第10話 神クラスの奴隷商人なので奴隷をお勧めします!

「いや~、ちょうど使い捨ての方に空きが出来てな!」


 スレイは相変わらず奴隷兵団を連れていた。けど、そんなに数いる?

 って、くらいスレイは多くの奴隷を引き連れてやってきた。


 友達いないのかな。


「スレイ……残念だけど、うちには使い捨ての奴隷なんて……」


「待て! お、おい! イレド! あの女はなんだ!?」


 スレイの指さす先に居たのは、アクアだった。


「え? スレイ、君、本気で言ってる……?」


 まあ確かに、鱗は取れたし、少しでも彼女の可愛さが映えるように、髪も整え、栄養のあるご飯を与えしっかり睡眠をとらせ肌艶もよくなった。服もヴィーナに任せ、出来るだけ良いものを着せている。

 けれど、元々彼女はそのくらいの美人さんな素質があった。

 だから、一目見れば彼女だって分かると思うんだけど……。


「よし! よし! 使い捨てはしない! あの女は俺の女にしてやろう! いくらだ!?」


 まあいっか! ちゃんと売れるんなら! やったね! アクア、君が評価されたんだ!


「ごしゅじん様……」


 アクアが不安そうな目で僕を見ている。大丈夫、ちゃんと買ってもらえるよう僕がんばるからね!


「ありがとうございます! 100万ゴールドです!」

「はあ?」


 スレイが間抜けな声を出している。なんで?

 だけど、そんな事を気にしている暇はない。大事な契約だ。逃すわけには!


「そして、お買い上げの際には注意事項が! まず、彼女にちゃんとした衣食住を与える事、そして、性行為に及ぶ場合は必ず同意があってからでお願いします。そして……必ずしあわせにしてあげてくださいね!」

「ちょ! ちょっと待て! なんだその契約は!? ふざけているのか!? まず! 金額が高すぎる! そして、そんな注意事項は呑めるか! たかが奴隷如きに!」


 は?



 今、コイツなんて言った? たかが奴隷如き?


「ウチのアクアを馬鹿にしたのか、てめえええええ!」

「ええええええええ!?」


 キレた。完全にキレた。

 こんなかわいいアクアがこんな破格で、しかも、たったこれだけの条件で買えるのにごねようというのか!?


「ウチのアクアは、超絶可愛くて、健気に戦ってくれて、魔法もいっぱい覚える頑張り屋さんなんだぞ! この金額でも泣く泣く血の涙を流しながら下げたくらいなんだ! それをなんだ! 条件だって、飲めないなんて冷やかしかこのやろおおお!」

「ごしゅじん様……」


 アクアが、瞳を潤ませてこっちを見ている。顔は赤いし、泣きそうだ!

 ウチのアクア泣かせてんじゃねえぞおおお! スレイ、ごらあああああ!


 僕がスレイに迫ると、額に血管を浮き上がらせて叫ぶ。


「きゃ、客に向かってなんだ、その態度はぁああ!?」


 あ。


 あ。



 ああああああああ! またやってしまった!


 僕のせいで……。いっつもこうだ、奴隷みんなの事になると熱くなりすぎてしまう。

 でも、この金額と条件は絶対だ。彼女を不幸にするわけにはいかない!


「ふ、ふざけやがって……俺の家の力があれば、こんな一人も売れねえ奴隷商なんて一瞬で潰せるんだからな!」


 スレイがへたりこみながらも、大声で吠えているとヴィーナがスレイに近づいていく。


「まあまあ、落ち着いてください、お客様」

「あああん!? って、ふあっ!?」


 スレイがヴィーナを見て固まっている。

 そういえば、ヴィーナを見たのは初めてなんだっけ?

 超超超超超美人だよね、ヴィーナ。


「な、な、なんだこの超絶美人は!? こいつも奴隷なのか!? いくらだ!?」

「1000万ゴールドです」

「ふっざけんなああああ! 国家予算かよ!」


 ふざけてない。彼女にはそれくらいの価値はある。あと、流石に国家予算まではいってない。

 ヴィーナは、僕の方を見て、満足そうにうんうんと頷くと、スレイの方を向き、


「では、こうしてはいかがでしょう? 私共、イレド様の奴隷よりも、お客様の奴隷が優れていれば、価格がおかしいと認め、そちらの言い値でという事で」


 僕は、ヴィーナの決めた事には何か意味があると信じているので、何も言わない。

 スレイも満足そうに嗤って頷いている。


「……まあ、お前のような美人奴隷にそう言われれば仕方ないな。条件を飲もう。ただ、俺の奴隷は、戦闘用か夜伽用だ。……どっちで試す?」


 スレイの顔がいやらしくて気持ち悪い。そんなの戦闘一択に決まってる。


「ち。かわいがってやろうと思ったのによお……まあいい、どうせ遅かれ早かれだ。ゴラス! お前の出番だ!」


 スレイは、少し残念そうな顔をしながらも、隣のゴツイ男奴隷を前に出させる。


「コイツは、ウチの最強だ。ギフト戦士のBクラス奴隷だ。まあ、お前如き雑魚奴隷商人の奴隷になったのは可哀そうだし、手加減くらいはしてやろう」


 ゴツイ男奴隷は、へっへっへと笑いながらこちらを見ている。

 随分と余裕の様子だ。


「旦那ぁあ、あの緑髪の小娘手に入れて、飽きたらオレに下さいよ」

「くくく……まあ、いいだろう。それまであの華奢な身体が持てばいいがな。というか、戦闘で壊すなよぉ」


 本当にアクアって気付いていないみたいだ。

 そのせいか、アクアが大分おかんむりだ。


「ごしゅじんさま、ぼっこぼこにしていいですか?」


 おかんむりだ。


「あ、う、うん……どうぞ」


 アクアは、ヴィーナがどこからか用立ててきた綺麗な短剣を何度もぶんぶん振りながら、前へと出て行く。怖い……。


 そして、二人が向かい合い、ヴィーナの合図で戦闘が始まる。

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