第10話 友達、そして謎の少女

「っ。は、はぁ、はぁ……」

 あのあと俺は、必死に走って、走って、気がついたら俺は路地裏にいた。

「どこだよ。ここ……」

 俺は無意識にキョロキョロと周りを見回した。く、暗くて何も見えない。

「……ねぇ」

「ひっ……」

 き、ききき、聞こえてない。聞いてない。そう、俺は何も……。

「ねぇってばっ」

 肩を、叩かれた。

「ぎ、ぎゃああああああああっ」 

「ちょっと、近所迷惑でしょうっ」

 ひ、ひぃぃ。なんか急に叱ってきた?

 なんか俺が心の中で混乱していると誰か、いや、俺が追いかけていた誰かが近づいてきた。ん?

「ん?」

 あ、れ?なんか、誰かに似てるよう、な?

「っ?!」

 そう、だ。俺……大神 ウルだ。セミロングの銀髪、髪型はハーフアップ、オーバーサイズの巫女服。ケモ耳としっぽこそないものの、まさに大神 ウルそのものだった。

「……う、る?」

「へぇ、ぼ……あはは、私が見えるんだ?まぁ、当たり前かなぁ。あと、私はウルちゃんじゃないよぉ」

 な、なんだ、なんなんだ?俺、ウルのファンか?だったらなっと……

「あ、私はファンじゃなぁいよっ!葵」

 ああ、俺の淡い期待が、はぁ。そ、そそ、それに俺の、名前………な、んで。

「だ、れ?」

 これは、なんとか言葉にできた疑問。正直怖くて動けない。

「う、ううん。まあ、あなたを導く幽霊とでも思っといて……」

 幽霊っ!?た、確かに彼女をよく見ると、透けているよう、な?しかも、シュンには見えてなかったみたいだし。

「だから、シュン……俺の友達には、お前が見えてなかったの、か?」

「…………」

 いや、とにかく!なんて呼べばいいんだ。ずっと『彼女』と呼んでると、天音が嫉妬するかもしれないからな。

「とりあえず、名前だけでも……?知らないとなにかと不便なんで……」

 すると彼女は予想外だったのか一瞬だけぎょっとして、少し考えこんだ後遠慮がちに口を開いた。

「わ、私は……ごめんなさい。本当の名前は言えない。その代わり、偽名は考えた。そうだね、私は『あお』、かな?葵からとってあおだよ……」

 彼女……あおはおかしそうに笑ったと思ったら、急にスッと悲しそうな、切なく美しい表情になった。

「久しぶりに、誰かと話したな……。私を見つけてくれて、ありがとう」

「そんなあなたに、いいことを教えてあげるよ。まず、葵、あなた……死ぬのは怖い?死にたく、ない?」

「……は?」

 意味が、わからない。なんで急に……。

「あはは、ごめんね?答えは、わかってるから。じゃあ、教えてあげる。あなた、このままだときっと、不幸になる………。悲惨な未来が……待ってる」

 そう俺に告げたあおの表情はなんだかとても……つらそうだった。

「……悲惨な未来?」

「うん。そうだよ、しかもそう遠くないみたい。でも、大丈夫……タイムリミットは、だいたい一年」

「っ……」

「一つ、教えてあげる。あなたを悲惨な未来に導くのは、身近な女性。あとは自分で考えてみなよ?安心して、また会えるから。助けてあげる……」

「じゃあね」

「!え、あ、ちょ」

 き、消えた?さっきと同じ?

 混乱しながらも俺は、一人路地裏で立ち尽くすのだった。

────────────────────

「ふぅ。これで、大丈夫かなぁ。葵……」

 でも、安心して、必ず私が、守るからね。

……絶対に、死なせない。

 あなたが望まない限り……。

 

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