第3話 ヤンデレ……?
俺達が話し合い、決まったことが次のようなことだ。
◊対等に過ごす(敬語や呼び方など………)
◊付き合っていることは秘密
◊毎日一緒に帰る
などなど………。
まあ、これはすべて俺が提案したことだけどな……。
天音先輩からは何かないかと聞くと天音先輩はパッと顔を明るくしていろいろな提案をしてきた。
「え?い、いいのっ」
こうしてはしゃぐ天音先輩は幼い子供みたいでとてもかわいらしかった。
「ううん、ううん…。じゃあね、じゃあね、私以外の女の子とは話さないでね」
その瞬間、あんなにはしゃいでいた天音先輩の目からはハイライトが消え、闇が見えたような気がした。
「………へ?」
「あ、あとね、あとね、スマホの管理は私がしてもいい?あ、もちろん私のスマホは好きにしていいよ」
天音先輩はうれしそうに微笑んだ。……本当は彼女の言うことを聞いてあげたい。彼女の笑顔を守りたい……。けど、さすがにこれは……
「あ、まね先輩……さ、さすがにこれはおかしい、ですよ……?」
おかしい、そう思った……。
「ねぇ、葵君……今、なんて言った?」
「ひ………」
「あ、ごめんね。私、葵君が否定したことにキレたわけじゃないの。ただね、葵君さっき敬語をやめて、呼び捨てで呼んでくれるって言ったわよね?」
あ、圧が……こ、怖。涙、出てきた……。
「せ、先輩……あ、う」
「……あら?」
「ひゃう。あ、天音……?」
俺がそう呼ぶと天音せ……天音は笑顔で俺の頭を撫でてきた。
「ごめんね。私、さすがに言い過ぎたわ…。初めて誰かと付き合ったから、まだわからないことが多くて……」
天音は困ったような笑みを浮かべて謝ってきた。
ほんと、恋愛に関してはダメな人だなぁ。「……大丈夫です。俺もまだよくわかってませんから。二人で考えていきましょう!」
「葵君……。うんっ。ありがと……それと、敬語に戻ってるよ」
あ……。
「き、気をつけます……いや、る?あれ?」「ふふっ。ごめん、やっぱり変な感じ。葵君には敬語が似合うよ」
そう言って微笑む天音は、とても美しく見えた。
「……少しずつ、慣れていこ?」
「………は、い」
俺の返事を聞くと天音は俺の手をつかみ、立ち上がらせた。
「さ、早く帰ろうか?寒いしね……」
「へくしゅんっ……。確かに寒いかも……」
やべえ、風邪引いたか……?
「あはは。早く早くっ。葵君風邪引いちゃうから…」
ああ、やっぱり俺はこの人を守りたい。改めて、そう思うのだった。
────────────────────
──その日の帰り道
「ねえ葵君……私の家に寄って行かない?」
「……あえ?」
「あ、ごめんね。言葉、足りなかったよね?うちに、ご飯食べに来ない?あ、毎日ね。なんなら住んじゃう?大丈夫、安心して私一人暮らしだから。ご飯だって毎日作ってあげるしバイトだってしなくていいよ?私お金持ちだし自分で稼いでるから………」
自分で稼いでる……?俺を養えるくらい?すっご!?……ってそうじゃなくてっ。
「あ、天音……一緒に住むのは、まだ早くない、かな?」
同棲はさすがに……と思い、俺がそう問うと、天音は不思議そうに首をかしげた。
「……は、はやい?な、何のことっ。別に早くもなんともないよっ。だって、付き合ったら結婚までいくのが『普通』でしょ?」
「早くやってたほうがお特だと思うんだけどなぁ……??」
ま、まさかこの先輩……無自覚なヤンデレだったりする……のか?い、いやいやっ。決めつけは良くないよな?うん。
「それにあなた、一人暮らしでしょ?」
「……え?な、なんで」
天音……なんで、知ってるんだ?
「……あ、あ、あぁ」
不振に思っていると、天音がカタカタと震え始め、顔は青ざめていた。
「ご、ごめんなさいっ。ごめんなさいっ。お願い、お願いっ。き、きら、嫌いにならないで……」
天音は涙を流しながら、必死に懇願してきた。
「……じゃあ、教えてくれたら許して上げます」
「ご、ごめんなさい。い、今は言えない…。あ、後でっ、か、必ず教えるから。だから、だからっ……」
「あはは。嘘ですよ、教えてくれる時まで待ちます。今は……」
俺は天音に優しく笑いかけた。すると天音は小さな声で……
「あ、ありがと……」
と呟いた。
「今日はごめんね。じゃあ、また明日……」
すると天音はすれ違いざま俺の耳元で……「絶対に……離れられないから」
恐ろしいことを言ってきた。その瞬間、かすかに感じていた違和感が確信へと変わったのだった。
彼女……神楽 天音はヤンデレだった。
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