第23話 テルミニ駅
シエナで1泊し、鉄道でローマへ向かった。
「ローマは一日にして成らず」という諺のあるイタリア最大の都市ローマ。
人口は287万人。
ヴェネツィアが25万人、フィレンツェが38万人、シエナが5万人だから、桁ちがいに大きい。
歴史的な重要度はさらに懸絶している。
ローマは都市国家から出発し、地中海世界を統一する大帝国を築いたのだ。
5月24日の午後1時頃、テルミニ駅に着いた。
駅で父からメールが届いていることに気づいた。
「元気か」と1文だけ。
わたしは父とけんか別れして、海外旅行を始めた。
ホームシックには1度もならずに旅を楽しんでいるが、父はずっとわたしの安否を心配していたのかもしれない。
両親のことなど気にもかけていなかった。
薄情だったかな……。
いまは父への怒りなどなくなっている。
「元気」と返信した。
それだけでは安心させてあげられないかなと思って、さらに送信した。
「いまローマにいるよ。かなり旅慣れてきた。お金はまだたくさん残っているから、当分の間、旅をつづけるつもり。心配しないでね。お母さんにもよろしく伝えて」
テルミニ駅のそばにあったピッツェリアで生ハムといちじくのピザを食べた。
イタリアで食べる生ハムははずれたことがない。いつも美味しい。
食後、どこに宿泊するか考えた。
ネットで調べて、テルミニ駅周辺に安いホテルが多いとの情報を入手。
少し歩いて、1つ星ホテルにチェックインした。
ベッドに寝転んで、スマホでローマの地図を見る。
歴史ある大都市。観光名所が多い。
どこから見ようか、なんて考えているうちに寝落ちしてしまった。
1時間ほどシエスタしていた。
起きたらかなり元気になっていたが、すでに午後4時を過ぎていた。
もうゆっくりと観光できるような時間ではない。
わたしはさまざまなお店があるテルミニ駅構内へ戻った。
お目当てはローマ名物のジェラート屋だ。
ピスタチオとダークチョコレートのジェラートを買った。
コーンに乗った氷菓を舐めながら、近くを散策した。
駅の北西にディオクレティアヌス帝が306年に建設した公衆浴場の遺跡があった。
茶色く朽ちた建物が残っている。巨大な古代の風呂の遺跡。
ローマ帝国は階級社会で、元老院階級、騎士階級、平民階級、解放奴隷、奴隷と分かれていたが、公衆浴場には誰でも入れた。皇帝も入り、奴隷も浸かった。
皇帝や元老院議員が人気取りのために無料開放した日もあった。
「小麦法」という法律があり、ローマ在住の市民には、毎月無料で小麦の配給が行われていた。古代のベーシックインカムだ。
全盛期のローマ帝国の人口は推定6000万人。首都ローマには100万人が住んでいた。
かつて世界の中心だった街。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます