「平和」のための有効活用

時は大昔。舞台は数百人が住まう村。

その村には、若い不良グループが存在した。彼らは、ことあるごとに迷惑行為を働き、周囲に不和をもたらしていた。

ある日のこと。村人たちは集まって、ヒソヒソと話をしていた。


「若い男たちが徒党を組んで、悪さをしてるのは嫌ね。別の村に引っ越そうかしら」


「最近、物を投げつけたり、壊したりするのを見たわ」


会話を盗み聞きをしている男が一人。村長だった。


(うーむ、暴力を振るうアイツらを、上手く利用する方法はないかのお)


引き続き、盗み聞きをしていると耳寄りな情報が手に入った。


「そういえば、隣の村がここを攻めようと計画しているって、噂で聞いたわ」


「ええ、ほんとう?だったら、早めに引っ越しの準備をしなくっちゃ」


なるほど……。ひらめいたぞ。

村長は妙案を思いついた。



数日後、噂通りに隣の村が攻めてきた。

激しい戦闘の末、村を守り通すことに成功した。


「武器を振るっても、悪く言われないなんて。戦って最高だな!」


「いやあ、ストレス解消にもなるし、良い仕事だよな」


「おい、村長のおっさん。悪いヤツラをやっつけたぞ。約束通り、給料をくれよ」


村を守るために、村長は若い不良たちを上手く活用した。彼らを軍人として採用することを決めたのだ。


「ああ、もちろんじゃ。お前たち、これからも村を守ってくれ。そうすれば、村人から尊敬されるようになるからの」


「そりゃ、いいね!これからも、しっかりと仕事に取り組むよ」


(これで、村の治安が良くなる。そして、わしは村で権力を遠慮せずに行使することができる。ホホ、我ながら、上手くいったのお。これからはやりたい放題じゃ)



「平和」を維持するために、「暴力」を利用しなければならない。

そして、「暴力」を背景として、私欲を満たそうとする者が現れる。

遥か昔から繰り返されてきたかもしれない、繰り返しの多い物語。

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