第14話 ロカンタ
トルコに行ったらぜひ訪れたい観光地がふたつあった。
ひとつはカッパドキア。これは昨日満喫した。
もうひとつはパムッカレだ。トルコ語で「綿の宮殿」という意味。
写真を見ると、棚田のような形状の真っ白い石灰棚が高台から低地まで連綿とつづき、棚のひとつひとつにエメラルドブルーに輝く温泉がたまっている。美しい……。
しかしこの観光地、温泉が涸れ、がっかりスポットと化しているという記事がネットで散見された。
がっかりかあ。
あまり期待しないで行くことにしよう。
ネヴシェヒルのホテルをチェックアウトし、オトガルに行って、パムッカレ観光の起点の街デニズリまでのチケットを購入した。
バスの発車時刻まで時間がある。その間に昼食を取ろう。
わたしはオトガルの近くにあるロカンタに入った。
ロカンタとはトルコの家庭料理などが食べられる大衆食堂のこと。
ショーケースにたくさんの料理が並んでいた。
煮込み料理が多い。どれも美味しそうで、選択に迷った。
クル・ファスリエというトルコ人のソウルフードがある。それを食べてみよう。
乾燥した白いインゲン豆を水で戻してから、トマト、羊肉、玉ねぎ、にんじんなどとともに煮込んだ料理で、トルコの家庭ではピラフとともに食べることが多いらしい。
ショーケースのどの料理がそれなのかわからない。
「プリーズ、クル・ファスリエ、アンド、ピラフ!」とわたしは言った。
店員が笑顔で料理を盛ったお皿をふたつ渡してくれた。
わたしは頭を軽く下げ、トレイを持って、空いているテーブルを探した。
クル・ファスリエは要するにトマト味の豆スープだった。
肉も入っていて、とても美味しい。
ピラフも塩とバターで味付けされていて旨い。
トルコ料理ははずれが少なくて、当たりが多い。トマトが嫌いだったり、ヨーグルトソースが苦手だったりする人にとっては、はずれが多くなるかもしれないが、わたしは好き嫌いがほとんどない。甘いのも辛いのも好き。肉も魚も野菜も好き。お米も麺も好き。
トルコ料理が大好きだ。思い返してみれば、はずれが少ないどころか、いままではずれたことが一度もない。
ロカンタいいな、と遅まきながら気づいた。
イスタンブールでは屋台以外は、きちんとしたレストランにばかり入っていたが、ロカンタを使えば、格安で絶品料理が食べられる。
イスタンブールにも数多くのロカンタがある。入っておけばよかったな。
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