第17話 神クラスの奴隷商人なので最強獣人奴隷の武闘大会を応援します!
武闘大会当日。
リオは右腕に包帯を巻いていた。
折れたらしい。
「ええぇええええええええ!?」
「ごめんねー、ご主人様。でも、大丈夫だから、頑張ってくるよー」
何でもないような顔してリオが言っている。
いやいやいやいや!
「だ、ダメだよ! 折れてるのに大会なんて出せるわけないじゃないか! っていうか、アリエラかアクアに治してもらったら……!」
「二人は風邪を引きました。スコルの診断で絶対安静だそうです」
なんでぇええええ!?
隣に寄り添ってくれているヴィーナの発言に、僕は驚きを隠せない。
あれだけ、僕が徹底して風邪対策をとっていたのに、二人が風邪!?
この時期そんなに流行ってるの!?
というか、
「どうされたのです? イレド様」
「奴隷に風邪引かせちゃうなんて……奴隷商失格だよ……」
『奴隷は健康状態が重要。病持ちなんて誰にも買ってもらえないからな』
師匠にそう言われて、完璧な体調管理を心掛けているつもりだったのに、また、風邪を引かせてしまった……。
「イレド様……イレド様が気に病む事ではありません。彼女達は……寒中水泳をしていたのです」
「なんでぇえええ!?」
「イレド様の奴隷として少しでも成長しようと、ああ、そうそう、あと、リオの必勝を祈願して滝に打たれていたからそっちかもしれません、ねえ、リオ?」
「ええっ!? ああー、うん、そんなきがしてきたなー」
そんな……!
「そんな……ことまで……! 二人ともなんて良い子なんだっ! ヴィーナ、経営苦しい時にごめんだけど、二人にお見舞いの品を買って帰ろう!」
「はい。今日の武闘大会応援デート……ごほんごほん! 武闘大会をイレド様と一緒に見に行けない分、喜ぶものを持って帰ると約束しておりますので、ご安心ください」
ヴィーナがそこまで言うならきっと二人も喜ぶような元気の出るものを用意してくれてるんだろう。であれば、問題は……。
「リオは……」
「だ、大丈夫だよ! ご主人様! 左手だけなら出ていいって言われたし……す、スコルから! 危なくなったら棄権するし、左手一本でもご主人様の奴隷なら戦えるってところを見せるから!」
「リォオオオオ! なぁんて君は良い子なんだ! 分かった! 僕はみんなと一緒に観客席から応援するからね! 危ないと思ったら僕止めに入るからね!」
僕は思わずリオを抱きしめていた。
大柄なリオだけど腰の周りは細いから抱きしめやすい。
「ごごごごごご主人様! そそそそそそんな大胆な! この時期にそれはキツ……!」
「うおっほん! イレド様! 人が見ています。それにリオがとんでもない風を巻き起こしているので、やめてください」
しまった! つい思わず。僕が慌てて離れると、リオはへたり込んで思いっきり深呼吸してた。息を止めてたみたいで、ぜえぜえと呼吸している。
「ご、ごめんね……臭かったよね……
「「「「「絶対にダメ(です)!」」」」」
揃った。みんなに止められた。特にリオとヴィーナが物凄い目で僕を見てる。そんなに睨まなくても……ちょっと涙目じゃないか。
「こほん、イレド様。奴隷に特定の香りがついているのを好まない買い手もいます。絶対に、絶対に、香水はいけません」
圧が凄い。僕は黙って頷いた。
それにしても、そんな事知らなかった。みんなを売る為にもっともっと勉強しなきゃな。
「と、とにかく! ボク、左手一本でも頑張ってくるから、ご主人様……その、いっぱいボクを応援してくれると嬉しいな!」
「勿論! いっぱいいっぱい応援するよ!」
「わ、わふん……うん! ボク今日は優勝できそうな気がするよ!」
相変わらずしっぽをぶんぶんさせて気合の入っているリオを見送りながら僕達は観客席に向かった。
武闘大会の会場は熱気にあふれていて、僕達の席の周りは人気の場所なのか特に人がいっぱいだった。
「け、結構人が多いね」
「そうですね……なので、少々身体があたりますが、気にしないでください」
そう言いながら、ヴィーナ達が詰めてくる。
彼女達の匂いなのか、すごく良い匂いがして、頭がくらくらしそうだ。
ダメだ、無心無心……。
彼女達は僕のお店の奴隷であって、僕の奴隷ではないんだから。
まあ、働いてもらってるし、色々やってもらってるけど……。
「あ、主殿……すみませんすみません……」
サジリーがすっごく謝りながらこっちに寄ってくる。
スレンダーなサジリーではあるけれどやっぱり触れ合うと柔らかくて困ってしまう。
「いや、人が多いんだし、気にすることは」
「いえ、サジリーは、いやらしい、はしたない女です。どうか、お許しを……」
サジリーが不思議な事をいっている。今の状況でどうして、何を?
サジリーはちょっと妄想癖がある。目が見えないせいかな。
気にすることなんてない。それより、僕の方が申し訳ない。
奴隷であるみんなにちょっとどきどきしてしまっている。
「って、ラブ大丈夫!? すごい身体熱くなってるけど!?」
「主との接触部分で温度異常が発生しています。少々爆発しそうですが、急速冷却を行いますので、気にせずそのままいてください。適切距離です」
ラブは鉄の身体なので時折物凄く熱くなることがある。
必死に息を吐いて温度を下げようとしているけど、こうなってる時点で適切距離じゃない気がするんだけど。
普通に物凄く近いし。ふうふう言ってるんだけど!
「で、ジェル……君はくっつきすぎじゃないかな……?」
「ええ~、なんでぇ~? だって、アタシ、イレドちゃん、大好きだからくっつきたいんダヨ~」
影からひょっこり現れたジェルが僕に前から抱きついている。
ジェルは小柄だから前から抱きついていても試合は見えるけど、その、ジェルは小柄なのに色々大きくて柔らかいから、試合に集中できないんだけど!
「イレド様、試合が始まりますので、ほら」
後ろからが抱きついているヴィーナが僕の頭を挟み込んでいる二の腕を動かし、試合を見せようとしてくる。動かれると、ヴィーナの柔らかいものが後頭部で! 前は前でジェルが悪戯っぽく笑いながら、身体を揺らしてるし! 前後で柔らかいよ! ああもう!
無心っ! 今日はリオの応援に来たんだ!
それに、周りの人からどう思われることか!
と、思ったけど、周りの人たちは気にする様子もなかった。
これが普通なのかな……こういう事でもない限りあまり店から出ずみんなの育成プラン練って、トレーニングばかりしているから、よくわからない。
追い出されたあの家でも、あまり外には出させてもらえなかったしな。
「わああああああああ!」
歓声が巻き起こる。
どうやら、リオの試合が始まるらしい。
うんうん、リオはかわいいから人気も出るんじゃないだろうか。
そしたら、きっと買い手がついて……。
「がんばれぇええええええ! リオォオ!」
うん、大歓声に負けないように声は出したけど、耳が一瞬でこっちを向いて、すぐさま、リオと目があったんだけど。凄い聴覚だ。……うん、片手折れてるにもかかわらず、元気だし調子がよさそうだ! リオ、がんばって!
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