第2話 ロリ神様
「『ボクは神だ』じゃねーんだよ。ボクっ娘が。今どき流行んねェーんだよ」
「やめて! 離して! 神だよ?! ボク神――ちょァ?! 今胸触ったなァ! 変態! 離せ変た――んァっ❤︎」
緑髪のちびっこい少女、自称神が僕に怒りの雷を放ったのはこの5分後である。
ここまでの経緯はほとんど覚えていた。
僕は銃で頭を撃って自殺したはずだ。
この明らかに異様な場所を見て、まず思ったのは『やはりな』だった。
この場所が、僕の記憶が間違っていないことを証明している。
ここが死んだ後の世界だと考えれば、しっくり来るからだ。
真っ白い床と水平線がどこまでも続き、延々と何もない空間が広がっているのだ。
地球上のどこかとは思えない。
そこにきて、このボクっ娘ロリ
別にコイツが神であることに疑義はない。
単にイラッとしたのと、ムラっとしたのと、両方である。
ロリ神がプンプンと頬を膨らます。
いちいちリアクションが古めかしい。今どき頬ふくらまして怒りを表現するやついないだろ。
「全くもう! 全くもうだよ、全くもう! キミという男は! そういうとこだよ?!」
「どういうとこだ?」
「その節操のない女ったらしな性格だよ!」
ロリ神は両腕を振り上げて何もない空間を叩こうとする。
そして、振り下ろすと同時に白い机が出現し、『バァン』と衝撃音をあげてから、机はシュンっと消えた。
叩くためだけに出したらしい。
「しょうがないだろ?
「開き直るな! 犯罪だからね?!」
神が人間の作った法を取り上げて説教を垂れるなんて、シュールな絵である。
ロリ神様は、ハッと何かに気付き、咳払いをしてから「さて」と取り繕って言う。
「残念ながら、キミは死にました」
その目は僕を観察するかのようにまじまじと見つめ、そして期待に満ち、楽しげである。
「あ、うん。知ってる。自殺だし」
僕の反応が期待に添えなかったのか、ロリ神が「チッ」と舌打ちした。性格の悪い神である。
「そ。キミはその女たらしが災いして、ヤクザに追い詰められ、挙げ句の果てに自殺した…………どう? 少しは反省したかい?」
「ぇ何を? 僕は被害者だろ?」
ジト目で僕を睨むロリ神。
僕が何をしたというのか。何かしたのはヤーさんの方で僕は悪くないだろう。
「とにかくキミはちょっとアレなので、別の世界で勉強してきてください」
「ちょっとアレって何?! 説明の義務を放棄すんなよ」
ロリ神は僕を無視して続ける。
「キミに課されるミッションはコレだよ」
ロリ神がどこからかフリップを取り出した。そんなデカいフリップが入るポケットなど見たところ無さそうなのに、いったいどこにしまっていたのか。
フリップに書かれた丸っこい字を読む。
『真実の恋を知れ』
「なんだこれ。真実の恋とかサブっ。今どき、女児向け少女漫画だってそんなワード使わないぞ」
「う、うるさいうるさい! とにかく、コレを達成しないとダメだかんね!」
おいおい。こんな意味不明なお題、達成できるわけないだろ。3歳児が作ったクイズより難解だぞ。
まぁ、ただ異世界っていうのは悪くない。
ミッションについては一旦脇に置いておいて、僕は
「………………何かな?」
ロリ神が眉を顰める。
「え、分からない? アレだよアレ! 『チート』! くれんだろ? チート」
ロリ神は額の血管が浮き上がりピクピクと引きつる。
だが、表情は笑顔。作り物めいた笑みを顔に貼り付けて、僕の手を取った。
ロリ神に握られた手が心地よい温もりに包まれる。
ほのかに淡く光を発するとすぐに優しい光は消え、ロリ神は僕の手を離した。
「はい。できたよ」
「おォ! サンキュー! で、どんな能力なんだ? 時間巻き戻し系だと嬉しいんだが」
「貴方にぴったりの能力だよっ❤︎」
ロリ神様はキャピキャピと答える。
まるで好みのアイドルの話をする女子小学生だ。
だが、ロリ神様の『ロリみ』なんて今はどうでも良い。
僕は期待に胸を高鳴らせ、ロリ神様の声に耳を傾ける。
ロリ神様は一仕事終えたと言うように額を腕で拭うとニッコリ笑った。
「異性に嘘をつけなくなるチートだよっ❤︎」
………………は?
「それチートじゃねェェエエエ!」
僕の叫びは何に反射することもなく、水平線の彼方に吸い込まれていった。
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