第4話 街発見!
群れのボスワニを捕獲した俺は前やったようにステータスの確認を行おうとしていた。確かこいつの名前、カリウス・クロコダイルだったっけか。ちょっと長いからカリウスって呼ぶか。
カリウスの頭上にはPETと表示されており、俺を主人だと認識しているようだった。なんか、こんな強そうなモンスターをこんな序盤に入手していいものかね……。しかも自分の実力ではなく捕獲できたのはほとんどアインの功績によるものだった。
俺は謎の罪悪感にさいなまれながらも、カリウスのステータスを確認するために背中に乗り、PETという文字の裏側にある矢印マークをタップした。
ステータス
攻撃力34
防御力28
魔法攻撃力2
魔法防御力8
素早さ11
おお…!攻撃力34!すげえ!
だって俺の攻撃力って2だったよな。それでアインも確か1。
カリウスが明らかに異次元の強さであることは明白だった。最序盤で捕まえていいレベルの奴じゃないだろこいつ……。
俺はこいつの異次元の強さに驚きつつ、ドキドキしながらスキル欄も見てみることにした。こんなにステータスが高いんだ、何か強力なスキルを持っているに違いない。
しかし……
通常スキル『なし』
え?……俺は目を疑った。普通のスキルがないなんてこともあるのか……。俺はまだこの世界に来てから日が浅い。俺とアインしか比べる基準となるものがないため、ただのスキルってのは皆が持っているものだと思い込んでいたが、どうやらそうではないらしい。
落胆しながら固有スキル欄も覗いてみた。こちらには『群れのボス』と表示されており説明欄には『使用者がどこにいる場合でも、小型のカリウス・クロコダイルの群れを呼び寄せて、それを統率することができます。』
さっきのうじゃうじゃいたワニ共を呼び寄せてそいつらを操ることができるスキルってことか。敵だと厄介だったが、もしこいつらが味方になってくれるのならこんなに頼もしいことはない。
メチャクチャ強いスキルじゃねえか!
カリウスが通常のスキルを持っていないことについて落胆していたが、固有スキルを見て俺はそんな気持ちも吹き飛んだ。だって群れ丸々俺の味方みたいなもんだろこれ。強すぎないか?
とりあえず、カリウスの能力も把握したところで俺はそろそろ腹が減ってきた。何と言ってもこの世界に来てからまだ、何も食べていない。とりあえず街か何かを探そう。そう思った俺はこの奥まで来た草原を引き返そうと、踵を返したところ……
先程の小型のワニ共が俺たちをまた二重にも三重にも囲っていることに気が付いた。何でだよ。群れのボスは俺が捕獲したんじゃないのか?だからこいつらももう、襲ってこないはずだろ普通なら……。だって俺たちに攻撃するってことは自分たちの群れのボスをも敵に回すことになるのだから。
しかし、囲ってきたワニ共を良くみてみると若干ではあるが先ほどの奴らとは肌の模様が異なるように見える。恐らくワニの群れも一枚岩ではないだろう。群れのボスを捕まえたとは言っても、この模様の違うワニ共まで支配範囲に入っていないってことか。
面倒なことになった……。さっきはアインが機転を利かしてくれて何とか対処できたが、今回はそのアインももう酷く疲れているように見える。恐らく同じ手は使えないだろう。そう、俺が悩んでいると、カリウスが尻尾で辺りを薙ぎ払った。すると……
囲っていた小型のワニ共が一瞬で薙ぎ払われて、そいつらから何かアイテムのようなものがドロップした。
今まで捕獲しかしてこなかったためモンスターを倒したことなどなかった俺は、この世界の敵は倒すとアイテムがドロップするのか、と驚くと同時にカリウスの異次元の攻撃力にも二重に驚かされた。手に取ると『ワニ革』と表示されており、俺はそれを抱えきれるだけ拾い集めた。
ドロップしたアイテムは一応、集めておこう。もし街があるのならそこで売れるかも……。ゲームとかならこういうドロップしたアイテムを売って金策に使うのは定番だ。
とりあえずカリウスがいれば、このあたりの敵に負けることはなさそうだな。そう安心した俺は、急いでドロップしたアイテムを集めるとアインを抱えてカリウスの背中に乗り、前進するよう命令した。俺の命令を理解しているのかは分からないが、俺の言う通りにカリウスは前進を始めた。
とりあえず、まずはこの草原を抜けて街を目指そう。寝る場所とか食う物とか色々必要なものが多いからな。
どこにあるかも分からない街を目指して俺たちは、進んでいく。
ひとまず、草原の奥地を抜けて俺が最初に目覚めたスライムが練り歩く最初の草原までたどり着いた。
こういう時ってゲームならメチャクチャ近い場所に街があるものなんだがな……。ここは異世界、ゲームとは違うとはいえ、ここは俺が最初に目覚めた場所だぞ。もし街から遠い場所に俺をリスポーンさせたとしたらこの世界を創ったやつは相当な鬼だな。
というかそもそも、この世界は不親切設計すぎるだろ…!だって説明書もなければ、テイマーの発動条件すらろくに教えてもらえないなんて。絶対、この世界を創ったヤツは性悪に違いない。俺はこの理不尽な状況に対して怒りが爆発していた。街が見つからないかもしれないという焦燥感がそれにより火をつけていた。
俺はもう、この世界の創造主が実は慈悲深いヤツだということを祈るしかできない。だってそうじゃなければ俺はもう食うものもなく野垂れ死にするだろう。
草原をしばらく南下し続けていると、何やら広大な壁に覆われた街のようなものが見えた。俺はこれを見た瞬間、歓喜した。やっと飯が食える。ベッドで眠りにつけるのだと。
やっぱりこの世界の創造主は超優しいな。俺の創造主に対する評価は二転三転していた。
とりあえず、さっきあのワニ共からドロップしたアイテムを売りさばいて何か色々なものを買おう。このアイテムいくらになるかな。俺はうきうき気分で街へと向かった。
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