第28話 サクラ・サクラギ

リアンがキクスケ・キクチと闘っている頃、サリアとアヤメは最後のエレベーターの中に居た。


「どうしたんですか?」


サリアがアヤメの様子がおかしい事に気づく。


「あの男…見た事がある。確かアリシアで活躍した軍人で殺し合いをしたくて軍人になったっていう狂人だよ」


「アリシア?」


「異世界の事だよ。そしてあっちの世界はこちらの世界をフォームと呼ぶんだ」


「なるほど。それでリアンが心配なんですか?」


「サリアちゃんは心配じゃないの?友達なんでしょ?」


「心配はしてますが、物凄く対策していたので正直あいつが負けると思えないですね」


サリアは自信を持って断言した。


「そっか。信頼してるんだね」


フフフと笑いながらアヤメが答える。


チンッと音が鳴りエレベーターが最上階に着いたことを知らせる。


最上階は一本道だった。そこを真っ直ぐ走って最奥の扉に着く。


アヤメがカードキーで扉を開ける。


扉の中は小さな部屋だった。内装は病室のような雰囲気を感じる。それはベットに座っている女性があまりにも儚く見えたのも一因かもしれないとサリアは思った。


「サクラさん!」


アヤメがベッドに駆け寄る。


「どうしたのですか?そんなに慌てて」


「ここから速く出ましょう」


「どういう事ですか?」


シズネの母は状況が読み込めず慌てていた。


「助けが来たんです!娘さんもいますよ!」


「シズネが!?」


アヤメが興奮したように事情を説明する。


「分かりました」


事情を説明し終え、二人掛りでシズネの母を車椅子に乗せ部屋を出ようとする。


「待ちたまえサクラ。僕を置いてどこに行くというのかね?」


扉の前にパッツン頭のお坊ちゃんな男が立っていた。


「困るよ先生。部外者を勝手にここに連れて来ては」


「くっ」


もう少しというところで気付かれアヤメは声が漏れる。


「さて、そこの少女と先生は大人しく来て貰おうか?」


まずい。ここまで来て掴まっては全てが水の泡だ。


戦えるのは私一人。やるしか無い。


「私が抑えます。二人は速くリアンの所へ!」


そう言ってサリアはデッキを取り出し、ポロンからパネルを出す。


「僕とやると言うのかい?子供の分際で」


「ごちゃごちゃ言わずその腰のチェイナーを使いなさい!」


「これだから躾のなってないガキは…。お望み通りお前の足をもいでやるよ!」


男がチェイナーをサリアの足に巻き付ける。


「アザミ・アザミノ」


「サリア・コンティノール」


「「チェイン バトル!」」


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アザミノ5ターン目


サリアの盤面はコネクト5、フィールドには "疾風ゼイリード"と"龍の石像 カル"。手札は3枚、墓地4枚、ライフは130。


アザミノの盤面はコネクト4、フィールドにモンスターなし。手札は3枚、墓地2枚、ライフは90。


「ドロー」

「コネクトフェイズ」

「メインフェイズ」

「コネクト4で"花武者 五右衛門"をチェイン。"花武者 五右衛門"のチェイン時スキル、華舞。ソウルモンスターが植生種のモンスターならデッキから一枚ドローする」

「そして、コネクト5で"花武者 五右衛門"にWチェイン」

「華々しく散る花弁は神が咲く国カンザキに栄光と繁栄を齎す。国の勝利の為に!」

「"花武将 義宗"!」


蔦で作られている"花武者 五右衛門"を更に太い蔦が覆っていく。そして蔦を切り裂いて"花武将 義宗"が出てくる。


「さらにストーリーカード(コネクトアイテム)"妖花刀 薊瓊入媛(あざみにいりひめ)"を"花武将 義宗"に装備」


