11.冒険者ギルド

本屋を出て、噴水広場まで戻ってきた。えーと、こっちからだと右の道が貴族街だろ。とキョロ、としたところで噴水の奥に高い時計が設置されている事に気づいた。

こちらの文字だけど、日本で見てきた時計の形と一緒。


ここも24時間なのかね。日の陰りから見て、12時間って事はないだろ。

現在の時間は15時過ぎ。異空間から、最初の転移からある、見た目おもちゃみたいな可愛らしい時計を取り出す。ーーーと、グルグルグル!と突然針が回り出した。劣化防止の魔法かけてるのに、壊れた!?と焦ったが、針が止まると、噴水広場にある時計の同じ時刻を指していた。


ーーーあぁ親父仕様ね、ビックリした。


不便がないよう取り計らう、謎の力、親父仕様。ご都合主義がモットーなんでは疑惑の隠れ親バカの親父だ。腑に落ちないを通り越して、もう色々諦めてる。


なかった事にして、時計を装着。

暫く時計のないところにいたから、久しぶりのご対面で嬉しくなる。

そういえば皮袋リュック、もういらないんだっけ、と背負っていた事を忘れていたリュックをついでに異空間に放り込む。


ふんふふん♪と鼻歌混じりにギルド方面を目指す。


目についた武器・防具屋で胸当てだけカッコいいのを買い、装着。大分冒険者風になるんでは。とウキウキ。妙に高い小金貨1枚だった。何これボッタクリ?と呟いたら、地龍の皮とミスリルでできてんだ馬鹿野郎お手頃価格だ!と怒られた。


えー、でも日本円にしたら100万だよ?見てる時にそのくらい高いですよー、こんなの使われてますよー、くらいの説明あってもよくない?と怒られたから無知ですまんがどうなのよそれ、と言ったら、目を逸らされた。腕時計なんて高価なもんつけてるから、ボンボンかと思って.....だと。


......まぁ俺も悪いか。でも誰でも説明した方がトラブルないと思うーとは言っておいた。


おもちゃみたいな見た目でも当時100万以上したものなんで、すわ目利きか、とも思ったけど腕時計自体が高価らしい。成る程。


欲しいもんはそのまま買ってしまう金銭感覚おかしくなってるのは本当なので、もうボンボン設定でいーや。


こっち側の服屋は魔物の素材を使用したりの冒険者向きの服なようだ。やっぱり覗き見たけど、機能的には今着てる方が上だ。ポッケたくさんあるし。革靴金入りだし。予備もいっぱい異空間にあるし。パジャマから高級路線のスーツまで様々入ってる異空間、服だけでいったら多分チェーン展開で店開けるくらいたまってるからな。

強化は魔法でなんとかしよう。

さっきの胸当てだけで冒険者気分は満足する事にした。


服屋を出て、少し歩くと直ぐに大きな外観の建物がいくつか見えた。おぉ、地図で見たギルド天国だね。


1番目に着いた建物を見上げると、剣と杖が交差した真ん中に盾のマーク。レンガ作りの建物で、両開きの扉だけど、人がよく出入りするからか半分が分厚いガラスだ。妙に扉とガラスが綺麗な気がするけど、荒くれ者ってイメージあるから冒険者同士で喧嘩とか何かあって直したのかもしれない。テンプレだよね。あれ、俺絡まれるパターンかな。にこやかにスルーしよう。



《ガギャラン》



ーーーいや、待て何今のドアベルの音。潰れたような音したんだけど。


入って直ぐの違和感のドアベルの音で、怪訝な顔で上を見上げる。ーーあぁ、やっぱり潰れてるわ。指差し。直れ。あ、なんか口ずさんどくか。



「レパロ」



淡い光が包んで、ドアベルが直る。

某魔法学校に通ったせいで自然と口に出た。この場合リペアのが良かったかも知れない。

ま、どっちも修理の意味だ、誰も聞いてないだろーーーーわ、みんな見てる。


〈にっこり〉


秘技・笑って誤魔化す発動。

綺麗に微笑むと、隣接されてる酒場にいる人達も、そこらにあるテーブルに座っている人達も、掲示板から振り返っていた人達も、みんな赤くなってくれたので助かった。

と、言うかここでも顔無双通じた。ラッキー。


しかし固まってるのは少しだけだ。

今のうちに受付らしいカウンターへ。



「こんにちはお姉さん。冒険者登録して貰いに来ました。お願いできますか?」

「ーーーへぁ!?は、はい!こ、こちら、必要事項をご記入下さい!せ、説明!説明はいりますか!?」

「お願いします。」



ピンク色のショートボブの元気そうなお姉さんに話しかけると、赤くなった顔をボーっとこちらに向けていたのを、ハッとしたように居住まいを正して、『登録用紙』と記入された紙をカウンター下から出してくれた。説明をしてくれるらしいのでお願いすると、冒険者規約と書かれた冊子をカウンターの上に置いた。



