第19話 神クラスの奴隷商人なので最強獣人奴隷を武闘大会で売ります!
「ぬわっはっはっは! 儂はカルナ帝国オットコ道場師範! アアルであーる! リオとやら! お前を帝国にスカウトしにきたであーる!」
武闘大会終了後、表彰式も終わり、控室にリオを迎えに行き帰ろうとした矢先、アアルという男に呼び止められた。
ちなみに、リオの腕は、本人曰く、なんか気付いてたら治ってたらしい。
不思議なこともあるものだ。
っていうか、この人、さっき控室でドルグと話してた人だよね。
あ、ドルグは試合終了後、リオが観衆の目の前で指摘した事で、再検査がその場で行われ、薬の使用が確認され失格となった。
「先ほどの戦い、ウチの門下生が愚かにも勝手に薬などという許しがたき不正を行い、勝とうとしたこと誠に申し訳なかったのであーる!」
なるほど、飽くまで『本人の暴走』にしたいわけか。
大会関係者ともつながっている可能性があるし、これ以上は難しいかもしれないな。
「ヤツは破門にした! 故に! リオよ! お前をウチに迎え入れたい! 奴隷であるならば好都合! 帝国で金を出し、お前を買い取るのであーる」
「ち。他国の奴らか。面倒だなあ……」
ぼそりとリオが何か呟いているけど、それより、気になるのは、これはもしかして、商談!?
「我々は帝国から保護を受けている道場のひとつであーる! お前のような才能をこんなところで眠らせておくのは勿体ないのであーる! お前は奴隷なのだろう? おい、奴隷商、この奴隷はいくらなのであーる? 我々は帝国から保護を受けている道場の一つなのであーる! 金はいくらでもあーる!」
これは漸くウチの奴隷が売れるチャンス!
不正をするような所なのは気になるけど、リオなら、きっと全員の根性叩き直せるはず! それに、帝国は実力主義! リオならきっと活躍できる!
ではでは、商談といこう! 僕は気合を入れてアアルさんと向き合う。
二人ともいい笑顔だ! これはあっさり決まりそう!
「ありがとうございます! 800万ゴールドです!」
「はっはっは! そんなには……なーい!」
あーるじゃなかった。
え? じゃあ、条件も無理なのかな?
「あの、彼女を、リオを引き取る条件もありまして……」
「条件あーるのか?」
「はい! まず、まず、彼女にちゃんとした衣食住を与える事、そして、性行為に及ぶ場合は必ず同意があってからでお願いします。あと、リオはすごくやさしくてお花とかかわいいものが好きなので、かわいらしいお部屋にしてあげてくださいね。ピンク基調でレースがいっぱいあるお部屋でお願いします!」
リオが恥ずかしそうに両手で顔を隠している。
銀髪のたてがみから覗く耳も真っ赤っかだけど、でも、本当にリオはかわいいの好きだし、可愛いのが好きなリオもかわいい。
リオの為にすっごくかわいいお部屋用意してあげた時、『ま、まあ、ボクはこういうの似合わないし、変だろうけど、ここしかないなら、ここでいいよ、うん』って言いながら、近くにいたキヤルの長めのメイドスカートがめくれるんじゃないかってくらいものすごくしっぽブンブンしてたのもかわいかったし、嬉しそうだった。
だったら、このお願いは叶えてあげないと。
そして、それより更に、絶対に譲れない条件。
それを伝えないと。
「そして……必ずリオをしあわせにしてあげてくださいね!」
これだけは絶対に絶対に譲れない条件だ。
ギフトが凄すぎて、力がありすぎて、人を傷つけてきてしまったリオ。
望まないギフトで苦しむ気持ちはよく分かる。
神様が彼女を苦しめるなら、僕達が彼女をしあわせにしてあげないと!
「と、以上ですが、何か不明な点はありますか?」
僕が道場主さんにそう問いかけると、道場主さんはタコみたいに顔を真っ赤にして震えていて、
「あーる! あーる! あーる! 不明だらけあーる! なああんだ、その条件は!? 実力主義で奴隷から騎士になった者さえいる帝国でもそんな意味不明な話はないのであーる!」
ないのかあるのか分かりにくいな。
「大体、戦士がそんなピンク? レース? かわいらしい、浮ついたものなど必要ないのであーる! なんだこの頭のオカシイ奴隷商は! いいか、よおく覚えておけ、へぼ奴隷商! そんな女々しい戦闘奴隷など論外であーる! 大体条件も価格も論外なのであーる!」
は?
「……は? テメエ、今なんつった?」
「え?」
「ろん、がい? 論外? 論外はテメエじゃあああ!」
「あーるぇええええ!?」
キレた。完全にキレたぞ。ごらあ。
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