第18話 私たちの過去(2)

 あ、思い出した?ふふ。あお君、おもしろーい。 

 まぁまぁ、まずは私の話を聞いてよ。目、痛いでしょう?

 あお君をしっかりと見据えて、私はくすくすと笑う。

 だけど、あまりにもあお君が苦しそうだったから、昔話を再開した。

────────────────────

 施設に入ってからも私は、一人だった。

 理由は簡単。もう、誰も傷つけたくなかったから……。

 だからいつも、部屋のすみっこにうずくまって、本を読んでいた。正直、字は読めなかったけど……。

 しばらく家から出てなかったし、閉じ込められていた時も、ほとんど話すことはなかったから。だからコミュ症なんだ。

 でも、ずっと繰り返し読んでいるうちに、だんだんとわかるようになっていった。

 それがとても楽しくて、次第に周りへの興味も薄れていった。

 そんな私にも話しかけてくれたのが、そうだよ、あお君。

 あお君は、いつも笑っていた。

 いじめっこたちから「おとこおんな」、「おとこおんな」といつもバカにされていたのに、私の前ではいつも笑って、いろんなことを教えてくれていた。 

 正直、最初は鬱陶しかったけど、日に日にあお君が来るのが楽しみになった。

 その日も、私たちは楽しくお喋りをしていた。

 でも、そんな私たちにいつもあお君をいじめていたいじめっこがきた。

 煽られて、悪口を言われて、相変わらずあお君はニコニコしていたけど、私はどうしても我慢できなくて、衝動的にいじめっこたちを殴ってしまった。

 その日からかな、私もいじめの対象になったのは……。

 いつも言われていたのは、あお君と反対の「おんなおとこ」だった。怪力だから………らしい?

 ほんと、それしか言えないの?って感じ。

 私はいつも平気だったけど、あお君は申し訳なさそうで、元気がなくなっていった。

 別に、気にしなくてもいいのに。

 あはは。驚いてる驚いてる、そうだよ、気付いてたよ。

 まぁ、とりあえずおいといて、私、見ちゃったんだよね。

 あお君が、一人で泣いてるとこ。

 なんでかなぁ、私、その時恋におちたの。

 恋は人を不幸にする。あの頃、私本気でそう思ってたからさ、必死になっていつも通りに接してたよ。

 ほら、私それからすぐに今の親に引き取られたからさ、あんま覚えてなかったでしょ。

 あお君、私が引き取られた時のこと、覚えてるかな? 

 あの時の約束も……。

 え?覚えてないの?もう、仕方ないなぁ。

 あお君、あの時私に言ったじゃん。しかも泣きながら。

「………あーちゃん(天音)、俺悔しいよぉ。

誰でもいいから、俺のこと、認めて欲しい。

………助けて、あーちゃん」って。

 私、初めてあお君に頼ってもらえて、嬉しかったんだからね。

 だから、引き取られてからすぐに起業したのよ?

 あぁ、驚いてるね。そりゃそうか、まぁまぁ落ち着いて。

 私はあお君の、透き通るようなきれいな声が好きだった。

 だから、あお君の声を生かすことができるVTuberに、したんだよ。

 やってみて良かったでしょ?

 とりあえずはこんな感じかな。私たちの過去は……。 

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