第31話 異世界への扉

「うんこ」


『…何ですか?』


「ち◯こ」


『?』


「ま◯こ」


『…』


「僕と付き合って下さい!」


『…マスター……病気だとは思っていましたが、直ぐに病院に行った方が良いですよ…』


カンザキとのいざこざがひと段落し、シズネ達がカンザキに帰ったあと、俺は寮で前世の小さい頃にやったスマホの遊びをしていた。


前世のスマホの先生はネタは優しく流してくれる優しい先生だった。


しかしこいつは先生とは違った。悪口しか言ってこない不良品だ。声だけ一緒だから騙されたぜ。やっぱ前世のスマホは凄かったんだな…。


俺は前世を思い出し懐かしい気分になっていた。


そういえば、シズネはカンザキ領の学園に通うようで今までのように頻繁に会えるわけでは無いが、また会えるようになるという事でサリアが嬉しそうにしていた。


シズネの母とアヤメさんはカンザキが良くなるよう頑張って働いているらしい。


そして、いろいろ助けてくれたお礼にとカンザキのカードをネットで買えばいつでも送ってくれるらしい。


俺は狂喜乱舞した。カンザキ行って良かったー!


ゲームでいうエリア開放したみたいな気分だ。ワクワクする。


早速使ってみたが、この世界、物流極め過ぎて国が違うのに30分で品物が着いた。化け物過ぎる。


今までカンザキは一つの国としか貿易をして無かったみたいだがグランミディアとも貿易をし始めたらしい。これから多くの国と交流していくだろう。


国が変わっていっている証拠だ。


そんな事を思っていると玄野が話しかけてくる。


『これから夏休みですよね』


「そうだけど」


そういえばオルベル祭が終わり少ししたあと夏休みになるんだった。


『ならマスターにはこれから異世界に行ってもらいます』


「どういう事?」


『私はカンザキとの件が終わるのを待っていたのですよ。契約を果たして貰う時が来ました』


「あの訳わかんない契約か」


『では、とりあえず異世界に行く準備をして下さい』


こいつ夏休みを使って契約履行させるつもりだな。


ま、暇だからいっか。


そう思い異世界に行く準備を始めた。


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深夜二時、皆が寝静まった学園のある部屋に俺は忍び込んでいた。


『私とこの万能ペンチがあればどんな場所にも入れます』


そう言って割とガチガチのセキュリティーがある学園の部屋に入る事ができた。


ペンチすげー!


そこには装置などが大量につけられた重厚な扉があった。


『これが異世界への扉です』


「まじで?」


そう言って玄野は時計から鎖を出し、機械に刺して操作し、扉のロックを解除し、扉を開ける


『はい。なので速く入ってください』


玄野が時計から出ている鎖を扉に引っ掛け俺を無理矢理扉に引っ張る。


「ちょっと待って!まだ心の準備が──」


俺はずるずると鎖に引っ張られ扉の中に引き込まれた。


扉の中を見回すとさっきの部屋と同じような部屋だった。


人の気配を感じる。早くここから出たほうがいいなと感じ、玄野と万能ペンチの力でバレないように外に出る。


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迷路のような通路を玄野のナビで歩き建物を出る。


後ろを向くとかなりの大きさの建物で何かの施設のような場所だった。


すぐに目の前の森に隠れ走って森の中を進む。


走り続け森を抜けた先、目の前には草原が広がっていた。


空には尋常じゃ無い大きさの鳥とドラゴン?が飛んでいる。


草原にはよく分からない鹿みたいな動物達が草を食んでいる。


「おー!」


前世や今までの世界では見たことない光景に思わず声が漏れる。


『ようこそ、異世界アリシアへ』


玄野が歓迎してくれる。


「で、これからどうすればいいの?」


『まずはこの草原を北東に進んでください』


玄野がデジタル時計の画面をコンパスに変え北東に印を付けてくれる。


コンパスを北東に揃えて歩き始める。


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一日中歩き続け、陽が沈み始めた頃。


「きつい…疲れた…休憩にしよう」


俺の体力は限界だった。


『分かりました。今日はここまでにしましょう』


そう言われて俺はカバンを開ける。


カバンはカバンの大きさより大きな物も収納でき、重さも感じない未来の便利アイテムだ。


この世界ではカバン一つでどこまでも行ける。


カバンの中から一つのボタンを取り出す。


ボタンを地面にかざせば青い線で家の形が出てくる。


これに合わせボタンを押すと木造のログハウスが出てきた。


これぞ商品名『どこでも楽々ログハウス』だ!


