第33話 スフェイラ山
クオンタムは変形し、翼を形成していく。
俺は防寒用に持って来ていた白いフード付きのコートを着て、フードを目深に被る。
これで顔は見えない筈だから大丈夫だろ。
クオンタムは変形するとジェット機となった。
かっけー!
ジェット機へと変形したクオンタムに乗り込みスフェイラ山脈を目指した。
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空の旅はかなり快適だった。
振動や音が完全に遮断された空間はフォームの技術にも匹敵する。
そんなこんなでスフェイラ山脈に到着した。カルナがいるのはスフェイラ山脈に囲まれた中心のスフェイラ山という場所にいるらしいが乱気流が激し過ぎて空からは行けないらしい。
ここからはクオンタムに乗って連れて行ってもらうしかない。
人間がこの山を登るには一日では無理だ。それに俺の体力がミジンコなので玄野が配慮してくれたのかもしれない頼れる相棒な事だ。
俺はクオンタムの右手に乗ると山を途轍もない速度で登って行く。
物凄い速度でクオンタムが走る為周りの雪が吹き飛び荒れる。
その異様な光景に気づいた翼竜達が騒ぎ始める。
縄張りに入って来た謎の走行物に対して翼竜は縄張りを守ろうと急降下して襲ってくる。
クオンタムは唐突に走りを止めると振り向きざまに俺を乗せていない方の右手で翼竜の首を掴みそのまま地面に叩き付ける。
そして空を旋回している他の翼竜達に向け、何処から取り出したのか巨大なガトリング砲を空に向け翼竜を撃ち落としていく。
その戦いはクオンタムの圧倒的な力により直ぐに決着がついた。流石、鎖の称号を持つだけある。
その戦いに他の龍達も気づいたのか山全体が騒がしくなる。
しかし、そんな事は関係ないとばかりにクオンタムは山を爆走して行く。
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私は今、何故かスフェイラ山という霊峰の頂上にいる。
私はただリアンを連れ戻しに来ただけなのに、どうしてこうなった?
父親に無理を言ってついて来た後、何故か私だけこの場所に連れてかれた。
そんな事を考えていると、ズシン…ズシンと巨大な何かが来るのが分かる。
私が警戒するが周りの人間はいたって普通な様子だ。
巨大な何かが姿を現す。
それは巨大な狼のような体に長い鎖をマントのように垂らす龍の姿だった。
「カルナ…」
「よく来た。次代の継承者よ」
低い声が全体に響き渡る。
「何言っているか分からないけど私は忙しいのよ。失礼するわ」
そう言って出て行こうとするのをカルナが止める。
「まあ、待て。我のカードを持っているのだろう?サリア・コンティノール」
「何故私の名前を知っているのかしら?」
「先代の者に聞いたからな。しかし、我のカードを無くしたと聞いた時は驚いたぞ」
「それは先代の方に言いなさいよ」
「ハハハ!それは確かにな、失礼した。しかし、先代とはお前の父親だぞ」
カルナはガハハと笑った後、とんでもない事を言った。
「は!?それどういう事!?」
「何って貴様の父親が私と最初に契約した人間なのだが…聞いていなかったのか?」
「そんな事一度も聞いた事ないわよ」
「あの男も父親になった訳か…」
ダダダダダダ。ドォォォォン、ドォォォォン。
突然、銃声と爆発の音が鳴り響く。
なんの音よ、と外に出て確認して見ると、そこには青いライトを光らせる巨大なロボットとその背に乗る白いフードを目深に被り顔を隠した自分と同じ程の背丈の少年だった。
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クオンタムが山中を爆速で走り、道中襲って来たドラゴン達を重火器で吹き飛ばしていき遂に本山であるスフェイラ山の頂上に到達した。
山の頂上は台風の目のように空が澄み切っていた。
龍達の他に人間も迎撃して来た。
しかし、俺の体や玄野の鎖によって防がれ、その間にクオンタムが一掃する。
そして、玄野は既にカード化している為触れてもカード化しない。
そうなれば次に狙われるのは俺だ。
グランミディアの軍人達は次にチェイナーを俺の首に巻き付けていく。
あちらの世界と違い首に鎖を巻き付けるのに抵抗が無い。
俺はチェイナーを付けてくる軍人達とチェインをしていく。
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「マギアバースト」
粗方の人間の首が飛んだ。
首の無い死体が倒れていく。その光景に軍人達は警戒を強める。
まだ人が死んでいくのには慣れないが、分かったことがある。
それは、俺が殺しているわけでは無いという事だ。
やっているのはチェイナーだし鎖つけてくるのは相手だし俺が殺してるわけでは無い。
結果勝手に俺のせいにするなという事で自分の中で決着がついた。
まあ今回は勝手に領土入って来てるし暴れてるし少し悪いかもしれないが…ま、いっか。
俺達が暴れていると巨大な扉が開く。
中から一人の少女が出て来た。
朱色の髪の少女、サリア・コンティノール…。
何故彼女がこの場にいるのか分からないが非常にまずい。どれくらいまずいかというと相手のバ◯ライヒビキからニ◯ル・ボーラス捲れたくらいまずい。
そして…。
「何事だ…?」
「…カルナ」
龍鎖 チェインカルナであった。
「…!鉄鎖!貴様何故ここにいる!」
カルナが吼える。
『龍鎖…鍵を寄越せ』
「渡すわけがなかろう。貴様ら
『忘れたわけでは無い。しかし、
「しかし、貴様とその子供一人で何が出来ると言うのだ?あの日お前達は私に勝てないと知ったはずだろう」
『勝ち筋が見つかったというだけだ』
クオンタムは巨大なアサルトライフルを構えるとカルナに向けて撃ち始める。
カルナは弾丸を背の鎖で全て弾き一気に距離を詰める。
クオンタムはアサルトライフルを盾にしカルナの牙を防ぐ。カルナの顎には鋭い牙が並んでいるが鳴るのは硬い金属音だった。
俺はクオンタムの邪魔にならないよう掌から飛び降りる。
クオンタムは俺が降りたのを確認すると左手でカルナの横腹を殴ろうとする。
しかし、カルナはその動きを認識するとすぐに後ろに引く。
俺は死角からカルナのそばに近づき時計を突き出す。すると玄野は鎖を伸ばしカルナに襲いかかる。
カルナはそれを自分の鎖で対処しながらクオンタムには爪と牙を使い戦う。
「何だその時計は?」
低く荘厳な声にビビる。
「…」
「答えないか…」
違います。怖くて答えられないだけです。
「何してるのよリアン?」
時間の問題だと思っていたがバレた。完全に終わった。
俺はちょっと声を高くして答える。
「いや〜違うですね、誰ですかリアンって。かっこいい名前ですね〜」
「…ばればれよ」
サリアの目が細められていく。顔が怖い。
「…すいません」
俺はそう言ってフードを取る。
俺達の様子にカルナが目を見開く。
「何だお前達知り合いなのか?」
「友人よ」
サリアが答える。
「何してるのよ、こんな所まで来て。下手すれば退学よ!」
「ちょっと…用事があってね…」
玄野との事は契約で秘密にすることになっているので言えない。
「何の為に来たか聞いてるのよ!」
濁して言ったがキレられてしまった。
「鍵を奪いに来た」
「鍵って何の鍵よ?」
それくらいは言ってもいいかな?
「
「何よそれ?」
「…言えない」
「…はぁ」
サリアは何かを察すると深い溜息を吐いた。
「何の事だか分からないけど…その鍵誰が持ってるの?」
「カルナだ」
サリアはカルナの方を向く。
「鍵を渡してあげて」
カルナは目を細め低くうねる。
「何故だ?」
「友達だから」
「ならん。お前には分からんと思うが奴等は危険なのだ。生かしているだけ良いと思え」
それは大罪人に向けるような冷めた物言いであった。
「だがしかし、お前達の親玉である邪神が居なければどうという事は無いか。ガハハハ!」
カルナは煽るような物言いをした。
玄野が今にも飛び出そうとするのを感じ直様時計を抑える。
俺も今の物いいには少し頭に来た。こいつは俺のカードを馬鹿にしたのだ。
「なら良いじゃん」
「貴様、サリアの友達だからとあまり舐めた口を聞くなよ?」
「ビビってんのか?
何故こいつらが敵対しているのか分からないが鍵を貰えなくては困る。
「良い加減にしろよ小僧!」
「びびってないんだったらチェインで決めようぜ!」
「何を言うかと思えば。ハハハ!何処の誰かも分からん相手に我の継承者が負ける訳が無いだろう」
「サリアもそれで良いか?」
サリアは再び深い息を吐く。
「何だか分からないけど、それで良いわ」
俺はニヒッと口角を上げる。サリアとは久しぶりに本気で戦えていなかったので胸が高鳴る。
「クオンタム、力を貸せ!お前も馬鹿にされたままでは嫌だろ!俺が代わりにお前達の力を示してやる!」
そう言って
『…分かりました。貴方を信じてみましょう』
クオンタムは膝を曲げ頭を下げる。
『貴方に忠誠を誓います。マスター』
引き金を引く。カード化したカードを拾う。
"鉄鎖 クオンタム"
「我も入るか」
カルナはそう言うとサリアのデッキに入る。
サリアも俺に当てられフッと笑みを浮かべる。
「リアン・ミーサーク」
「サリア・コンティノール」
「「チェイン バトル!!」」
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