第29話 母娘の再会
サリアが足止めをし、その間に部屋を出たアヤメは廊下を車椅子を押しながら走っていた。
「待って下さいアヤ!サリアさんを一人にするわけにはいきません!」
「ですがあの場に私達がいても何もできませんよ」
「ですが…まだサリアさんは子供です!相手はチェイナーを持っていました!もし負けたら…」
「…しかし、これが最後のチャンスかもしれないんです!サクラさんもシズネちゃんに会いたくないんですか?」
「それは…」
シズネの母は黙ってしまった。
エレベーターに乗りリアンが戦っている階に到着する。そして慎重に進むとリアンが戦っている場所であった。
ここはあのキクチがいたとリアンを心配し覗くとリアンが首のない死体を見下ろしていた。死体の血を浴び制服が真っ赤に染まっている。
暗い目で何を考えているのか分からない。アヤメはこの時リアンに恐怖を覚えてしまった。
リアンは何かを呟くとこっちに来る。
「あ!」
「ヒッ!」
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俺がサリア達の所へ向かおうとするとアヤメさんの姿があった。
アヤメさんがの姿に声を上げると彼女は怯えたような声をした。
彼女の顔を見ると顔が真っ青になっている。
「どうしたんですか?」
「い、いや…なんでも無いよ!」
なんでも無いならいいや。
恐らくシズネの母親であろう人からはなしかけられる。
「初めまして、リアン君。シズネの母のサクラ・サクラギです」
「フロードさんでは無いんですか?」
「夫が亡くなってしまったので今は旧姓を名乗っています」
なるほど。
「それでサリアはどこに…?」
「私達の代わりに戦っているんです」
シズネの母が答える。
またバレたんか!?
「ならまずいですね。もう俺達が来た事は知られているでしょう」
そんな事を話しているとサリアが追いついてくる。
「無事?」
「大丈夫よ」
俺の質問にサリアが答える。
「なら速くシズネちゃんの所に行こう!」
アヤメさんの号令で走りながらシズネ達がいる会議室を目指す。
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道中、警備員達をなんとか撒きながら会議室に到着し、ドアを開ける。
「シズネ…?」
「お母…さん…?」
お互いに名前を呼び合うとシズネは走り出し抱きついた。
「お母さん!無事で良かったです…!」
「シズネも色々迷惑かけてごめんね…」
親子が涙ぐみながら話す。今まで会えていなかったらしいから余計にだろう。
感動の再会だな、良い話だ…と思っていると口を出してくる輩がいた。
「おい!貴様らは何者だ!ここは部外者以外立ち入り禁止だぞ!」
さっきまでヘレン先輩と話し合いをしていた相手だ。
かなりのデブだ。
「この子達はうちの生徒です。体調不良で医務室に行っていた子達ですよ」
「小癪な!」
デブは侵入されていた事に気づくと声を荒げる。
「警備員!こいつらを捕えろ!」
その掛け声と共に警備員が突入してくる。
「いいんですか?外国の話し相手を拘束して。それも
「ぐっ…」
デブは苦い顔をする。意味を理解したのだろう。
警備員達の動きが止まった。
しかしヘレン先輩は尚も喋り続ける。
「学園では明らかにそちら側に非がある。それは他の国にも知られているはずです。そして今私達を拘束すれば、それは口止めをしたという憶測が立つのでは?」
嫌なとこ突いてくるな〜。流石カードゲーマーだ。
ヘレン先輩は悪い笑みを浮かべまだ喋り続ける。
「ましてや自国の皇族を監禁し脅迫していたとは、他の国が知ればどう思うでしょう?」
「いやいや、それはアザミノという男が勝手にやっただけの事。私達は関与してまいせんぞ」
デブが自分達は関与していないと言う。
「それはどうでしょう?シズネさんはこちらの証人になってくれると証言を貰っています。ただの役人の言葉と皇族の血を引くシズネさんの言葉、人々はどちらを信じるでしょう?」
「…」
デブはヘレン先輩を睨みつけるだけで言葉を出せない。
「そして今!この場に被害者本人がいる!」
ヘレン先輩は突然大きな声で威嚇する。
「私達の要求はシズネ・フロードとサクラ・サクラギの引き渡しです!」
