第9話 友達、そして………

 ふっふっふ。皆さん、実は俺………友達がいるんですよ。まあ、確かに最初にボッチって説明したけどさ、一人だけ、いましたわ。

 ……い、いや?べ、べべ、べべつに?わ、忘れてたとかでは………ない、と言えなくもない、よ?

 と、とりあえずっ!この話はおい………

「よっ!あお、おはよう」 

「ぎ、ぎぃやあああああああ……」

「……う、さ」

 はいという、わ・け・で!おいとけなくなったわけでこいつの紹介でもしてやるか。うんうん……。(現実逃避ぃ……)

 えぇ。こいつの名前は如月 シュン(きさらぎ)。俺と同じく1年A組。学園長の息子で、学園一のモテ男だ。ちなみに俺とは正反対。せっかくだから言っとこう、すごい惨めだ……。

 だって、小一から今日まで、こいつといるといつも周りから睨まれて(特に女子から)、こいつだけきゃあきゃあ言われてさ、みんな俺のことは無視するの……。

 っと、途中から文句と妬みになっちまったぜ……。まあ、許せシュン。

「……い、おーい?」

「はっ!」

「……はぁ、聞いてたか?お前」

 や、やばなんて言ってたんだ?

「だから、今日一緒に帰ろうって言ってんだけど……」

「あ、あぁっ!そうだな、最近一緒に帰ってなかったしな……ちょっと待って」

 だから、そう思ったから俺は、『今日は一緒に帰れない。ごめん』と、天音に連絡をした。

 すると少ししてから『わかった』というシンプルな返事がきた。

 俺はそれをしっかりと確認してからシュンに声をかけた。

「よし、いいって…。教室いこ?」

「わかった」

 軽く言葉を交わし、俺らは教室に向かったのだった。

────────────────────────放課後になりまして。

「ん、んんー。疲れたぁ……」

 俺は伸びをしてそう呟いた。そのあと椅子の背もたれに寄りかかり、少し休憩しているとシュンが笑顔で近づいて来て────

「帰る、ぞっ……と」

 俺を無理やり立ち上がらせやがった。うん

ありがとうシュン。でもさ俺ね、授業終わりでとぉっても疲れちゃったんだぁ。ね?シュン君。

 しばらくそうしていたが、そろそろ周りの視線がうるさいので『こいつと』帰ろうと思う。 

「はぁ、行くかぁ。シュン……」

「ん……」

 ここでスマートに俺のかばんも持ってくれるところ、相変わらず、イケメンだよなぁ。くっそう……人間性でも負けてるなんてぇ。

「行かないのか?あお」

「あ、あぁ。わかった」 

 せっかくの久しぶりのシュンとの下校なんだ。妬まず、楽しく、楽しく………はは。

────────────────────

「あお。今日どっか寄ってくか?ゲーセンとかさ」

「ん。そうだな、久しぶりだし……」

 なんかいいところはないかと俺があたりを見渡すと、それにつられたのかシュンもあたりを見渡し始めた。

 そして少しシュンは考えこみ、やがてパッと顔を上げた。……こういう一つ一つの仕草から、モテるんだろうなぁ。悔しいけど…。悔しいけどっ…。

「ま、カラオケ行くか……」

「そだな。行くか」

 他に行くところもないしな…。

────────────────────

「……うぇ。喉死んだし……」

「俺もぉ……」

 あのあと俺たちはカラオケ二時間コースで色々あってこうなりました。

 はぁ、いた…………ん?

「ん?あれ、あそこにいるの、誰だ?」

 ここは大通りだ。別に人がいても何もおかしくはないのだが……どうも気になってしまって俺はシュンに声をかけた。

「あお?誰のこと言ってんだよ?」

「ほら、あそこ、信号のとこ……」

 俺は指を差しながらシュンに訴えた。

 だが────

「は?信号?別に誰もいないぞ。見間違えただけじゃないか……?」

 シュンに伝わることはなかった。なぜだ?さっきからずっと、そこにいる、の、に?

「き、消えた?」

 そう、消えた。一瞬で……。でも、なんだかするすると頭の中に場所の情報が入ってきて、気付いたら俺は走りだしていた。

「は、え?おーい?あおーっ」

「ごめんシュンっ。俺行くとこあるからまた明日っ」

「?あ、あぁ。わかった、気をつけろよ」

 俺はシュンとそう言葉を交わし、さらに全力でその場所に向かうのだった。

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