第23話 神クラス奴隷商人の最強獣人奴隷なので、ご主人様と頑張って守ります!
ボクが闘技場に立つと大歓声が起きる。特に一部で。
『さあ! 現れたのは、イレド奴隷商の戦闘奴隷リオ! リオ選手は圧倒的実力で全試合一撃必殺(わああああああああ!)でして、前回覇者として迎え撃つ立場。(わあああああああ!)さて、今回は二連覇なるのでしょうか!(わああああああああ!)まもなく試合が始まります!』
ヴィーナとティアラが雇ってくれた冒険者ギルドの『えきすとら?』がご主人様を取り囲み、ヴィーナの合図で大歓声を送ってくる。
ご主人様にボクが前回出たことを分からないようにするためだ。
大歓声と、後ろから抱きついてるヴィーナが耳を塞ぎ、聞こえないようにする。
でも。
ヴィーナは、『司会の邪魔をしては申し訳ありませんから、こっちでイレド様に聞こえないようにします』って言ってたけど、ぜったいヴィーナ、ご主人様をぎゅっとしたいだけだよね!?
とはいえ、ヴィーナに逆らってはいけないことは良く分かってる。
ジェルと大喧嘩して、ヴィーナの大事にしてた12代目ご主人様の椅子を壊した時は本気で死を覚悟した。ヴィーナは1代目から5代目も持ってるはずなのに……。
とにかく、ヴィーナに逆らってはいけないはウチの絶対的ルールだ。
そんなヴィーナに抱きつかれながらもご主人様はボクに向かって精一杯応援してくれてる。きゅぅううううん、うれしいよお!
一回戦の相手は冒険者ギルドのヒャッハーだ。
「ヒャハアアアア!」
弱そう。っていうか、弱い。
腕は太いけど見かけ倒しだし、弱すぎて雑魚モンスターにボコボコにされて傷だらけだし、『威嚇して魔物が来ないようにする為の髪型なんだ!』ってビビッててあの髪型だ。
でも、ご主人様は、あんなヤツ相手でも応援してくれている。うれっしいい!
『はじめ!』
「ヒャッハアアアア! ……ひ? ヒャッハアアァァァァァ………!」
……あ。
あああああ! やっちゃった! やっちゃったよお!
テンション上がり過ぎて、一撃で倒しちゃった!
『しょ、勝者! イレド奴隷商、リオ!』
話が違うぞって顔で審判や司会が見ている。
でも、だって、ほら……ご主人様が拍手をしてくれてるんだよぉおお~?
ご主人様からの拍手なんて、頭なでなでやブラッシングはあっても、拍手はレア中のレアだ。
うれしすぎるでしょ!
そう思ってたら、しっぽぶんぶんしすぎて、土煙が起きて闘技場見えなくなって一時中断になってしまった。また、じとーって見られた。ごめんよお。
その後は、うまい具合に相手に攻撃させて、頃合いを見て、一撃で倒せた。
ご主人様の心配そうな顔とほっとした顔と勝って嬉しそうな顔が見えて、ちょっとどうにかなりそうだった。
「流石リオだよね! かっこいいなあ! ねえ、みんな!」
遠くで、ご主人様が、そう、言ってた。
うれしぃいいいいいいいいいいいい!
そして、みんなはボクが褒められてちょっと不機嫌そうだった。ふっふっふ。
『さあ、優勝候補の前大会優勝者(わああああああああああ!)のリオ選手が順当に勝ち上がる一方で、こちらも圧倒的な力で相手を蹂躙し続けているのは、帝国からの刺客! オットコ道場師範代、ドルグ選手』
もう一方のトーナメントを勝ち上がってきてたのは、あの気持ち悪くて、変な匂いをさせてる男だった。ドルグって言うんだ。
「はっはっはあ! 弱い弱すぎるぞ! 雑魚雑魚雑魚ばっかだ!」
言うだけあって、ドルグは強かった。左手一本だとちょっと面倒かも。
だけど、関係ない。
アイツは対戦相手を徹底的に傷つけていた。許せない。
そう思っていたら、ご主人様がやってきてドルグが薬によって違法な強化をしていることを知った。
そうか、あの妙な匂いは薬の匂いか。すごく嫌なにおいだけど……。
「そっか……」
「だからね、リオ! この試合は棄権しよう! 大会側と繋がってるなら事情を説明しても無駄かもしれないし」
「ご主人様……ボク、戦うよ」
絶対に許せない。
ボクは別に他の参加者なんてご主人様に比べたら全然大切じゃないけど、意味もなく傷つけばいいとは思わない。
みんなボクがどんなに強くても、ちゃんと正々堂々向かってきていた。
卑怯者のアイツとは違う。
そして、みんなにだって、心があって、家族がいて、家族の心があって、仲間がいて、仲間の心があって、みんなで生きてる。
そのみんなの心を意味なく苦しめるヤツなんて、許せない……!
