第11話 旅立ち

  俺は残りの敵も全て掃討するとドロップしたアイテムを拾っていた。

おっこいつらバッグ持ってるじゃん。今まで俺はドロップしたアイテムをいちいち手に抱えて運んでいたためあまり量が持てず困っていた。さっきの街で高い装備を買ったせいでバッグが買えなかったんだよな……。ありがたい。


しかし、こいつらどれだけの人からアイテムを奪ってたんだ……。盗賊たちのドロップしたアイテムを見てみるとコインやら装備やらを大量に保有しており、それがこいつらの悪逆非道さを物語っていた。


「あの……タチバナさん……」

「え?」

「なぜとどめを……?既に彼らは瀕死だったのでは……?」


オリヴィアがおびえたような目でこちらを見ている。


それもそうか、いきなり盗賊たちを掃討し始めたら怖いよな……

俺はとってつけたような言い訳をした。


「この盗賊たちを野放しにしていれば、いずれ別の人も被害にあうかもしれません。ここは、心を鬼にして処断しなければなりません。私たちがクエストでモンスターを討伐するのもその地帯の平穏を保つためです。これはそれと同じことですよ」


「確かに、他の人が被害にあうかもしれないですよね……。すみませんちょっと浅慮だったかもしれません。タチバナさんだって仕方なくですよね?本当にごめんなさい」


どうやら彼女は納得してくれたみたいだった。しかし、俺は別に盗賊たちをそんな高尚な理由で処断したわけではない。異世界において死亡した場合、どうなるのかについて俺はまだ知らなかった。そこで盗賊たちが都合よく挑んでくれたので大義名分を得た俺は奴らで試してみただけだ。結局、モンスターを倒したときと一緒で一瞬にして肉体が消えてアイテムがドロップするということが分かった。


アイテムを一気に大量に手に入れたのはいいが、こいつらが手に入れられる程度のアイテムなため、強そうな装備はなさそうだな……今、俺は街で買った一番高い装備を着ているため装備はもう不要だ。俺はこのアイテム群を全て売ろうと考えていた。

コインに変えてから後でオリヴィアにも山分けしよう。



しかし、その中に一つだけめぼしいものをみつけた。それは『地図』だ。


ずっと欲しかったんだよな。地図。街で買おうと考えていたがここで手に入るとは運がいいな。

ガチャで『古の地図』とやらが手に入ったがあれは使い物にならなかった。だって字が読めないのだから。使いどころが分からない謎のアイテムよりもこういう普通の地図が良いんだよ。


俺は早速、地図を開いてみた。そこには非常に雄大なマップが記されていた。


おいおい、俺が今いるこの草原エリアってこんな小さいのかよ……あのカリウスやスライムと戦った草原エリアが小さくぽつんと地図の隅っこの方に載っていた。


俺は正直、高価な装備をしているため、もう既に強くなった気でいたがまだまだだった。井の中の蛙だったってことか……


恐らく俺が装備を買った街はゲームでいう最初の街みたいなものだろう。そんな場所にある店で一番高い装備を買ったとしてもたかが知れているという話だ。


言うなれば地元でイキり散らしてるだけの雑魚ってわけだな俺。


 この異世界の規模も把握したところで、とりあえずまずは目標を定めるべきだな。俺は今まで情報を得るためと称してあてもなく行き当たりばったりの生活をしていたが異世界生活にも慣れてきた今はそろそろ何か目標が欲しくなってきた。じゃないとモチベーションが保てそうにないからな。


『この異世界を完全攻略して悠々自適な生活を送りたい』そして第二の人生を謳歌したいというのが俺の大きな目標だが、その目標を達成するためにはまず目先の小さな目標を立てていく必要がある。


俺はこの辺りの敵にはもう負けないだろう。

あの街のクエスト討伐難易度A級のカリウスとB級のルシファーホークを入手している俺に勝てる奴はそうはいない。



となれば、まずは次の街を目指すのが定石か。そこで、ギルドか何かに入ってみるのもいいかもな。


次の俺の目標は『ギルドに入る』にしよう。そこそこ強くなったし入れてもらえるよな?全ステータス50以下はお断りとかいう面倒なギルドじゃなければいいけど……まあ、ギルドは複数あるに違いない。なるべく強い所の方が情報の入りがよさそうだから望ましいが無理なら俺を受け入れてくれる所に入ればいいか。


俺は戻って街でクエストの受付に討伐を済ませたことを報告した。いや、正確に言えば討伐したのではなく捕獲してしまったけれど……

受付の人は捕獲も可としてくれたので俺は晴れて初めてクエストをクリアすることができた。話によればこの依頼の目的はその地帯で人間が襲われる被害が多数寄せられていたため、そこの安全を確保してくれるのであれば討伐でも捕獲でもどちらでも構わないのだそうだ。ルシファーはもう完全に俺を主人と認識しているため騒ぎを起こすようなことはなさそうだから大丈夫みたい。


改めて思うが固有スキル『テイマー』がチートすぎる。これがあれば負けないだろ。俺は先ほど盗賊共から没収したアイテムを質屋に入れコインを30000程入手した。俺はそのコインを売って得たコインとは言わずにオリヴィアにルシファーホーク討伐の際に助けてもらったお礼と称して少し渡した。


全部ひとり占めするのは流石に気が引けるからな……


よし、じゃあそろそろ次の街へ目指すか。そう思って街を後にすると後ろからオリヴィアが声をかけてきた。


「あの……タチバナさん、私もついて行ってもいいですか?」

「別に構いませんけど、なぜですか?」

「私、パーティーが壊滅させられてから思ったんです。もうこれ以上私のような思いを他の人にして欲しくない……と」

「………」


「タチバナさん言っていたじゃないですか?モンスターや盗賊のいる地帯に平和をもたらすのが役目だと。私もそのお手伝いをしたいのです」


なるほど、俺がさっき適当に考えた言い訳を鵜吞みにしてしまったのか……


まあ、人数は多いほうが心強い。俺は快く承諾した。










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