第45話 神クラスの奴隷商人なので、最高の奴隷達と真の大災害を倒します!
「うおおおおおおおおおお!」
「な、なんなんだよ! お前はっ!」
今、あの魔神ジールを圧倒している。
僕の中で溢れてくる力が原因であることは間違いない。
なんなのかは分からないけれど、三つ。
三つの力が僕に戦う力を与えてくれている!
そして、戦う僕の中から響いてくる声。
― イレドよ! 倒せ! 魔人を! ―
夢で出会った骸骨面の声。そして、
― イレド、お前ならばやれる ―
アクアの鱗をはぎ取った時に聞こえた声。きっと彼らが僕の力になってくれているんだ!
声が聞こえる!
― おい! 竜王うるさいのじゃ! ちょっと黙れ! ―
― 死霊王こそ、夜まで寝ておれ! ―
やっぱり聞こえなかったことにしよう!
伝説級の存在の名前が出た気がするけど知らない。全然聞こえていない。
― 二人ともお黙りなさい。イレド様聞こえますか? ―
最後の声は女性の声だった。美しい声。女神がいたらこんな声なのかなって声。
『今、とある理由で貴方と私たちの力を繋ぐことが出来ています。ですが、私たちの力と繋がり続けることは人間の貴方では危険にもなり得ます。なので、早くあの魔人を。貴方と、貴方の愛する、愛する奴隷と力を合わせて倒すのです。大丈夫、貴方を私が導いて見せましょう。私が、貴方の勝利の女神に』
不思議な声だった。
ずっと僕を見てくれているような、僕の心を読み取ってくれたような言葉。
不安はない。
今は、アイツを倒す!
「ふざけるなあ! ワタシは魔神だぞ! お前ごとき人間に殺せるわけがない! 殺す殺す殺殺殺す! 殺して、あの女どもの前に晒して不幸のどん底に突き落としてやる!」
「ああん?」
僕は、神スキルを同時発動させる。
「神スキル【
僕の中にみんなの力が流れ込んでくるのを感じる。
そして、みんなの、奴隷達の力を僕の力に変えることが今なら出来る!
「行くぞ、ジールゥウウ!」
僕は、リオの身体能力とアリエラの繊細な魔力操作による身体強化魔法で一瞬でジールに詰め寄り、一撃をくらわす。
「あ、がは……!」
「みんなを不幸のどん底に? あの子たちはみんな、不幸のどん底なんて似合わない頑張り屋さんたちなんだよ」
「ぅるさいっ!」
ジールの一撃は届かない。武神と魔法の天才のつながった力がお前に負けるものか。
「リオは、ピンクが好きでかわいいものが大好きなかわいい子だし、アリエラはネガティブで引っ込み思案だけど、いつか話せるようにって藁人形でおしゃべりの練習をしている頑張り屋さんだっ!」
魔法の発動と拳を同時にあてて二重の衝撃を腹に与えると、ジールは、くの時に折れ曲がる。
「だ、か、ら! なんだああああああ!」
ジールは、白い魔力球を大量に作り出し、光線を放ち、僕を狙う。
だけど、ビスチェの幻術とキヤルの無音の高速移動では全く捉えられない。
「キヤルは猫と話すときはにゃー、犬と話すときはわんをつけて話しててかわいいし、ビスチェはみんなにファッションリーダーと褒められるから一生懸命ファッションの勉強をこっそりしてるかわいい努力家!」
「くそ! くそ! なんでこんな奴に!」
ジールの背後に回り、ジールの足に刺さった串に、アクア・スコルのスキルで作った強力な毒薬を、ラブの錬金術で串を改造し、強力な毒針へと変化させる。その毒を食らったジールは泡を吹きだしている。
「あば、ばばばばば」
「アクアはみんなのお誕生日に似顔絵を送りたくて頑張って描いてるし、スコルはみんなの体調が心配過ぎてキヤルの献立に口出して怒られるくらい実は心配性、ラブは時間が空いたら笑顔の練習をしてる!」
ジールは確実に弱っている。だけど、どんどんと自分の限界も近づいているのがわかる。
決め手が……だけど、やるしかない!
僕は今できる最大の攻撃を放つべく、大地を蹴って空を舞う。
「お兄さん」
「コ、コリー!?」
コリーがなぜか僕にしがみついていた。いつの間に!?
「お兄さん、わたしはあなたの奴隷、ですよね? だから、使ってください」
「使ってくださいって、ええ?!」
コリーはふわりと浮かび、光を放ちながら、その姿を槍へと変えた。
『我が名は、聖槍ユニコーン。世界に数本だけ存在する生きた武器。我が主に、力を!』
聞きたいことはいろいろあるけど今は!
「ありがとう! コリー!」
僕はその槍を握り、ふらつくジールを睨みつける。
「く、ははははは! ばあかが! そんなバレバレの攻、撃……!」
僕はサジリーの風で竜巻を作り僕とジールだけを結ぶ一本線を!
そして、ティアラの空間収納でジールの右足近くの大地を収納し、バランスを崩させる!
「ティアラは、みんながくれた手紙やプレゼントを値が付けられないと大事に大事に保管してるし、サジリーは生真面目過ぎてみんなとうまく話せないからユニークになろうと駄洒落をいっぱいメモしてる! みんなみんな一生懸命で頑張り屋のいい子たちだ!」
そして、ヴィーナはいつだって、みんなの事を考えて、みんなのためにできることをいっぱい日記に書き留めてみんなを導いてくれている!
「不幸になっていい子なんて一人もいねえんだよぉおおお!」
「くそ! くそ! 最悪だ! こんな奴に! 竜王と死霊王と女神と繋がってるやつなんかに! 喧嘩なんて売るんじゃなかった!」
「喰らえ! 【聖槍式・回転奴隷神落】《スクリュウウパァアイルゥウドレイバァアアアア》!!」
槍を構え、ジールの元へ一直線に落ちていく。
奴隷となってくれたコリーなら僕の神スキルを最大限生かせる!
「がぎゃああああああ!」
そして、ジールは光の中へと消えていった。
― イレド様、お疲れさまでした ―
その声に僕は笑ってしまった。そして、そのあとはよく、覚えていない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます