第6話 神クラスの奴隷商人なので奴隷をいい方向に導きます!
「傷もないようだね……」
【
流石、スコルだ。こんな極薄の刃で、人の身体をこんなにも丁寧に扱える医者を僕は知らない。まあ、スコル以外の医者なんてほとんど知らないけど。
「ありがとう、スコル。後は……」
僕はスコルに視線を送ると自身の魔力の刃についた血を見つめていた。
「あ、ああ……! ああああ!」
突然噴火するように叫び、興奮した様子の彼女は両手を刃に変えて迫ってくる。
その目は狂気と悲しみが入り混じっている。
「多分、アクアの魔力が高すぎたせいだろうな……スキル【
僕のスキルの光に一瞬包まれたスコルはふらりと身体を揺らすと、ハッと気づき頭を振る。
「……ああ、すまないね。イレド君助かったよ」
「それも覚悟の上だし、助けられたのはお互い様でしょ? ありがとう、スコル」
「い、今のは?」
アクアが怯えながら顔だけこちらに向けて問いかけてくる。
「僕のスキルでスコルを落ち着かせたんだ。彼女は血に興奮するところがあってね」
とある事件により血を見ると極度の興奮状態に陥ってしまうようになった彼女は医者の世界を追放される、はずだった。
だけど、僕の力で彼女の衝動を抑えることが出来、それ以来彼女は僕の元で闇医師として働いている。
いつか、自身でその衝動を乗り越えることが出来たなら彼女を買ってくれる人なんていくらでも現れるだろう。
「まあ、買われるなんて暫くはないだろうけどね。私も退屈させない君の元を離れたくはない」
僕の心を読んだかのように、スコルが澄んだ瞳でそんな事を言ってくる。
スコルの知的探求心というか、好奇心は今、僕に向いているらしい。
まあ、飽きたらちゃんと自立してくれることだろう。
「それより、アクア、調子はどう?」
僕がそう聞くと、アクアは自分の腕や足を見て、不思議そうな顔をする。
やがて自分のおなかをさすると、ぽろり、そんな音が聞こえてきそうな感じで、先ほどまで生えていたはずの鱗が落ちて行く。
代わりに、そこには綺麗な肌があるだけだった。
これで、ひとまず完了かな。
アクアを見るとぽろぽろと大粒の涙を流しながらこちらを見ていた。
「う、わ、ああ……あ、ありがとう、ありがとう、ございます……わたし、わたし……」
「良かったね。ほら、泣かないで」
「はい……ごしゅじん様……わたし、頑張る……から」
そう言ってアクアは僕の胸に顔を埋めわんわんと泣きだしてしまう。
そしてそのまま泣き疲れたのか寝てしまう。
その様子を微笑みながら見ていたヴィーナが近づいてくる。
「アクアは、どうするおつもりですか?」
「ん~、まあ、いつも通り。ここで奴隷教育を施して売り出すよ。出来るだけ早く」
「それでいいのですね?」
ヴィーナは翠玉色の美しい瞳でこちらを真っ直ぐに見つめてくるが、僕は奴隷商人なんだ。不思議な事はない。
「大体、一人も奴隷を売れていない奴隷商人がこれ以上抱え込めないでしょ? 暫くの間だけは、ヴィーナ、申し訳ないけどうまくやってくれないかな」
「……かしこまりました」
僕はヴィーナにアクアを預ける。ヴィーナと、呼ばれてやってきたキヤルにアクアは連れられて行く。
僕は、神スキルを使って、明日からのアクアへの奴隷教育のプランを練り始める。
「スキル【
頭に思い浮かんだアクアの育成計画の何パターンかを紙に書き記していく。
「相も変わらず、凄いスキルだね。奴隷の適正や能力、性格を分析し、理想の育成計画や指示書を作るとは」
「奴隷限定の能力だけどね。しかも、一人も売れない奴隷ばかり生み出す育成計画だよ」
「……その紙も、それなりに高価なんだけどねえ」
「え? 何か言った?」
スコルが何か言っていたようだけど、このスキル発動中は、脳がフル起動していて他に意識が回せない。なんてったって、奴隷を育てるための重要な計画だから全力だ。
「いーや、なんでも。それより、私は、ポーションつくりでもやってくるよ」
「すまないな、みんなには苦労をかける」
スコルは、薬師のギフトも持っている為、ポーションを作って生活費を稼いでくれている。
そして、そのポーションの材料も他の奴隷が取ってきてくれている。
「いいさ。私達は、君の奴隷なんだからね」
そういいながら、スコルは部屋を後にする。
……うん、早く一人でも売って、お金を稼がないと。
「その為には、アクアも立派な奴隷に育てないとな」
僕は再び【奴隷神道ドレイブ・マップ】を使い、彼女の未来を描き始めた。
この光の道たちが彼女と、僕の奴隷達の明るい未来に向かっていることを信じ、神クラススキルで、紡いでいく。
そして、一週間ほど経って、アクアが本調子になり始め、ようやくアクアの奴隷教育が始まる。
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