第9話 ルシファーの実力

 ルシファーホークを捕まえた俺はひとまずこいつのステータスを確認していた。


『ステータス』


攻撃力:22

防御力:15

魔法攻撃力:13

魔法防御力:18

素早さ:43


おぉー、強いっちゃ強いけどやっぱりカリウスほどではないんだな。


まあ、それもそのはずか。カリウスはオリヴィアが言うには討伐難易度A級らしい。対して、こいつはB級だったんだから妥当だろう。


しかし、額面通りに数字を受け取るべきではない。それはルシファーにしかできないことがあるからだ。何と言ってもこいつは空が飛べるのだから。今までは空中戦では打つ手なしだったがルシファーのおかげでようやく空中でもまともに戦えるようにはなるだろう。大幅な戦力強化だ。



しかも、全長5メートルほどあるこのルシファーなら人間でも余裕で乗れそうだ。人を乗せて空を飛んでの移動も可能だろう。しかし、俺とオリヴィアとアインならいけそうだが今はカリウスがいるから重すぎてできないだろうが……


ルシファーホークはステータスを見た限りではカリウスに見劣りするが、それでもカリウスとは異なる強みを持っていた。


あとはスキルか。どれどれ……


固有スキル:『ホークアイゼーション』


説明:『相手の実力を見抜き、対象が自身より強い場合は威嚇行動をとる』


自分より強そうな相手が来たら教えてくれるってことか。捕まえるまでステータスが分からない俺としてはありがたい能力だな。もし、強敵に何も知らずに挑んで返り討ちに合うってことが無くなるわけだから、有用なスキルだ。


続けてスキル欄を見た。


スキル:『急降下』


説明『対象に向かって上空から勢いよく急降下することで、素早さを攻撃力に加えて攻撃することができる』


マジ?このスキルチートじゃね?


いいのかよ、だってルシファーホークの素早さって確か43だったよな。それを攻撃力に加えるってことは43+22で65ってことか。65の威力で相手を攻撃することができるのかよ。攻撃力ですらカリウスを超えてきたのか……


『変幻自在』をいつも使っているアインを見ている限り、スキルを使用すると相当な疲労が押し寄せてくるみたいだ。だから続けてスキルは使えないわけだが、それでも強すぎる。


ただ、カリウスは巨大な尻尾を使っての範囲攻撃も可能ではあるから差別化はできているわけだが……それでも瞬間最大火力はスキルを使用したルシファーってことか。


やばいな……。さっきはステータスを見てあんま強くなさそうとか思ったけど考えを改めなければならないな。流石にオリヴィアのパーティーを壊滅させただけあって凶悪な強さだ。



ステータスの確認も終えて、俺とオリヴィアとアインはカリウスに乗り、ルシファーはその後方を空を飛びながら追従する形でもとの街へと戻ろうとしていた。


しかし……


移動を続けていると前方から何やらやばそうな雰囲気の数人の集団が見える。こちらを値踏みするかのような視線を送ってくる複数の男たち、彼らは武装しており明らかに友好的という感じではなくむしろその逆に見える。何だあれ……


「タチバナさん、あの人たち何か……」

「分かっています、とりあえず進路を変えます。やり過ごしましょう」

「お願いします」


オリヴィアは酷くおびえているようだった。しかし、それを感じさせまいと気を張っているようだ。


だが、進路を変えようとしたところその男たちはそれに気が付いたのか、突然魔法の詠唱を始めたかと思いきや俺たちに向けてそれを放ってきた。


おいおい、血の気が多すぎるだろ……


その魔法は酷く冷たく、全身の力が抜けていく。そうか、これで足止めしようってことだな。俺は少しかすった程度で済んだがカリウスはこれをまともに受けて、動きが完全に停止した。オリヴィアとアインも多少のダメージを負っている。


もうこうなりゃ、逃げるのは無理だ。そう悟った俺は奴らと対峙する覚悟を決めた。


幸いなことにルシファーホークは素早く上空に飛翔したため、無傷だった。ルシファー頼む、今頼れるのはお前しかいない。


カリウスはまともに魔法を受けて完全に動けない。アインとオリヴィアも全身の力が抜ける謎の魔法を受けてカリウスから降りることもままならない状態だった。


俺はかすった程度だったので、十分動けるが、かすった程度ですら全身の力が抜けるほどの威力だったんだ。相手は相当強いな。


しかも先ほどは遠くて正確な人数を把握できていなかったが、奴らがこちらに近づいてくるため分かった。7人ほどだ。


かなり距離があったため、こちらにはまだ相手は来れていない。そのうちに俺は体を魔法からならして何とか戦闘には問題ない程度まで動けるようにはなった。


恐らく、相手はもうこちらに追撃する必要はないと判断したのか、魔法を打ってこらず、余裕をもって近づいてくる。


舐められたものだな……


しかしルシファーの固有スキル『ホークアイゼーション』が発動しないということは、もしかしてルシファーは相手のことを自分よりも強いとは思っていないってことか?ならまだ勝算はあるのかもしれない。


ルシファーは固有スキルで相手の強さを見抜くことができる。そのルシファーが威嚇をしないということは相手のことをとるに足らない相手だとみなしているということだ。


そうこうしているうちに、奴らが来た。


「おい、お前ら装備と金を置いていけ」

「嫌だ、と言ったらどうなる?」


俺が挑発すると奴らは下卑た笑みを浮かべてこう切り返してきた。


「俺たちはこの辺りの雑魚を狩って金を稼ぐのが生業でね。お前みたいに最初だけ威勢のいいやつを何人も見てきたよ。最終的にそういう奴は泣きながら謝るんだけどな。俺はそんな奴を見下していたぶるのが楽しくてたまらないんだよねぇ」


そう男が言うとぞろぞろと他の奴らが俺たちを囲んできた。右から魔法系3人、剣士系3人、ガンナー1人か。


そのボス格の男は剣も構えずに、もう高みの見物を決め込んでいる。完全に勝ちを確信してるな。一方の俺たちは、いまだにカリウスの動きは封じられオリヴィアとアインもまともに動けない絶望的な状況だ。俺では奴ら7人と戦うなんて不可能だ。1対1でも勝てるかどうか怪しいレベルなのに……


そんな絶望的な気持ちはまるで音速のごとく遅れて聞こえた快音によって一瞬で晴れた。



空から何かが物凄いスピードで降りてきたと思ったら、敵の一人が瀕死の状態になっていた。


「お前がやったのか……?ルシファー……」


ルシファーのスキル『急降下』によって敵の一人が戦闘からフェードアウトした。


ルシファーは翼をはためかせて残る6人と対峙している。


すげぇ……強すぎるだろ……俺はもう先ほどまでの絶望感は消え去っていた。


勝てる気しかしない。




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