もし、もし、ボクの家族、ご主人様やヴィーナ達が、理不尽な暴力に曝されたら……!
ソイツの、全部、壊す。
全部全部全部、壊す。
それが例え、獣王である父親であったとしても、魔王でも竜王でも、神でも、壊す。
悲しくて悲しくて仕方ないから。きっと壊しちゃう。
きっと今日ドルグに壊された人たちの家族や仲間も同じ気持ちだろう。
なら、
「徹底的にぶちのめしたい。だから、ご主人様」
「わかったよ。リオ……」
ご主人様がボクに手をかざし、魔力の光を放つ。
この光にボクは救われた。
制御できないボクの力を、何もかもを壊して、誰も愛せず誰にも愛されない破壊の力を、ご主人様が止めてくれた。
そして、今は、
「神スキル【
ボクを強くしてくれる。
銀色の魔力がボクを包み込む。
【銀の悪魔】
そう呼ばれたこともあった。みんなボクを見て怯えてた。
でも、
「ご主人様、ボク、怖い?」
「ううん、すっごく綺麗だよ」
ご主人様は、そう言ってくれる。
だから、ボクはボクを諦めないでいられるんだ。
『それでは、決勝戦です! イレド奴隷商、リオ、対、カルナ帝国オットコ道場、ドルグ!』
ニタニタと笑いながらドルグがボクを見つめている。
「身体はでかいが、いい女じゃねえか。まあ、戦闘中に寝技でいろんなとこさわっちまうかもしれねえなあ~、偶然よぉ」
「……下衆が」
「はっはっは、俺が下衆だとしたら、その下衆になぶりものにされるんだよ、子猫ちゃん」
身体が、震える。怖い。
『それでは、はじめぇえ!』
お願い、お願い、お願い! どうか!
「どうか、簡単に、お前が壊れませんように」
「はあ?」
ベアハグを仕掛けようと両手を上げて迫るドルグの胸に指一本を当て止める。
「蠅が止まるよ」
あっけにとられているドルグ。伊達に帝国にある道場の師範代ではないんだろうけど。
お前は、許さない。でも、死んだらご主人様も悲しむと思うから。
「お願いだから、死なないでね」
そこからは一方的だった。
「はぎゃあああああああ!」
「おんぎゃああああ!」
「げぼおおおおおお!」
「うがああ! ……はあっ……はあっ……! い、生きてる、いきてるよぉおおおお」
「あぎゃああああああ! ごべんなさいごべんなさい! ゆるじてぇえええ!」
指四本弾いて、拳を地面にたたきつけただけで、ドルグはしおしおになった。
衝撃波でふっとばしておいてよかった。
アイツ、全部漏らしてる。全部衝撃波で飛んでいってほとんど自分にかかってるけど。
それより。
ボクは、ボクの力に勝てた。勝てたんだ。
ご主人様の方を見るとぐっと拳を握って頷いてくれてた。
『大丈夫だよ。君なら大丈夫。君なら守る人になれるよ。誰かを愛することも出来るだろうし、愛される。少なくとも、僕は、そうやって傷つけてしまった僕の為に泣ける君のこと、好きだよ』
そう言ってくれたご主人様がボクにはいるんだ!
「やったね、リオ!」
「やったよ! ご主人様ぁあああああ!」
うれしぃいいいいいいい!
って、ヤバ! 両手思いっきり振り上げちゃった。
あ、ヴィーナが、睨んでるぅうう……!
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