「詳しくはこちらに書かれていますが、ザッと必要事項を説明しますね。


まず、冒険者登録は15歳の成人以降、非犯罪者のみ登録でき、登録時に大銅貨5枚を徴収致します。こちらはギルドカード発行代、鑑定水晶の維持費の為となります。登録前に非犯罪者、名前、年齢、種族の確認の為鑑定水晶に手をかざして頂きます。ここで問題がなければ、登録用紙に任意の名前をご記入頂きます。愛称でも構いません。記入していただいた方の名前が冒険者ギルドカードに記載されます。


他に、戦闘方法の欄へは、例えば剣術だとか弓術だとか魔法だとか、戦闘出来る事を凡その括りで書いて頂き、サポートの欄は、例えば回復魔法を扱えたりするのを書いて頂くと合同の依頼や移動の依頼の残りメンバーに呼ばれやすくなります。また、サポート系があるとスタートランクが1つ上がります。


冒険者ギルドはスタンピート等の非常時以外は国の強制は受けない、独立した機関となりますし、合同依頼や指名依頼で声がかかっても受けるのは自由なので、スタートランクの面から言っても書く事をオススメします。それからーー」



息継ぎ大丈夫か、喉乾いてないか、と思ってピンク髪のお姉さんに異空間からりんごジュース出してあげる。氷入りのガラスのコップ仕様。



「ーーえっ?飲んでいいんですか?あ、ありがとうございますーーわ、美味しい!冷たいっ!?え?今どこから出てきました?え!?収納スキル持ちですか!?それサポート欄に必ず書いて下さいね!2ランクはあがりますよ!」

「続きをお願いします。」

「ーーーあぅ........こほん、ギルドカードには記入頂いた名前と、顔の念写、ランクが表示されます。

また、預金も出来、どこの支部でも引き出しができます。なくしたら再発行にまた大銅貨5枚が必要なので気をつけて下さい。預金の記録は引き継ぎます。引き出しには登録魔力が必要なので、窃盗による引き出しも出来ませんのでその点はご安心ください。ギルドカードには記載されませんが、預貯金と過去の討伐記録なんかはギルド側がカード提示してもらって照会はできたりします。ギルド側だけの事ですが個人情報の事なのでお知らせ致します。」

「へえ。鑑定水晶といい、随分凄い機能ですよね。誰が作ったんですか?」

「たまに聞かれますが、迷宮産らしいです。古代の叡智です。それを大昔に物凄い鑑定魔法の使い手が、死ぬ程努力して複製に成功したらしいです。」

「死ぬ程努力.....」

「えぇ!もんの凄い鑑定魔法の使い手が!死ぬ程努力したそうです!ギルドの創設者ヒストリーに載ってました!ーーー脱線しました。えーと、そう、ランクです。ランクの話でした。


冒険者のランクは、下からF、E、D、C、B、A、Sランクとあります。依頼受付できるのは自分のランクの上下1個まで、例えばDランクですとEとDとCランクの依頼を受付できます。自分の実力を考えて依頼を受付下さい。


ランクの上がる基準ですが、一定数ギルドに評価されたと判断できた時点で上がります。

色んな依頼を満遍なく受けた方が上がりやすいとは思います。


以上で大体説明したかと思いますが、質問はありますか?」



ふー、と大分喋って喉が渇いたのだろう。

空になったグラスを見て、チロリ、とこちらを見るピンク髪のお姉さん。はいはい、おかわりね。


今度は梨ジュースを出してやる。勿論氷付き。



「わ、ありがとうございます♪ーーえぇっ何これすっごい美味しい!さっきのりんごジュースも美味しかったけどっーー梨なの?梨ってジュースになるんだ!へーっ」



りんごも梨もそのままの名前なんだ。

さて質問かぁ。

ペラペラと規約に目を通す。


「ーーここ、冒険者同士の争いにギルドは干渉しないってありますが、ケガ程度は、て事ですよね?窃盗や殺人までなると流石に干渉しますよね?」

「あったりまえじゃないですか!犯罪はギルドカード剥奪、追放、殺人まですると犯罪奴隷もしくは状況によっては死刑になります!」

「成る程。じゃあ、最後の質問。」

「はい、なんでしょう」

「お姉さんのお名前は?俺の名前はアキです。18歳です。」

「へ。」



にっこり、と笑顔を見せると、ピンク髪のお姉さんは顔をまた赤くさせた。

直ぐにハッとして、「え、私名乗ってませんでしたか?タフィーと申します。19歳です!」と慌てていたが。


その後鑑定水晶を起動、大銅貨5枚を払い、『アキ』で登録。戦闘方法は体術・魔法・刀術、サポートは回復魔法・収納スキルで登録。スタートランクはCになった。高過ぎませんか?と言ったら、戦闘手段もあって、サポートで回復魔法と収納スキルの両方は即戦力だそうだ。なんでもFから Dは駆け出しと言われ、割とすぐランクアップし、Cから一人前なんだそうだ。Bになかなかランクアップにならないそうだが。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る