第2話 恋人って?
「……落ち着きましたか?」
「……うぅ。ごめんね」
天音先輩はハンカチで涙を拭いながら謝ってきた。
「……私、ね、うれしかったんだ。初めてあんな風に言ってもらえて……」
天音先輩は目に涙を浮かべながら、とてもうれしそうに微笑んだ。
「……葵君。私達って、恋人になったんだよね?」
天音先輩の問いに俺はうなずいた。
「……えへへ」
俺の答えに天音先輩は満足したのかだらしない顔で喜んでいる。
本当に、噂とは全く違うかわいい先輩だ。
そんなことを考えていると、天音先輩は急に何かを思い出したのかはっとした。
??どうしたんだ……。
「そういえば葵君、この前噂がなんとかって言ってたよね?噂ってなに?」
すると天音先輩は急に俺の考えていることがわかったかのような質問をしてきた。
そのことに俺は少し戸惑ってしまう。
「あ、き、急にごめんね……。ちょっと、気になっちゃって」
天音先輩は申し訳なさそうな顔をして謝った。気になった……というのは嘘ではないだろう。
噂について知らない理由は……まあ、わかった。
彼女……天音先輩には、噂のことを教えて
くれるような友達はきっといなかったんだろう。
だから天音先輩に噂について知る術はなかった。そんなところだろうか?
教えてあげたほうが……いいのだろうか。
でも、俺には……天音先輩に噂を伝える勇気は……なかった。
「天音先輩、すみません。今、俺から伝えることはできない、です」
「??え……。な、なんで」
俺の言葉を聞いた天音先輩は少し、悲しそうな……傷ついたような表情をしていた。
俺はさらに、天音先輩に近づいて言った。「……先輩きっと、傷ついてしまいますからね。だから少し、待っててくれませんか?」
なんだか、告白みたいになってしまったな……。少し恥ずかしい。
天音先輩は安心したのか恥ずかしそうに、こくりとうなずいた。
俺はそんな天音先輩にドキッとしてしまった。ギャップ萌え……神。
(日向 葵はオタクである……)
……じゃなくてっ!!
「も、もうこの話は終わりにしましょうか。天音先輩」
「そう、ね……ええと」
「……そうですねぇ」
俺が本気で考えていると、同じく考えていた天音先輩がガバッと顔を上げた。
「そういえば私達、まだ連絡先交換してなかった……」
「そう、でしたね。交換、しましょうか…」
そう言って俺は天音先輩にスマホを差し出した。
すると少ししてから天音先輩が───
「よし、これで終わった。葵君、スマホ借りちゃってごめんね。交換し終わったよ……」
「あ、ありが……」
「あ、そうだ。あとね、一応位置情報アプリ入れておいたから。これでお互い位置がわかって安心でしょ?」
ん?
「あ、ちょっとごめんね」
天音先輩が近づいてきて……
──パシャリ
と写真?を撮られた。何かと思っていると、ラインの通知がきた。
どうやら天音先輩がさっきの写真を送ってきたようだった。
「……?」
「きた?その写真、ペアアイコンにしておいてね。これでお互い変な虫がつかないように予防ができるでしょ」
天音先輩は満足そうにスマホ画面を眺めている。
普通、ここまでするもんなのか?
わからん。わからねぇよぉ。非モテ陰キャ&ボッチの俺には……。
俺が呆然としていると、さっきまでご機嫌だった天音先輩が急に真顔になった。
「……え?ちがうの?恋人ってみんな同じようなものじゃない?嫌ならやめるからっ。だから、だからお願い行かないで……」
真顔のまま、涙を流して不安そうに俺の肩を掴んできた。
……すごいパワーだ。痛い……。さすが天音先輩。
「い、たぁ。……あ。あはは、です?」
どうしよう、ついつい声にだして……。
「あ、葵君、ごめん…ごめんね。ごめんなさいっ。私、私……な、なんでもや、やるからっ……だからっ」
「……るさい。うるさいです、天音先輩…。付き合ったんですから、対等にいきましょうよ……」
俺は、真剣に天音先輩に告げる。
「そうですね……。少し、ルールを決めましょうか。天音先輩」
────────────────────
すみません。天音先輩を2年A組、葵君を1年A組にかえさせて下さい。
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