第13話 実力の証明

 やたらと名門意識を持った男にギルドへの加入を阻まれそうになっていた。ギルドに入る条件として俺の実力をその男に見せるしかないらしい……


「分かった。あなたに俺の実力を見せればいいんですね?」

「何だその態度は、自信ありげじゃないか。だが、お前の装備を見るに西の最果てにある弱いヤツが集うっていう軟弱な街で有名な『アウストヘルン』から来たみたいだな」


俺のいたあの街はアウストヘルンっていうのか。今、初めて知った。

しかしこの男、装備を見ただけでどこから来たのか分かるのか。


「何で証明すればいい?何かモンスターでも討伐しましょうか?」

「いいや、そんな面倒なことしなくていい。俺と戦え。俺がお前の実力を見てやる。女の方は防御魔法が使えるようだからパーティーに入れてやってもいいが」


何か討伐クエストでもやらされるのかと思っていたがこれなら話が早くて助かる。オリヴィアは魔法の技術を認められてギルドへの参加を許されているようだが、彼女は参加するかどうか決めかねているようだった。俺に気を使ってくれているのかもしれない。それかただ純粋に一人では入りたくないのか。


俺自身の実力は恐らくこの男より劣るだろう。だが、俺にはペットがいる。俺の固有スキルはテイマーだ。捕獲したペットと共闘したとしてもそれは俺の『実力』なはずだよな?


俺は表に出るように男に呼びかけ、外で決闘をする運びとなった。


外に出るやいなや


「何だこいつら!?何でこんな場所にモンスターが入ってきてんだ。この街は俺の結界で外からモンスターが入ってこれないようになっているはずだが」

「ああ、それ俺のペットですよ。頭に表示されてるでしょ?PETって」


男は驚いた表情のまま数秒固まっていた。


「モンスターをペットにしたってのか?そんなスキル見たことねえぞ……ってかお前、まさかペットも一緒に戦うとか言うんじゃないだろうな?そんなの卑怯だぞッ!」

「ペットも俺の一部です。スキルで入手したのだからそれも『実力』のうちですよね?」


男は苦虫を嚙み潰したような顔をしている。しかし開き直ったのかこんなことを言い出した。


「まあいい。雑魚が何匹集まっても所詮は雑魚。雑魚エリアでイキがってる奴に教育してやるにはこれくらいのハンデがあってもいいだろう」

「心が広くて助かります先輩」


俺はとりあえずこれからギルドの先輩になるであろうこの男に敬意を払うと臨戦態勢に入った。


途端にルシファーが何やらそわそわしており騒がしい。これは固有スキル『ホークアイゼーション』の効果か?確か相手の実力を見抜いて自分よりも相手の実力が上回る場合、威嚇行動を取るというものだったはずだ。


相手の男はいきなり魔法でレーザーのようなものを放出させたかと思うと俺の後ろのルシファーホークを一瞬にして射抜いた。


「ルシファー!?」

「ふっ……口ほどにもねえ。だから言ったろ雑魚が何匹集まっても雑魚だって」


この男、口調やそのひげ面の似合う強面に加えて右手に剣を持っていることから勝手に剣士タイプと錯覚していたがまさか魔法を放ってくるとは……


そういえば先ほど、この街に結界を張ったとか言っていたな。あの時、魔法も使えるのだと気が付くべきだった。

なるほど……流石に名門の傘下を自負しているだけのことはある。間違いなく強いな……


ルシファーが戦闘不能になったものの、俺にはまだカリウスとアインがいる。


しかし……


アインも物理攻撃には強いが魔法攻撃にはなす術もなく、あっさりと瀕死にされてしまった……


嘘だろ……これ俺、もしかして負けるのでは?俺、自身も剣で応戦しているが、相手の剣技も、俺以上の実力を有しており歯が立たない。


その右手に持っている剣は飾りじゃないってわけか。魔法も剣技も相当のレベルだな……


「どうしたよ?さっきまでの威勢は。怖気づいちまったか?」


男は嘲笑しながら俺にそんな言葉を投げかける。クソッ……

俺はもう負けるのか……こんなヤツに……

そう絶望しかけたその時、またあのオークを消し去ったときと同じ閃光がカリウスから放たれる―――



―――!?


何が起こった?急にまたカリウスが光ったと思ったら相手の男の装備がボロボロになっており、立っているのもやっとの状態になっていた。剣を支えにしてようやく立っていられる形だ。


「はぁ…はぁ……何しやがった?」

「俺にも分からない何が何だか……」

「このでけえワニがさっき発動したスキルの名前を教えろ」

「確か……『オルドレイ』だったはずだ」

「『オルド』だと……?」


男は驚愕を隠せないといった表情をしている。『オルド』にやけに反応していたな。

何かあるのか?だが、男はもうそれ以上何も言わず……


「こいつは合格だ」


それだけ言うと先ほどの店の中へと消えていった。


「タチバナさんおめでとうございます!」

「ありがとう、オリヴィアさん」


オリヴィアが歓喜に満ちた表情で駆け寄る。何だかんだでギルドには入れたという訳か。


良かった……


俺は負傷したアインとルシファーのためにポーションを購入しようと急いで店に向かった。


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