「クソガキが!大人を舐めやがって!」
デブが本性を表し暴言を吐く。
「おい!キクチはどこだ!あいつは何をしている!?早く呼び出せ!」
デブが大声で部下に命令する。
そこに救護班の服を着た報告員が入ってくる。
「太藺(ふとい)様!報告です。チェインによる手足の欠損者6名。その内にアザミノ様も入っております」
「くそ!あの男自信満々だった癖に負けたのか!」
「そして死者一名」
「馬鹿か。軍人などただの手駒だ。どうでもいい!」
「しかし…その…」
報告員は焦ったように言い吃る。
「死者は…キクチでした…」
「…は?」
デブの顔が驚愕に染まる。
「あの男が負けたのか!?」
「分かりません。しかしチェイナーで首を落とした形跡がありました。なので恐らくは…」
デブは驚いた顔のまま俺達の方に顔を向ける。
途端にまたドアから人が勢いよく入ってくる。
「おいガキ!さっきはよくも僕の足を切り落としてくれたな!」
お坊ちゃん風のキノコ頭が入って来た。キノコ頭は足を布で巻き車椅子に乗っている。
確かシズネの母親の部屋にあった予備の車椅子だ。
「アザミノ様!無理に動いては足の傷が塞がりません!」
救護班の男がアザミノという男を心配する。
「うるさい!」
アザミノはシズネを睨みながら合図を言う。
「おい!お前ら、やれ!」
アザミノがそう言うと軍服を来た男達がシズネを囲み、一人が首にチェイナーを突きつける。
「お前が龍鎖を持ってるガキだとは知らなかった。こいつの命が惜しければ龍鎖を渡せ!」
アザミノが大声で脅迫し始める。
「サクラ!お前もだ。隠してる
全員に緊張が走る。シズネの首にチェイナーを巻かれたら、あとはどちらかが死ぬまで鎖は外れない。ここは大人しく従った方が良い。
「分かったわ」
「分かりました」
サリアとシズネの母が了承する。
サリアがデッキから、シズネの母は車椅子のボタンを押すとタイヤからカードが出てくる。
「チッそんなとこに隠してたのかよ」とアザミノは一人愚痴る。
「二人共渡しては駄目です!」
全員がシズネの方を向く。
「お前は黙ってろ!」
キノコ頭が声を荒げる。
「私は大丈夫です。サリアさん!お願いがあります。母をグランミディアに連れて行って下さい!」
サリアは悩む様子を見せる。
サリアは強い視線を感じていた。シズネの覚悟を感じる。
熱い友情を感じる。良いね!
サリアは決断する。
「分かったわ」
そう言ってシズネの母からカードを貰いアザミノの前に向かう。
「私は友達を見捨てない」
そう言うと机に二枚のカードを置く。
アザミノが机に飛びつきカードを奪う。
「遂に…!遂に僕の手に!鎖のカードが!しかも二枚!」
アザミノはカードを眺め独り言を呟く。
「これで私の地位も確約される!」
「や、やりましたな!アザミノ殿!これで我ら血統派の発言力も増すというもの!」
さっきまで静かにしていたデブが急に元気になる。
恐らく鎖のカードを手に入れた功績に自分も貢献したと示したいのだろう。
しかしサリア…自分のカードを渡すのはカードゲーマーとして0点だ。
俺は白い時計を突き出すと時計から鎖が伸びる。
鎖はシズネを囲んでいる軍人達のチェイナーに絡み付き俺の下に集まってくる。
「何が起きた!?」
全てのチェイナーが手許に来たのを確認すると軍人共やアザミノの足に片っ端からチェインを撃っていく。
この盤面でシズネ達を守る為には全員倒す他無い。
それにこっちの方が、沢山チェイン出来る!
「全員かかって来いや!纏めて案山子にしてやるよ!」
アザミノには嫌がらせとして恐らく治したばっかの足に鎖を巻き付けてやった。
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軍人共は徹底的に潰した。最後は…アザミノ。
こいつは鎖のカードを二枚持っている。今、一番危険な存在だ。
しかしアザミノは龍種のカードを持っていないのでカルナは考えなくて良い。
「今の僕に立ち向かうとは君、無謀だよ!」
「リアン・ミーサーク」
「アザミ・アザミノ」
「「チェイン バトル!」」
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