第43話 神クラスの奴隷商人なので、最高の奴隷達と大災害と戦います!
地獄という所があるのならこんな感じだろうか。
僕はそう思っていた。
次々とあふれ出てくる魔物達。その誕生には秩序はなく、ただただ生み出され山のように積み重なっていく。そして、何がきっかけとなったのか、あの男がこっそり何か魔法でやったのか、僕達が来た方と逆の通路からも魔物がどんどんと現れ始める。
ただただ、殺意や破壊衝動、また、食欲や性欲によってか魔力を満たそうとする魔物達が、飢えた魔物達があふれ出てくる悪夢だった。
「これが……
僕は、恐ろしくも常識離れしたその光景を思い出し震える。
それでも、
出来ることをやるだけだ。
なんとか脱出した僕達は、入り口を氷結させ、準備を整えていた。
少しずつ氷は砕かれ、間もなく魔物達が飛び出してくる。
ダンジョン内通路で殺し続けても、またダンジョンで生まれ、終わることがない。
始まった以上は外に出して、ダンジョン外で殺していくしかない。
「イレド様、来ます」
もうすぐ、始まる。
決死の戦いが。
みんなへの感謝の思い、どうなるか分からない不安、今生の別れとなるかもしれない、もっといろんなことを伝えておきたかった。
色んな感情が溢れてうまく言葉にできない。だから、一言だけ。
「みんな、ありがとう。大好きだよ」
奴隷と奴隷商人の関係だったけど、みんなのことを本当に家族のように思ってた。
大切に思ってた。
それだけは伝えたかった。
そして、次の瞬間。
信じられないことが起こった。
「わおおおおおおん! 全員ボクが! ぶっとばす!」
リオが飛び出し、解放された力で無造作に敵を千切っては投げ千切っては投げ、殲滅し始めた。また別の場所では……
「リオには、負けない。ワタシがご主人の一番だいすきだ!」
アリエラが上級魔法を連発し、炎の海、氷の山をいくつも生み出していく。
「主様のために尽くして尽くして、殺し尽くして綺麗にして差し上げなければ」
キヤルは、音もなく素早く忍び寄り、魔物の首を狩り、急所を突き、静かに屠っていく。
「主殿! サジリーは主殿の御恩に報いるため、勝利をささげて見せます」
風魔法で一直線に並べた魔物を、サジリーは風魔法を付与した強烈な矢で蹂躙していく。
圧倒的な力で、僕の奴隷たちが魔物をぶっ潰していた。
「あーあー、イレド君が強力な薬を注入してしまったねえ」
スコルがそう言いながら僕に近づいてくる。
「薬?」
「そうさ、君の声は、言葉は、そして、優しさは私たちにとっては薬であり、毒だ。もう中毒なのさ。さあ、もっともっと欲しくなってるからね、私もそろそろ暴れてこよう。イレド君、味方を襲いだしたら止めてくれ」
スコルはそういうとスキルである【切断】で魔力の刃をとんでもなく伸ばし、一気に刈り取っていく。
「あが、あがああああああああ!」
血によって狂暴化したスコルは、それでも、的確に相手の筋を切り取り行動不能にし、死をもたらしていく。
「よっしゃああ! 今日は大盤振る舞いやあ! もってけどろぼー!」
ティアラはスキル【空間収納】で何かを取り出す。
それは……大量の武器だった。
「はっはっは! 出血大サービスや! ただし、出血はお前らの方やけどなあ!」
「ティアラさん、一つ借りますね。錬金術開始、完成。魔導連射砲。これより、主の為、敵を殲滅します」
ラブがその場で武器を改造し、銃弾の雨を降らせる。あっという間に穴だらけで倒れていく魔物たち。
「アクアちゃん! いくわよー!」
「はい! ビスチェさん! 毒注入します!」
アクアが毒を生成し、ビスチェの生み出した水球に注いでいく。禍々しい色をした水球をビスチェが掲げるとそこから水があふれ始め、それは波となり、魔物たちを飲み込み、飲み込まれた魔物たちは毒によって死んでいく。
……地獄とはこういうものなのかもしれない。
「う、嘘だろう……あれだけの魔物がこんなにも簡単に……? 君たちは一体」
いつの間にか、近づいてきていたスレサヴァさんが僕とヴィーナに問いかける。
だけど、僕はこういうしかない。
「あ、あはは……ただの売れない奴隷商人と」
「売れない奴隷です」
「いやいやいやいや!」
スレサヴァさんが大声で叫びながら首を振っている。
けれど、その降っていた首は次の瞬間止まる。
「あ、あ、アンデッド……!」
スレサヴァさんの視線の先には大量のアンデッドが……。
「そんな……アンデッドまで……? 流石にあのバカ強い奴隷たちでもこれじゃあ……」
「はいはーい、じゃあ、イレドちゃん! 仕上げにアタシ見ててね★」
そう言いながらジェルは影から現れ、地面に闇の魔力を広げていく。
すると、スレサヴァさんが怯えていたアンデッド達は、魔物たちを襲い始める。
そして、死んだ魔物はアンデッドとなって甦り、大災害の魔物を襲い始める。
「はあああああああああああ!? き、君たちの奴隷には、
「ええ、普段はかわいい女の子ですけどね」
僕はそう言ってジェルの方を見ると、顔を真っ赤にして俯いてた。
なんで、あれだけえっちな事をいっぱい言ってくるのに、こういう誉め言葉には弱いのかなあ。
ウチの奴隷は凄い。けど、やっぱり可愛い。
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