一人の少年との出会い

「死ねよ、クズ」


 俺は子供の頃からそう言われて育ってきた。だから、抵抗することが出来ずにいたら、高校でも同じ扱いを受ける。何処にいても俺の存在は底辺だ。


「ねぇ、なんで抵抗しないの?」


 抵抗しない俺に呆れた声でクラスメイトの一人が話しかけてきた。


ーー抵抗? 何故出来るんだ?


 俺は抵抗しないのが当たり前だった。いや、当たり前だ。何故抵抗して良いと思えるんだろう。俺には理解が出来ない。


「抵抗に何の意味があるんだ?」


 俺の口から出た言葉にクラスメイトはため息を吐き出した。


「抵抗しないから続くんだよ」


 その言葉に俺は涙が溢れてきた。抵抗の仕方がない分からなかったせいだと気が付く。


「どうやったら抵抗出来るんだよ」

「言うことを聞かなければ飽きるんだよ、あいつら。僕も中学の時にされた」

「お前を苛めていたやつらなのかよ?」

「そうだよ。無視をし続けたら止めて次に行ったんだ」

「本当に意味があるのか? エスカレートするだけじゃねぇのか?」

「なら、試して見ればいいし、本気で望むなら僕が追い払ってあげるよ」

「お前になんの得があるんだよ!」

「得なんてないよ。ただ可哀想に思っただけさ」

「同情なら」

「早めの対処が必要なんだよ。お前舐められ過ぎ」


 クラスメイトはそう言って、俺を苛めてる奴らに話しかけに行った。


「僕のモノにするから、頂戴」

「げぇ、お前が気に入ったならやるよ。もう論破されたくねぇから」

「次に苛めたら先生に言うから」

「分かったよ、解放してやる」


 さっきまで、取り囲んでいた奴らが引いていく。


ーーなんで助けてくれたんだ?


 俺には理解が出来なかった。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る