1話……? 違和感

「……くん、葵君っ!」

「……ん?」

 とっさに俺は、部屋の明かりが眩しくて目を細めてしまった。

 完全に意識がもどり、何度か瞬きをすると今、何をしていたのか段々思い出してきた。

「大丈夫?葵君」

 少し顔をあげると、天音が心配そうに見つめてきた。

 俺は少しして、静かに「大丈夫」と言って微笑んだ。

 すると天音も嬉しそうに「良かった」と言った。

「もう、食事中にあんなにぐっすり寝ちゃうなんてぇ…んふふ」

 天音は面白おかしそうに声を出して笑っている。

 ……少し恥ずかしいけど、天音が楽しそうなら、これで良かったんだよな?

 すると天音は急に真顔になって、聞こえないくらい小さな声でなに呟いた。

「…あんなに起こしても起きないなんて、薬が強すぎたかなぁ?まぁ、葵君いっぱい食べてたし、妥当かなぁ?ふふ、嬉しいなぁ」

 うーん、なんて言ったんだ?ま、いいか。なんか………聞いちゃいけないことな気がする。

「そうだ、葵君。これ、ご飯どうする?」

 あ、そういえば……これ、どうしよ。

 俺は残っている料理と時計を交互に見た。時間はもう夜の8時。どうやら俺は……相当な時間眠っていたらしい。

 いや、本当にどうしよう。残すのも天音に悪いし、だからと言ってこれ以上居座っていると迷惑になるし……。

 あ、そうだ!

 いい案を思い付いて、俺はすぐに天音に聞いた。

「天音、なにか料理を入れる容器みたいなのってあるか?タッパーみたいな?」

 俺が聞くと、天音が一瞬戸惑っていたからないのかと思ったが、普通に持っていたらしくパタパタと小走りでキッチンのほうへ取りに行ってくれた。

 しばらくキッチンのほうから探してくれているのかガタガタと音が聞こえた。

「……うーん?…あ、あった!」

 嬉しそうに天音は俺にかけよって来て、持ってきた容器を俺の前にズイッと差し出してきた。

 仕草一つ一つが子犬のように可愛らしくてほっ懲りしてしてしまう。 

 ────あぁ、離したくないな。

 ………?俺、今、何を考えた?

 昔、天音が言っていたようなことを考えてしまい、自分が少し怖くなった。

 なんて、自分勝手なんだ……?

 天音がこういうことを言ってくれるのは、すごく嬉しいのに、自分が思うのはただただ気持ち悪くて、不快で、……怖かった。

 ふと、胸になにかを感じて我に返る。すると、天音が軽く俺の胸を叩いていた。

 俺よりも背は少し、高いはずなのに今は、天音がすごく小さく見えた。

 ……それだけ可愛らしくて、小動物みたいだ。

「葵君、大丈夫?なんか、顔がすっごく怖いよ……?」

 トンッと天音は俺の眉間を人差し指でつついた。

 もう、その仕草一つだけで顔がだらしなく緩んでしまう。

「あ、笑顔になった。ほらほら、お料理早く詰めないと!遅くなっちゃうよ~」

「あぁ、そういえば……」

「もう、なにそれぇ?」

 天音が口元に手を当てて、隠すようにクスクスと笑う。それにつられて、俺も笑う。

 こんなこと、いつもやってるはずなのに、なんだかとても………懐かしく感じたのは、俺のただの気のせいだろうか?

──────────────────── 

 最後まで読んでくださりありがとうございます。

 この物語、ファンタジーよりになっていますが魔法とかはでないので安心して下さい。

 前回伝え忘れてしまいました。



  

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