13.薬師ギルド
《ーリリリン》
なんだか繊細なドアベルを聞き、薬師ギルドに足を踏み入れた。
広々としたエントランスに、入り口付近に空瓶回収箱が置かれ、左側にはポーション類を置いている売り場、薬草を品質管理しているのか温室風なガラスの向こうに薬草毎に分けられた棚がある部屋、その部屋のすぐ近くに置かれている棚には清潔を思わせる白い布の上に瓶が下向きに、そのフタなのか並べて置かれている。それぞれ手持ちのカゴが置かれているので、購入したいものをエントランスの正面に大きく半円に作られたカウンターに持って行って精算するんだろう。
右側にはどこかへ通じる扉、少し凹んだ形となっている所へ掲示板、本棚、テーブルと椅子がいくつかある。あの本売り物かな。ーーいや、売り場っぽくないから、薬師が見るんだろうか。
分からなかったら聞いてみる。これ基本。
ぐるりと観察したら、カウンターに向かう。
「いらっしゃいませようこそ薬師ギルドへ。本日はどのようなご用件でしょうか。」
カウンターへ到着するまでに、受付のブロンド美人なお姉さんは一瞬目を見張ったが、到着する迄には顔を整えてにこやかに微笑んだ。
すげぇプロだ。今まで顔でボケられなかった事あんまりないんだけど。
「こんにちは。美人なお姉さん。ここはポーションと薬草購入以外に、どういった事ができる場所ですか?」
「うふふ、お上手ね。私、サンディと申します。以後お見知り置きを。
ここでは常時販売されています体力回復、魔力回復、毒消し、麻痺消しのポーション、その他ハンドクリーム、化粧水、洗髪剤、風邪薬、腹痛薬、頭痛薬、それらに該当しないものの調剤・錬金術師による錬金術の依頼受付、薬草と錬金術に必要な品物の買取ー因みに掲示板に必要素材と募集期間が記載されたものが貼られています。
調合方法の開示もお金はかかりますが行っています。こちらは開示側は登録制になっていまして、使用料が5年単位で5割、4割、3割と減り、1割になると固定され、死亡まで保証されます。新しい薬剤の調合法や、錬金術による製作品がありましたら、是非ご登録下さい。」
「ポーション販売は資格が要りますか?」
「ポーション販売は誰でもできますけど、こちらで認められると認可証とバッジが与えられます。薬師ギルドに所属という形にはなりますが、信用面では最適です。所属していない高名な薬師様もいらっしゃいますが、そちらは門外不出、お弟子さんをとられたりお身内の方に継がれたりと、昔からの縁等もあり、信用されるまで時間がかかります。
薬師ギルドに所属される時は、各ギルド共通となりますが、登録に大銅貨5枚必要です。こちらはギルドカード発行の料金、鑑定水晶の維持費等の料金となります。ランクは鉄、銅、銀、金、ミスリル、アダマンタイトとありまして、ポーション販売の認可証は銀からとなります。一般のポーションレベル「普通」が作れるレベルとなります。
ランクを上げるには体力か魔力ポーション、特別なポーション査定10回となります。鉄ランクは登録時となりますので、体力か魔力ポーション「微」10回で銅へ、「普通」10回で銀へ、「毒消し」か「麻痺消し」10回で金へ、「石化回復」等特殊な依頼等10回で「ミスリル」へーーー
ーー現在アダマンタイトは不在でして、私も聞いた事があるだけですが、「全回復」のポーションやどんな病気もケガも呪いにも効くという「エリクサー」や、「マジックバック製作」などされた方には回数に限らずアダマンタイトへ昇格となります。
因みに魔力が少ない等で薬師として活動されている方でも、金までは目指せます。実際当ギルドで販売しているポーション等はほぼ薬師の方の調薬によるものです。」
「成る程、よくわかりました。そうだ、あちらの本棚はなんですか?」
「あちらにある本は、全て薬草や素材の図鑑となります。採取してきて頂くのに、誰でも閲覧可能となっています。」
