冥生生苦

豆炭

冥生生苦


石を拾う。強く握ると圧力が手の皮を押す痛みが返ってくる。

手のひらに流れる痛み。生きているという実感。

いま私はここに居て息をしていて、ヒトの姿をしている化け物。

人が人である定義が見つからなくても、上辺だけそっくりの人というのは、結局─

やっぱり人間ではないのだ。


石を投げる。半端な軌道で湖に吸い込まれた石が水の花を咲かせた。

これからもっともっと寒くなっていくらしい。

二つの目が光る、蛍の光が静かに走る。

森の中を走るセメントの川をゆっくりと走る車を、私は山の上から見ていた。

土に体をうずめてじっとするのは悪くない。

外が寒さに満ちているのと同じように、

内側の壁のあたたかさを生来私たちは忘れることは無いから。


私が化け物として生きていくのなら

その生き方をどうしてだれも教えてくれなかったのだろう

誰かが踏み入るまでは、地面の中は私の内臓。

荒らされたとしても、体の中にいる私はワタシの物。


朝日がとてもまぶしかった

日光の刺激で私の意識は覚醒した。

まぶたが久々に動いたような気がする

土中の空気は意外と少ない、空気の味が今だけ一際感じられる。

すうっ

……


眩く白い太陽に向かって抱きしめるように言った。

「おはよう」

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冥生生苦 豆炭 @yurikamomem

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