ログハウスの中に入る。


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寝る準備を済ませあとは寝るだけというところで玄野がこの世界について話してくれる。


『まずはこの世界について話します。この世界はマスターが住んでいる世界と違い魔術や魔法と言った物が存在します。そして魔術や魔法を行使する為に必要なエネルギー、コネクトというエネルギーが存在します。コネクトはこの世界の生き物や無機物、あらゆる物に宿っていて大気中にも漂っている物です』


それから玄野はこの世界の世界地図を見せながらこの世界や向かう場所について教えてくれた。


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朝の準備を終えログハウスをボタン一つで消し、カバンにしまう。


『ボルムトに向かうには海を渡る必要があります。先ずは港がある街、バレッサに向かいましょう』


俺は指示通りバレッサの街を目指し歩き始める。


バレッサまでの道中、人が走っているのが見えた。


第一村人発見!と思い声を掛けようとしたところで玄野に制される。


『離れましょう』


俺はこの世界の事をまだ良く知らないので玄野の言う通りにする。


かなり離れたところの茂みに隠れる。


すると走っている人の後ろから緑色の小鬼が出てきた。前世のカードゲームで良く出てくるゴブリンだ。


ゴブリン達は数匹で一人の女を追いかけていた。


女が足を挫き転けてしまう。


追いついたゴブリン達は女の足に石の刃を突き刺す。


女は痛みに声を出す。そのままゴブリン達は急所を外して女の身体を突き刺していく。死なないようにする為だろう。


ゴブリン達は女を複数匹で持ち上げると何処かへ連れて行ってしまった。


『私達には戦う力がありません。マスター、御注意を』


玄野が小声で言う。


素直に頷く。玄野の言う通りにしていなければ今頃俺もゴブリン達に襲われていた。


気を引き締め、注意を払って歩くようにした。


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何度かモンスターを見かけたが隠れたり逃げたりしながら何とかバレッサの街に到着する事ができた。


道中、遺体が多くあった。鎧を着た男やローブを着て杖を持った魔法使いの格好をした男。恐らくモンスターに殺されたのだろう。体はところどころ欠損しており、食べられた跡がある。見た目結構グロい。


『マスター、街に入る為にはお金が必要です。使えそうな物は取っていきましょう』


「死体漁りって事!?」


『はい』


死体触るのか…ま、いっか。


俺は二人の遺体から金品や使えそうな物を鞄に入れていった。


金貨やナイフ、売れそうな物として杖なども鞄に入れる。


俺が持っているカバンはグランミディア製の未来のカバンなので見た目より何倍もの物を入れる事ができる。分かりやすくいうと四次元ポ◯ットだ。


「玄野、これなんだ?」


『それは魔法袋マジックバッグですね。その鞄と同じように見た目より物を多く入れられる袋です。しかし性能はマスターが持っている方の鞄の方が良いですよ』


ならこのカバンに入れてバッグインバッグにしようと考え魔法袋マジックバッグの中身を確認して鞄に入れる。


そうやって手に入れた金貨でバレッサの街に入り、港に向かう。


「すいません。ボルムトまでの船は何処ですか?」


港の案内所の男に聞く。


「はいはい、ボルムトですね。ってガキかよ」


男は俺が子供だと知ると態度を変えた。


「で、ボルムトまでの船か?端から3番目の船だ」


男が訝しむように聞く。


「おい、坊主。金はあんのか?金がねーと船に乗れないぞ」


「あります」


と答え、金を出す。


「あるならいい」


男はそういうとチケットを渡してくれる。


俺が異世界の人と会話できるのは耳につけてるイヤホンのおかげだ。このイヤホンは本来はポロンと繋げる物だが今は玄野と繋がっている。そして異世界の言葉を翻訳してくれている。


玄野すげー。


「坊主、耳に付けてるそれはなんだ?」


「イヤホンです」


俺はそう答えると男は何かに気づいたように狼狽える。


「もしかしてフォームから来たのか?」


俺がフォーム?と疑問に思っていると玄野が『マスターが住んでいる世界です』と教えてくれる。


「そうです」


「そ、そうか。なんだよ最初に教えてくれよー」


男はハハハ…と乾いた笑いをする。


急に態度が軟化した。怯えるような、焦っているような?


「も、もう直ぐ船が出るから行った方が良いぞ?」


男はぎこちない笑顔を浮かべていた。


俺は男の言葉に従い、船長にチケットを渡して船に乗る。


何故男は急に態度を変えたのだろう?


『マスターが怯えられたのは異世界の人間だからです。異世界の人間は過去の戦争であらゆる人間をカード化した弊害で未だに恐れられているのです』


ほえー。


玄野が教えてくれた。


丁度船が出発する為に汽笛を鳴らし、船が出発した。

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