「そうですか。後で見させて頂きますね。では、ギルド登録をお願いします。こちら登録料の大銅貨5枚です。先程冒険者登録を済ませて来たのですが、こちらに統合は可能ですか?」
「では鑑定水晶もお済みですね。統合は可能です。冒険者ギルドカードの...ありがとうございます。こちらの.....Cランク?先程登録なさったばかりだと聞いたのですが....」
統合可能だと言うからすかさず冒険者ギルドカードを出したら、ランクの部分で怪訝な顔された。美人は怪訝な顔しても美人だね。
かえって魅力増すかも。
「ああ、戦闘面でお荷物にならない事と、サポート面で回復と収納スキルがある為にCランク登録となりました。」
「それは.....魔力が多いのですね。回復となれば木属性と水属性、光属性も必要だったかと思います。おまけに収納スキル持ち.....これも無属性が必要だった筈.....これから冒険者としても活動されるのでしょうし、素材も集まりやすそうですね。魅力的です.....」
サンディさんの目が光った気がする。
そういえばステータス見てないや。
どーせチートなんだろ。神と同等の力あるって親父が最初から言ってたし、使い手になる為の転移なんでしょ、名目上。
いつこの転移終わるんだろうと思ってたけど、終われば俺神様になるの?え、なんの神様?気になる。
そして転移終わりもそれはそれで面白くなくなるかもしれない。微妙な心境。
ちょっとその辺り今度親父もしくはお袋に聞いてみようかな。親父は口下手だけどお袋は喜んでキャピキャピ教えてくれそう。
「ーーーアキさん、聞いてます?」
「うわっ、ご、ごめんなさい!ちょっと違う事考えてた!」
「ーーークスッ。その話し方が普通なの?その方がいいわよ。男の子っぽくて。私も堅苦しいのは疲れちゃうし。」
「おぅ.....おすましアキ君発動中だったのに.....サンディさんのお姉さま力パねぇ。」
「ふふっ変わった言い回しも使うのね。面白いわ。さ、説明に戻るわよ?このギルドカードのランク記載の所、今Cになってるわよね?ここの横に、鉄の文字が入ります。それだけ。いいわね?ーーでは、登録します。」
冒険者ギルドではカウンターの奥で見えなかったけど、ここは目の前で作業してるので見えたが、箱型の機械に差し込み、キーボードを入力ーーーって、旧型パソコンみたい!デスクトップ型!フロッピー入れるみたいにカード入っていった!!ーー出てきた!おおお、鉄の文字入ってるわ!
「これで手続きは終わりよ。後は何かある?結構喋ったから、喉乾いちゃった。」
「あ、だよね。待って、飲み物あげる。りんごジュースと梨ジュースと柿ジュースと水とコーヒーとお茶があるよ。どれがいい?」
「えぇっ、そんなに種類あるの?ーー梨と柿ってジュースになるの?気になるわ。あと私コーヒーは苦いから紅茶派よ。」
あ、全部通じた。ふむふむ、飲み物はみんなある、と。
「今度紅茶も用意しておくね。梨と、柿、どっちがいい?梨はさっぱり、柿はドロッとしてるよ。」
「えー、迷っちゃうなぁ。じゃあ柿は今度を楽しみにして、梨ジュースを貰おうかな。」
「はいよー、梨ジュース氷入り!どぞー」
「ありがとう。」
にっこりと右手でグラスを受け取って、落ちてきた右の髪を、左手で耳にかけて、サンディさんは優雅に飲む。
ちょっとドキっとしちゃったジャマイカ。
その後登録されている調合を全て買い取り驚かれ、売っている瓶を根こそぎ買って驚かれた怒られた。(売ってるもんよくね?)
本棚にある本をパラパラ速読&瞬間記憶をフル活用して読破し、掲示板で素材納品チェックして癒しの薬草100束納品してまた驚かれた怒られた。(あんまり驚かせないでちょうだい!って理不尽。)
しめてマイナス小金貨5枚と大銀貨4枚と小銀貨5枚と大銅貨6枚也。
545万6千円のマイナス。おうふ。
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