第42話 神クラスの奴隷商人なので、最高の奴隷達と大災害の生贄を救います!
「一体君達は……?」
スレサヴァさん達奴隷商人組は、リオ達によって助け出されていた。
流石リオ達、一瞬でアイツらをぶっとばし、安全を確保した。ものすごいしっぽぶんぶんしながらこっちを見てる。
僕に殴られた男は、目を見開いていたがそのうち醜悪に顔を歪め、口を開く。
「く、はははは! そうかそうか! 一体どこから湧いてきたのか知らないけど、奴隷を守るか! やってみればあ? おい! 奴隷共! 命令だ! 『コイツ等を捕まえろ!』」
「あ、あああああああ!」
奴隷達は、貴族の男に従いたくはないだろう。従えば生贄として殺されるんだ。
だけど、奴隷は契約の時に交わす奴隷契約によって、従わなければ想像を絶する痛みに襲われる。究極の二択に奴隷達は苦しみながらも、半分以上は、僕達を殺す方を選んだようだ。
仕方ない。
だけど、
「お、にいさん、逃げてください……」
コリーは死ぬほどの痛みに耐えながら僕に逃げるよう促してきた。
僕は、そんなコリーの首元に手を当て、
「え? え? お、お兄さん? えええ?」
動揺するコリーをよそに魔力を込める。
「コリー。僕はね、奴隷商人なんだ。……君を僕の奴隷にしたい。それとも君は彼の奴隷になりたいかい?」
悪い聞き方をしてしまった。
でも、言ってもらわなきゃいけない。僕の事なんて考えずに、ただただ彼女の未来の可能性を作る為に。
「いやです! あの人の奴隷はいやです! お、お兄さんの奴隷になりたいですっ! ずっとずっと!」
……ん?
いや、ずっとじゃなくていいんだけど。まあいいや。一先ず彼女の意志は見せてもらった。
「分かった……神スキル
僕は魔力を送り込み、コリーに魔法で付けられた奴隷紋を書き替える。
奴隷神怒は、膨大な魔力で強引に奴隷契約の為に付けられた紋を書き換える違法スキルだ。
「大丈夫ですよ、ネオになんとかさせましょう」
第一王子と同じ名前で、王宮で暮らしているネオさんは凄い権力者なんだなあ!
ヴィーナの言葉を一旦置いておいて、強引な書き換えをし、コリーの奴隷契約を僕にかえる。
奴隷自身の書き換えを望む意志がなければ使えないスキルだけどコリーは僕を信じてくれている。目を見れば分かる!
そして、コリー自身も自分の変化に気付いたようで、大きな瞳で僕を見つめてくる。
「か、は……? これは……?」
「君の奴隷契約を無理やり僕に書き換えたんだ。ごめんね、でも、今はこうする方法しかなくて」
「わたし、おにいさんの奴隷になれたんですか? ずっとずっと? うれしい!」
……あれ? なんか、おかしくない? こんな子だったの? コリー。
けど、今はそんな事を考えている暇はない。
貴族の男を見ると、驚愕で震えているようだ。
「な、な、なんだと! 奴隷紋の書き換えだとぉおお! そんなことが出来るはずが……! だ、だが、この数全員をそうできるとは……!」
貴族の男が奴隷を隷属させるための魔導具の指輪を天に向ける。
だけど、
「遅いです」
アクアとキヤルが背後から近づき、男の指輪のついた指を切り取る。
「あぎゃああああああ! い、いつの間に……!」
「ごしゅじん様!」
アクアから投げられた魔導具を受け取り、僕は指輪そのものに魔力を注ぐ。
そして、
「ここにいる奴隷達! 聞いてくれ! 君達はどうしたい!? 聞かせてくれ! 今まで奴隷として生きてきて、いきなり言えと言われても戸惑うと思う! ただただ従う事だけが人生だった君達には! でも、今、自分の意思を、心を持たないと、君達はそのままだ! だから、変わりたいと願ってくれ! 生きたいと思ってくれ! その奴隷のみんなの心に僕は応えてみせる!」
もしかしたら、僕の奴隷商人としての神スキルは今この為に存在したのかもしれない。
僕なら、出来る!
みんなが望んでさえくれれば!
「俺、は……一生懸命働いていつかパンを作りたい! 奴隷皆がうめえって食えるパンを!」
「私は、結婚したい! 好きな人と一緒に生きたい!」
「腹いっぱい飯が食いてえ! もし、その願いが叶うならおいらは心を入れ替えて必死になって生きる!」
「私は……!」
「おれは……!」
「わしは……!」
みんなの意志が声となって溢れかえっていく。
彼らも人間なんだ。
夢があって意志があって命があって。
僕は、奴隷商人だ!
一人も売れない奴隷商人だ!
だけど、奴隷商人なんだ!
まだ何も分かっていない未熟者だ!
だけど、僕は誰もを生かす奴隷商人になりたい。
「うああああああああああああああああああああ!」
書き換える! 全てを! 奴隷を! 全部全部! 僕が!
ありったけの魔力を指輪に込めて、全員に届くように祈りながら、書き換える。
そして……。
「痛くねえ……痛くねえぞ!」
「生きてる! 生きてるよお!」
僕は変えてみせる。彼らを。そして、生き残ってみせる。絶対に。
「奇跡だ……これだけの数の奴隷契約を書き換えることが出来るなんて……彼は……」
スレサヴァさんがこっちを見てる。
僕は、ただの奴隷商人だ。一人も売れないダメな神クラスの奴隷商人。
「ひ! ひははははは! ははははは!」
貴族の男は、笑っていた。リオに押さえつけられながら指から血を垂れ流しながら、それでも。
「そんな事があってたまるか! ここまで積み重ねてきた計画がこんなことで……! もういい……もういいさ、この腐った世界が滅ぶのを自分の目で見られないのは残念だが」
そういって笑った貴族の男が開いた口には禍々しい魔力の何かがあって。
「全部壊れてしまえ……!」
それを男が、いや、男たち全員がかみ砕く。
「リオ! そこから離れて!」
「我が神よ! 私達の全てを捧げよう! その代わり! 魔物を! この地を埋め尽くさんばかりの魔物を我に!」
そして、小さな黒い魔力爆発が起き、その地面からは……
「イレドちゃん! 召喚の魔法陣が発動してる! 来るよ!」
ジェルがいち早く気付き、みんなに伝えてくれる。
大地が揺れる。
ヴィーナ達は、既に奴隷達を避難させるべく誘導している。
魔力が異常に膨れ上がり、魔法陣に黒い何かが蠢きながら生えてくる。
そして、それは魔物の形となって、次から次へと生み出されていく。
「
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