第15話 お揃い

 次に目を覚ますと、俺はとてもシンプルで、機材がたくさんおいてある部屋にいた。

 まぁ、機材といっても、怪しいものではない。大方、撮影機材かなんかだろう。

 なかには俺が持っている物もあった。あれは……なんて少し呑気に考えていると、部屋の扉がガチャリと開いた。

 入ってきたのは……紛れもない、天音だ。

「あぁ、起きたのね、葵君。それに、拘束されているのにずいぶんと余裕そう……」

「……え?あっ?!」

 今気づいたんだが、見てみると、両手両足が枷でしっかりと拘束されていた。

 少し動かしてみるが、びくともしない。ちょっとやそっとじゃ外せなさそうだ。

「っ、そ、そうだっ!天音、助けてくれっ、動けないんだ。外してくれるだけでいい…」

 俺はさらにガシャガシャと枷を動かして、天音に助けを求めた。

「………」

 ただし、天音は俺をじっと見つめるだけでなにも言わない。

「あ、天音?逃げないと、早くっ!」

 軽く叫ぶと、やっと天音が、鬱陶しそうにゆっくりと口を開いた。

「……もう、うるさいなぁ。叫ばなくても、聞こえてるって……はぁ」

「……ここには、私とあなた、二人きり。私たち以外、誰もいない。それに、邪魔する人は、誰であろうと……許さない」

 そして、訳のわからないことをぶつぶつと言っている。

「……天音?」

 すると、天音がゆっくりと近づいてきて、どこからか、ナイフ?を取り出した。

「?……うぐっ、目、目があぁぁぁぁ」

 にこりと微笑むこともなく、天音が俺の左目を切りつけた。

 視界は赤く染まり、目を押さえている手もみるみる赤く染まっていく。

「葵君、お話しぐらい、聞いてよ……。それくらい、やって?それに、似合ってるよ。お揃い、だね、なんて………」

 今度こそ、天音が嬉しそうに微笑んだ。そして、天音は自分の髪をよけ、いままで隠れていた首がさらされた。

「っ!」

 天音の首には、今はどうなっているのかわからないが、たぶん俺のと同じような、切り傷があった。

 見た目的に、だいぶ前にできたもの、だろうか?

 自分の痛みも忘れてしまうほど、その傷は痛々しかった。

「……ね?お医者さんに言われたの。もう、治らないんだって」

 悲しそうに目を伏せて天音は語る。

 ……俺は天音に声を掛けようとしたが、うまく言葉が出なかった。

「…あ、あま……」

「……あは、は。もう、この話はおしまい。

それよりも私ね、ずっと、考えていたことがあったんだ……」

「なにか、わかる?」

 目を細めて、見つめてくる天音に俺は、恐怖すら感じた。

 まだうまく話せなくって、俺は静かに首だけを横にふった。

 すると天音は、最初から答えなんてわかっていたかのように話し始めた。

「やっぱり、ねぇ。葵君のそういうとこ、好きだよ。まぁ、これはどうでもよくてさ、とりあえず、今日は急に逃げちゃってごめんなさい……」

 次の瞬間、天音はとんでもないことを言い出した。

「今日ね、私の両親……まぁ、もと両親に会ったんだ」

 は?もと両親?じゃあ、今の天音の親とは血が繋がってないのか?

 あぁ、ますます訳がわからない。

「ごめんごめん。まずは私の過去の話をしないとね。聞いてくれる?私の過去……」

 とりあえず、いまだに訳がわからないので俺は、大人しく天音の話を聞くことにした。

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