第4話 VTuber
「……た、ただいまぁ。疲れたぁ」
俺は誰もいない部屋にあいさつをする。ちなみにこれはいつもの『ルーティーン』だ。
(寂しさをまぎらわせるためである)
俺は孤児院出身だが、経営的に厳しかったらしく、高校一年になると同時に追い出されてしまった。
おかげで極貧暮らしである。………まったく。
おっと、もう七時か……買い物とかしてたら遅くなってしまった。そろそろ風呂、入んないとな。
そう思い俺は、足早に風呂場に行くのだった。
────────────────────
「ふう、まさか天音がヤンデレだったなんてなぁ……」
俺は機材の準備をしながらそんなことを呟いた。
「……お。そろそろ時間だな。やるか……」
陰キャ&ボッチ&非モテの俺……。(自分で言ってて悲しくなってきた)
そんな俺にもちゃんと輝ける場所はある。──それは…………
「ふっふっふ。お兄ちゃん、お姉ちゃんのみんなぁ、こんばんは。大神 ウル(おおかみ
うる)だぁ。えへへ、食べちゃうぞぉ」
: 食べられたい!!!
: ほんと、それ↑……
: め、女神だ………
『僕』があいさつをすると、コメント欄からたくさんの個性的な反応が寄せられた。
そんなコメントに『僕』は反応をする。
「え、えええっ。だ、だめだよー」
「もうっ。早くしないと質問返さないよ!」
: そ、それだけは……
: 帰ってきた!
: やめてぇ
「む、ありがとー。実はぁその前にサプライズがあります!なんと、なんと!新衣装なのだー」
『僕』が拳を突き上げながら大々的に発表すると、コメント欄が一段と盛り上がった。
: え?もう?この間見たばっか……?
: そんなこと↑はどうでもいいんだ……
: 尊ければOK!
「ありがとー。今回はぁ描きたかったタキシード?とぉ、ウェディングドレスだよー」
そう告げてから『僕』はあらかじめ用意していた仕掛けを起動させた。
すると『僕』の衣装がまずはタキシードに変わった。
「……えへへ。どう、かな?」
コメント欄を見ると好評のようだった。良かったぁ。
でも、安心はしてられない。『僕』は頃合いを見てみんなに声をかける。
「うれしいなぁ。どんどんいこー!」
『僕』はみんなに声をかけながら配信を進めて行くのだった。
────────────────────
「んんんー。つ、疲れたぁ」
俺が輝ける場所、それは………ネットだ。
俺……大神 ウルはネットでVTuberとして絶大な人気を誇っている。
大神 ウルは性別不明という設定がある。俺はもともと声が高かったため、少し作れば中性的な声を出すことができる。どちらかというと女性寄りかもしれない。
ウルの特徴は狼のケモ耳に銀髪セミロングをハーフアップにして、オーバーサイズ?の巫女服を着ている。
ちなみにウルのママ(イラストレーター)は俺だ。俺がウルを作った。だから短期間にたくさんの新衣装を出すことができるのだ。絵を描くのは好きだし得意だからなっ。
「あ、もう寝るか……。明日も早いしな」
そう思い俺が機材を片付けていると、事務所から一通のメッセージがきた。
内容は……
『配信、今回も大成功だったね。次もこの調子で頑張って! 社長より』
というシンプルなものだった。まあ、いつものことだ。でも、返信しないと……。
「ふ、ふああ。ねみぃ」
俺は布団に入り、意識が落ちるのを待つのだった。
────────────────────「ふ、ふふふ。返事、してくれた……」
私はついつい顔がにやけてしまって必死に顔を引き締めた。
「あお君、無事に配信終わったみたいで良かったぁ。会社だってあお君のために建てたし絶好調!」
「私、頑張るからねぇ。……あ、そろそろ配信だ。はぁ、やるかぁ」
憂鬱な気持ちで私は配信を始めるのだった。
…………すべては大好きなあお君のため。
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