第7話 ガラタ橋の鯖
テッサロニキ滞在3日目の朝、わたしはホテルのフロントで鉄道の運行が再開したとの情報を得た。
荷物をまとめ、チェックアウトした。
茶色のバックパックを背負って、駅へ向かう。
さらば、テッサロニキ。けっこう楽しかったよ!
テッサロニキまで追加で31,200円使った。
移動費10,700円
宿泊費13,000円。
食費6,800円。
その他700円
これまでの総支出654,700円。
旅費残金9,345,300円。
テッサロニキ駅の売店で肉と野菜のサンドイッチと水を買って、長距離鉄道の窓側の席を確保した。座席は硬かったが、我慢だ。
ガタン、ゴトンと鉄道が走り出す。
サンドイッチを食べながら、車窓を眺めた。
テッサロニキ市街を抜けると、草原がつづいていた。放牧されているたくさんの羊を見た。
羊が1匹、羊が2匹……。
羊が99匹、羊が100匹……。
だんだんと眠くなってきた。
久しぶりに日本の夢を見た。
うちでサンマの塩焼きを食べていた。
味のある夢だった。
塩をかけて焼いただけの料理なのに、めちゃくちゃ美味しい。
お父さんとは夢の中でもまだけんかしていて、わたしたちは口をきかなかった。
目が覚めたら、イスタンブールの駅に着いていた。
乗客はすでに全員鉄道から降りていた。わたしはひとりだけ残っていて、鉄道員に揺り起こされたのだ。
よだれを垂らしていて、ものすごく恥ずかしかった。
わたしは鉄道員に向かってぺこぺこと頭を下げ、電車から出た。
サンマの夢を見たせいか、むしょうに魚が食べたかった。
スマホで調べると、サバサンドがイスタンブール名物のひとつだとわかった。
鯖のサンドイッチ。
鯖が名物だなんて、トルコ人は魚のことがわかっているなあ。
手近にいた駅員にスマホの画面を見せ、「これが食べたい」と伝えると、「ガラタ橋へ行け」と言われた。
駅からガラタ橋までは歩いて行けるようだ。
長距離鉄道駅の名はスィルケジ駅。イスタンブール駅ではない。
スィルケジ駅は旧市街のど真ん中にある。このあたりはホテルやレストランが多い。
ブダペスト以上に大都市、という感じがした。
ブダペストの人口は170万人で、イスタンブールの人口は1600万人だから、そう感じるのは当然なのだろう。
新旧の建築物が立ち並んでいて、道は自動車やバスで渋滞していた。
モスクと6本の尖塔も見えた。あれは有名なブルーモスク。
明日にでも行ってみよう。
なにはともあれサバサンド!
地図を見ながら、ガラタ橋へ向かう。
すぐに青いボスポラス海峡が見えて、橋も見つかった。
ここはヨーロッパとアジアの結節点。
わたしはいまヨーロッパ側にいる。対岸はアジアだ。
ガラタ橋は驚くべき橋だった。
二層の橋で、上層は車道、下層は歩道とレストラン街になっている。
駅員が「ガラタ橋へ行け」と言った理由がわかった。ここのレストランでサバサンドが食べられる。
お客さんがいっぱい入っている店を選んで、「フィッシュケバブ!」と注文した。
それがトルコでの鯖のサンドイッチの名称。日本人はサバサンドと呼んでいる。
鯖の半身の塩胡椒焼きとスライスタマネギ、レタスをバゲットと呼ばれるパンではさんだファストフードだ。
期待を裏切らない旨さだった。
脂の乗った青魚の旨味を堪能する。
皮もちゃんとついていた。
魚は皮が美味しいのだ。本当にわかってるな、トルコ人!
ああ、もっと魚が食べたい。わたしは魚食いの日本人だ。
カタクチイワシの揚げ物を追加注文した。
ウエイターがたくさんの揚げたイワシの開きとトマト、レモンが乗った皿を持ってきてくれた。
レモンの絞り汁をイワシにかけ、フォークで突き刺して食べる。
熱々で、サクッと揚げられていた。新鮮で、臭みがまったくない。
美味しいなあ。
トルコはごはんが旨い。
世界三大料理の名は伊達ではないようだ。
明日は肉料理を食べよう。
トルコ料理を満喫するぞ!
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