてぇー。」

「もう、甘えたね。」



そう言いながらも、サンディさんはわざわざカウンターから出てきてつけてくれた。

近づくと、なんだかいい匂いがした。



「サンディさん、いい匂いする」

「やだ、恥ずかしいじゃない」



素直に言うと超至近距離の顔と目があった。少し顔を赤らめてるので、綺麗よりも可愛く感じた。

自然と微笑めば、「イケメンってずるいわ.....。」と呟かれた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る