次の目標
第12話 ギルド参加への障壁
俺とオリヴィアはまだ見ぬ街を目指して東に向かっていた。俺が最初に目覚めた草原は地図を見ると西の最果てに位置しており、北をずっといくと凍土、南は砂漠が地図に表記されているとなればとりあえず東に向かうべきだと考えた。
過酷な環境に行くのは今の俺にはまだ無理そうだからな……恐らくその地域に適した装備をしていないと厳しいはずだ。
東は幸い地図を見る限りそういった特殊な環境ではなさそうだった。だから、ここは東を目指すのが安牌だろう。細かい街の位置は分からないが大まかには地図に載っているため、方角さえ分かればたどり着くことはできるだろう。
俺とオリヴィアとアインはカリウスに乗って、その上空をルシファーが追従していた。しばらく移動を続けていると前方に何やら緑色の肌に筋肉が隆々としているヒト型のモンスターの集団がいることに気が付いた。
あれは……ゲームとかで良くみる、オークってやつに酷似している。
そいつらの周りを見てみると何故かアイテムが複数ドロップした状態になっている。これは俺がモンスターや盗賊たちを倒したときと同じ状態だ……
恐らくこのオーク共の縄張りに入った人間やモンスターが狩られた後ってわけか……
それに気が付いた瞬間、俺はオークに肝を冷やしていた。
あのオークの見た目の強キャラ感半端なさすぎだろ……
しかも集団ときている。俺は進路を変えるべきか悩んでいたが、オークは既に俺たちを視認しているようだった。オークは俺たちに向かって石を投げつけてくる。
投擲もできるのかよ!?オークって言ったら棍棒を振り回して原始人スタイルで戦っているだけかと思っていたが、それは甘い予想だった。奴らは石を物凄いスピードでこちら目掛けて投げてくる。殺意高すぎだろこいつら……
「タチバナさん私にもっと身を寄せてください」
「助かります」
オリヴィアはバリアのような魔法を使用して俺とアインと自分自身を投擲攻撃から守ってくれている。
しかしもう逃げられないな。俺はそう悟った。戦うしかない。奴らに勝てるか正直分からないが、もう引き返すことも無理そうだ。
俺は不安を抱えながら戦うことを決意した。
しかし、俺のその決死の決意も一瞬の閃光によって終わりを迎える。
カリウスから光が発せられるやいなや―――
―――敵が消えていた
あれ……?あのオークはどこに行った?
オーク共がいた場所を見てみるとアイテムがドロップした状態になっていた。ということは、つまりお前がオークを殲滅したのか?カリウス?
何なんだ、今のは。カリウスは気にも留めずそのまま東へと向かっている。俺はアイテムを拾うことも忘れてそのままぼーっとカリウスに乗り続けていた。
俺は気を取り直すと急いでカリウスのステータス画面を確認する。すると、俺の知らないスキルがそこにはあった。
スキル:『オルドレイ』という通常スキルがカリウスに追加されていた。
そうか……今までほとんどの戦闘はカリウスに任せっきりだったから俺の知らない間にレベルが上がってても不思議ではない。レベルが上がって新しいスキルを覚えたってことだろう。
このスキルの効果を見てみると『自身の魔法攻撃力に依存して広範囲にわたって前方の敵に攻撃することができます。』
つまり、カリウスは魔法攻撃を使えるようになったってことか。しかし、カリウスの魔法攻撃力は先ほど確認したステータス画面では2だったはず……
それなのにどうしてオーク共は一匹残らず殲滅されてしまったんだ……
オークは魔法防御力が極端に低いとかか?いや、それならオーク共の周りに散らばっていたドロップ状態の装備品の説明がつかない。魔法で簡単に倒せるのなら、こんな縄張りはすぐに壊滅させられていたはずだ。
まあ、何故かは分からないが倒せたので良しとしよう。アイテムは拾わずとも、コインは潤沢なのでいいか。
このスキル『オルドレイ』には俺の知らない書かれていない効果があるのかもしれない。
だが、今は次の街に行ってギルドに入ることしか俺の頭にはなかった。
地図で大まかな街の位置が把握できていたので、前に街を探したときのような焦燥感はなかった。前は飢餓状態で街もなかなか見つからずどんな強力なモンスターが襲ってくるよりも絶望的状況だったからな。
地図なしで街を見つけるというのはやはり無謀だ。良かった地図を入手出来て……
そうこうしているうちに、街へとたどり着いた。外側からみると以前俺がいた街よりも若干荒廃しているか?そう思わせる外装だ。街へと入ると俺の予想よりも閑散とした街で、少し寂れた街並みには店がぽつんと一軒。あとは少し古い家が立ち並ぶばかりだった。
何だここ……
こんな場所にギルドがあるのか……俺はかなり不安になったが、こんな街だからこそギルドがあるのかもしれない。だって、街が寂れているってことは人が容易にはたどり着けないからこそ繁栄しないわけで……
この街にたどり着けない理由は恐らくこの周りのモンスターが他よりも強いってこともあるかもしれない。
俺が来る途中で出会ったオーク共の周りのドロップアイテムの中には装備品も多数含まれていた。西から東に向かうのは厳しそうだ。
わざわざ東に向かわずとも西の住民はもっと繫栄している街が近くにあるのだからこんな場所に来る理由もないしな……来るとしたら命知らずの冒険者ってとこくらいか。そいつらもオーク共に殲滅されているから来れていないけれど……
他の地域がどうなのかは分からないが、恐らく似たような理由に違いない。
しかし、そういう理由ならモンスターの討伐クエストが豊富にあり手慣れのハンターや戦士にとっては絶好の狩場のはず……ギルドもあるに違いない。ただの願望ではあるが……
俺はこの街に唯一ある店に向かった。ペットを店の中に入れるわけにもいかないので、外で待たせておいた。店に入ると恐らくポーションや薬草とか極々基本的なものが売ってる場所とクエストの受付所がぽつんとあった。クエストを受ける場所があるということは、そこに滞在しているハンターやら戦士やらもいるわけで……
隅っこの方で複数人で固まっている人間を見つけた。恐らくこの人たちは同じギルドの仲間だろう。彼らの仲間に入れてもらえるよう俺とオリヴィアは頼みに向かった。やはり彼らはギルドのメンバーでそこは大手ギルドの傘下みたいな存在らしい。
リーダーが非常に良い人で入れてもらえることになりそうだったんだが……
「おい、俺はお前を認めてないからな」
「あなたのリーダーには正式にギルドへの参加を了承してもらったんですが……」
「名門の傘下である『ライトブルーニング』にそんな簡単に入れるわけないだろう?どうしても、俺を納得させたきゃてめえの実力をみせてもらおうじゃないか」
どうやら名門ギルドの傘下ということにかなりプライドを持っているらしいこの男
なかなか面倒なことになったな……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます