第32話 機械仕掛けの街

船の中で玄野にボルムトについて聞いた。


ボルムトは金属の産業が盛んで鉄道も走っているらしい。


ボルムトに到着し、地に足を着ける。


そんなに長い間船に乗っていないが陸が久しぶりに感じる。


んー。と背中を伸ばすと玄野に


『先ずは街の様子を見て下さい』


と言われた。


「すごい!」


街に着くと壮観な光景に驚く。


工場や工房のような建物があらゆる所に建ち並び、まるでスチームパンクの世界に迷い込んだかのように錯覚する。


街を歩いているとふと気づくことがあった。


どの歯車も動力で動いているのではなく自動で動いているのだ。


「どういう事だ?」


『この街は金属生命種を動力として動いているのです』


ガシャンと大きい音が鳴る。


そちらの方を向くと男が機械に向けて呟いていた。


あれはジムか?


「あちゃーこの奴隷ももう駄目か?早く買い換えないとな…」


男は金属生命種の生物を奴隷と言い物を扱うように言う。


『これがこの街の真実です』


この街は金属生命種を奴隷として利用する事で発展した街だった。


『マスター、次に向かって欲しい場所があります』


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俺は玄野の言う場所に向かった。


着いた場所は、どうやらスクラップ工場のように鉄屑が積み重なった場所だった。


「ここは?」


『鉄の墓場と呼ばれる場所です。使えなくなった金属生命種を捨てる場所とされています』


玄野の声が震えているように感じる。


するとガシャンガシャンと鉄屑を退かしながら近づいてくる者がいた。


『何者だ?』


それは巨大な鉄色に輝く鎧だった。青い目を輝かせ此方の目を射抜く視線。


ロボットか?


『クオンタム、私です』


玄野が言う。


『!…クロノス様でしたか』


低い機械音声が鳴り響く。


『今はクロノと呼びなさい』


『は、クロノ様。お帰りをお待ちしておりました』


クオンタムと呼ばれたロボットは膝をつき頭を下げる。


『して、その子供が…?』


『そうです』


俺が知らないところで話が進む。ま、話されても多分、分からんからいいけど。


『ですが、まだ幼過ぎるのでは…?』


『実力は確かです』


『…そうですか』


クオンタムはまだ納得していない様子だ。


『マスター、紹介します。この者が鉄鎖(てっさ)クオンタム。我々金属生命種の統括役です』


『いえ、私はただの代理に過ぎません。クロノ様の体が戻って来た暁には──』


『クオンタム』


玄野が話を遮った。


『申し訳ありません…』


クオンタムがその巨体を小さくシュンとさせる。


クオンタムは鎖の称号を持っているが立場は玄野の方が上なのだろう。様付けで呼んでるし。


「それで、封印って結局なんなの?」


『この街にいる金属生命種は鎖の称号を持つ者達に記憶や感情と体を封印され奴隷として働かされているのです』


なるほど。


『私はそれが許せない。なのでマスター契約に従い封印の解放に助力して頂きます』


ふとガシャガシャと音が鳴り、そちらの方を向く。


『マス…ター………ご命令…を』


そこには体は錆びつき所々部品が欠損した機械が俺に寄ってきて命令を聞き、そのままガシャンと地面に伏した。


『この子達に自我はなく人間の言いなりになるだけとなってしまっているのです』


今、地面に伏したモンスターはバイコードか?


俺のカードを奴隷として扱い道具のように使い捨てるとは…。


沸々と怒りが沸いてきた。


俺が、一番嫌いな事は自分のカードを取られる事。これはそれに抵触しているのではないか?あいつら許さん。


「それで、封印を解く為にはどうすればいい?」


『封印を解く方法は今この世界を支配している種族の王…龍鎖 チェインカルナから鍵を奪う事です』


カルナかよ。


「俺できる事少なそうだけど何すればいいの?」


『龍鎖 チェインカルナや龍種の多くが棲むスフェイラ山脈。その付近をグランミディアの人間が守っています。マスターにはグランミディアの対処をお願いします』


自国の人間と?ま、いいか。


しかし、ばれるのはまずいな。フードでも被っていくか。


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クロノは上手くリアンを誘導出来たなと感じていた。


これで機械仕掛けエクスマキナの封印を解く目処は立った。


しかし、それだけで私は満足しません。


私の目的は…私達に封印をかけた全ての種族を皆殺しにし、鎖の称号を持つ者達を殺す。そしていずれ殺して見せます…異界神。


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夏休み、それは学生にとってのオアシス。


一日一日を大切に消費するもの、長いようで短いその時間を使ってやっているのに、とサリアは怒りを滲ませていた。


夏休みに入り、近所にあるリアンの家に遊びに行こうとしたが何故かリアンは帰って来ていないと言われた。


おかしい…もうとっくに休みに入っているというのに。まだ寮にいるっていうの?


違和感を覚えながらサリアは家に帰る。


すると父親にとんでもないことを言われた。


「おい!サリア!リアン君が勝手にオルベル学園のを使ってアリシアに行ってしまったらしい!」


「は?」


私は最初理解が追いつかなかった。


このハゲ親父は何を言っているのか、と。


「私はこれからアリシアに行く」


そう言うと、焦って家を出る準備をする。


「私も行くわ」


「何を言ってるんだ!?異世界は危険な場所なんだぞ!」


「大丈夫、私の貴重な時間を消費してまで家に行ってあげたのに勝手に異世界に行ってるアホを連れ戻しに行くだけだから」


私はあの手この手で父を言いくるめ、ついて行くことにした。


父は普段は怖い顔して冷静沈着なハゲだが、かなり動揺しているのが分かる。


何してんのよあのアホは!異世界への勝手な渡航は校則違反だっていうのに!

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