第24話 神クラス奴隷商人の最強獣人奴隷なので、ご主人様に頑張って大切にされます!

「ぬわっはっはっは! 儂はカルナ帝国オットコ道場師範! アアルであーる! リオとやら! お前を帝国にスカウトしにきたであーる!」


 武闘大会終了後、表彰式も終わり、控室に迎えに来てくれたご主人様と一緒に帰ろうとした矢先、アアルとかいう男に呼び止められた。


 ちなみに、ボクの腕は、なんか気付いてたら治ってた、で誤魔化した。

 なんだかんだでご主人様はボク達に甘いからなんとなく見逃してくれる。

 ボク達が無事で大丈夫そうならそれでいいと思ってくれてるのだ。


「先ほどの戦い、ウチの門下生が愚かにも勝手に薬などという許しがたき不正を行い、勝とうとしたこと誠に申し訳なかったのであーる!」


 ふ~ん、ご主人様から聞いてた話だと、この道場主は繋がってるっぽかったけど、でも、ご主人様が何も言わないならボクは黙るだけだ。あとは、ヴィーナがうまくやるだろうし。


「ヤツは破門にした! 故に! リオよ! お前をウチに迎え入れたい! 奴隷であるならば好都合! 帝国で金を出し、お前を買い取るのであーる」

「ち。他国の奴らか。面倒だなあ……」


 王国だったら、ヴィーナ達がなんとかしてくれる。

 だけど、たまにこうやって他国の人間は遠慮なく奴隷として買いに来る。

 これがめんどくさい。ボク達イレド奴隷衆のことを知らないから。


 でも、ご主人様は商談だと思って目をキラキラさせている。かわいい。


「我々は帝国から保護を受けている道場のひとつであーる! お前のような才能をこんなところで眠らせておくのは勿体ないのであーる! お前は奴隷なのだろう? おい、奴隷商、この奴隷はいくらなのであーる? 我々は帝国から保護を受けている道場の一つなのであーる! 金はいくらでもあーる!」


 アアルの言葉に、ご主人様は目を輝かせている。でも、ボクは知っている。


「ありがとうございます! 800万ゴールドです!」

「はっはっは! そんなには……なーい!」


 ご主人様はボク達を『高く買ってくれて』いる。

 しかも、金額にしたらごく僅かな人間しか買えないくらい高く高くボク達を評価してくれている。


 だから、ボク達は高くて売れないってことを知っている。

 しかも、


「あの、彼女を、リオを引き取る条件もありまして……」

「条件あーるのか?」


 ご主人様はボク達がたいせつなあまりに奴隷としては破格の条件で扱う事を買い手に求めるのだ。

 ヴィーナがそういう風に売るよう誘導したのもあるけど、条件を変えない限り、絶対に売れないだろう。


 そして、ご主人様はボク達がたいせつだから、絶対に条件を譲らない。

 だから、ボク達は絶対に売れない。ふっふっ……


「はい! まず、まず、彼女にちゃんとした衣食住を与える事、そして、性行為に及ぶ場合は必ず同意があってからでお願いします。あと、リオはすごくやさしくてお花とかかわいいものが好きなので、かわいらしいお部屋にしてあげてくださいね。ピンク基調でレースがいっぱいあるお部屋でお願いします!」


 ほぎゃああああああ!?

 ボクの秘密がばらされたああ!?


 確かに、ボクはかわいいのが好きだ。でも、ボクはでっかいから似合わないと思う。


 だから、興味ない振りをしていたのに、ご主人様が、ボクの為に、すっごくすっごくかわいいお部屋を用意してくれた。

 個室を奴隷に与えるだけでもおかしいのに、物凄く内装も凝ったものを用意された。嬉しくてうれしくてたまらなかったけど、『ま、まあ、ボクはこういうの似合わないし、変だろうけど、ここしかないなら、ここでいいよ、うん』とか言って誤魔化した。

 ご主人様は気づいてないだろうけど、嬉しかったんだよー、って心の中で思ってたのに!


 でも、ボクの視線には気づかないくらい必死にご主人様は売ろうと頑張っていた。


「そして……必ずリオをしあわせにしてあげてくださいね!」


 これだ。


 ボク達がご主人様を大好きな理由。


 奴隷の為にこんな事言う人いない。


 だって、普通奴隷は人として扱ってもらえないから。

 だけど、ご主人様は、ボク達を……。


「と、以上ですが、何か不明な点はありますか?」


 ご主人様が道場主にそう問いかけると、道場主はタコみたいに顔を真っ赤にして震えていて、


「あーる! あーる! あーる! 不明だらけあーる! なああんだ、その条件は!? 実力主義で奴隷から騎士になった者さえいる帝国でもそんな意味不明な話はないのであーる! 大体、戦士がそんなピンク? レース? かわいらしい、浮ついたものなど必要ないのであーる! なんだこの頭のオカシイ奴隷商は! いいか、よおく覚えておけ、へぼ奴隷商! そんな女々しい戦闘奴隷など論外であーる! 大体条件も価格も論外なのであーる!」

「……は? テメエ、今なんつった?」

「え?」

「ろん、がい? 論外? 論外はテメエじゃあああ!」

「あーるぇええええ!?」


 ご主人様がキレた。完全にキレた。

 怒ったご主人様もかっこいいなあ。


 ……だけどさ。

 今、こいつ『へぼ奴隷商』って言ったのかな? わふん?

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