第19話
話終えると天音は息をはいてにこっと笑って見せた。
今はその笑顔が少し怖い。
「………ふふ。ふふふふふ、あ、あお、あお君……あはははは」
天音は確かめるように、何度も俺の名前を繰り返して、笑う。
「ひえ……あ、天音?」
どうしたんだよ。急に、笑い出したりしてさ……。
狂ったように声を挙げて、笑い続ける天音が怖くて、ぶるりと震えてしまう。
「……あ、あお、あお君あは、は」
しばらく天音は笑っていたが、はっとした後俺の目を見て話し始めた。
「…………ごめんなさい、あお君。思い出して、くれた?」
天音は不安そうに聞いてきた。
そんな天音を安心させてあげたくて、優しく笑いかけながら昔の愛称で呼ぶ。
「……俺の方こそごめんね。あーちゃん」
その愛称は、とても懐かしくて、……とても、安心……した。
俺が笑いかけると、泣きながら天音は近づいて来て、優しく俺を抱き締めてくれた。
「私ね、ずっと、ずっと、一人だったのぉ。あの時は、あお君から話しかけてくれてたから、話しかけられなかったのぉ………」
天音がこんなにも苦しそうに泣いているのに、なにも出来なくて……黙って話を聞いていた。
「うぐぅ……それでね、あお君から告白されたとき、誕生日だったから、覚えててくれたのかなって………」
「うわ~ん。ぐるじがっだぁ……」
ついに天音が声をあげて泣き出してしまった。
だからゆっくり、ゆっくりと背中をさすりながら頭を撫でた。
痛い。心も、体も、実際に刺されているかのような痛みが止まらない。
………あぁ。目は、潰れてるんだっけ?
もう、どうでもいいや………。
俺は、天音といっしょにいれたらもうそれで……いいんだ。
「私ね、ずっと、ずぅぅっと、考えていたことがあったの………」
「……?」
天音は流れてきた涙を服の袖でぬぐって話し始めた。
「私が愛した大好きなたった一人の、かけがえのない人と愛し合って、一緒に死ぬことが出来たら、どれだけ幸せで、どれだけ報われるんだろうって………」
「え……」
「私ね、怖いの。みんなみんな、お父さんやお母さんのようになるかもしれないって思ったら、すごく……」
「苦しくて、痛くて、痛くて……。でも、これは私が、やっと見つけた『愛』のカタチ」
「手放したくない。ずっと一緒にいたい。だから………一緒に死のう。あお君……」
笑いかけてくれた天音は、あまりにも美しくて、儚くて、とても、愛しくて、今にも、壊れてしまいそうだった。
あぁ、素直に死んであげたい。一緒に死にたい。救われたい。でも、だめなんだ。
「天音……。俺が、天音の親みたいになると思ってるのか?」
俺が静かに天音に問うと、天音の顔が苦しそうに歪んだ。
「その後の日々は、どうだったんだよ。付き合って、いろんなところに二人で行って、いろんな思い出も作って、少なくとも俺は、楽しかったよ………」
「………そ、それは」
モゴモゴと小さな声で話す天音を見つめながら、俺は少し、昔のことを思い出していたのだった。
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最後までみてくれてありがとうございます。
それと、投稿遅れてしまってすみません。
言い訳かもしれませんが、入学式とかで少しリアルが忙しかったんです。
ゴールデンウィークはがんばるので、見守っていただけると嬉しいです。
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