地面に咲く薊を"花武将 義宗"は引き抜く。すると薊から棘が生え掌を刺す。引き抜いた薊が変形し刀となる。


「バトルフェイズ、"花武将 義宗"で"疾風ゼイリード"を攻撃」

「"花武将 義宗"の攻撃時スキル、ニ腕。攻撃する時、結合力(c)20上げる」

「さらにソウルモンスター"妖花刀の鞘"のスキル、花紅柳緑(かこうりゅうりょく)装備モンスターの攻撃時、結合力(c)を10上げる」


"花武将 義宗"は右の二つの腕と左腕で"妖花刀 薊瓊入媛"を"疾風ゼイリード"の胸に突き刺し捻りながら引き抜く。


すると"疾風ゼイリード"は膝から崩れ落ちた。


サリアは40のダメージを受けライフ90。


「ククク勝ったな!」


アザミノが変な笑い声を上げながら勝ちを宣言してくる。


「何故そう言い切れるの?」


「僕の"妖花刀 薊瓊入媛"の装備モンスターは破壊される時、代わりに手札を一枚捨てれば破壊されない!お前は僕の手札が尽きるまで勝てないんだよ!」


「…」


「そして僕の才能は五種の中でも最強視覚系、次の一手ネクストビジョンだ!私は1ターン先の未来を見れるんだよ!」


サリアはこの時悟った、あ、こいつ自慢したくて情報をペラペラ喋っちゃう系だ、と。


「しかしあの女もさっさと鎖のカードを渡せばいいものを。僕が結婚して皇族となり皇族のみが使用を許されている鎖のカードを手に入れる筈だったのに!他の男と逃げやがって!」


アザミノは途端に怒り始める。


「あの娘と母親、両方に脅しをかけもう少しというところでお前らが邪魔しに来やがって!」


サリアはこいつが黒幕か、と確信する。


「ああ…忘れていた、ターンエンド」


アザミノはひとしきり話し終え満足するとターンを終了した。


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サリア6ターン目


"妖花刀 薊瓊入媛"のスキルなんて知ってるわよ…。カードショップ回ってる時見たし、対策もした。それに──。


「貴方の才能がどれだけ凄かったとしても、使いこなせなければ意味無いわよ」


「なに?」


「私が知ってる次の一手ネクストビジョンは全てのターンを見通せる。でも、貴方は1ターン先の未来しか見えてない」


サリアはデッキに手を掛ける。


「才能だけの人間に私は負けないわよ」

「ドロー」

「コネクトフェイズ」

「メインフェイズ」


サリアは目を閉じカードを持ち上げる


目を開くとサリアの瞳は燃えるように輝いていた。


「"龍の石像 カル"にコネクト6でWチェイン!」

「鎖の称号持つ龍の王よ、カルナの名の元に神を喰らえ!!」


「"龍鎖 チェインカルナ"」


龍の石像が鎖に覆われる。鎖の隙間から腕を出し噛みちぎりながら出てくるのは赤い龍の姿だった。


「"龍鎖 チェインカルナ"のWチェイン時スキル発動、龍鎖。相手モンスター1体の結合力を0にし、そのモンスターは攻撃できず、スキルを発動できないわ」

「私は"花武将 義宗"を選択」


"龍鎖 チェインカルナ"の背中から生えている鎖が"花武将 義宗"に絡みつき、縛り上げる。


すると"花武将 義宗"は力が抜けたように体がへたれる。


「更にストーリーカード(魔術)、"アリシア協定"をコネクト消費2で発動。相手モンスター1体を選択する。そのモンスターはこのターン戦闘で破壊されない。そして、自分のモンスター一体の結合力(c)を30上げる。"花武将 義宗"を選択、そして結合力(c)を上げるのはカルナ」


"花武将 義宗"は鎖で縛られた上に糸で体の隅々まで拘束される。


「バトルフェイズ、"龍鎖 チェインカルナ"で"花武将 義宗"を攻撃」

「ソウルモンスター"繋がれた龍像"のスキル、龍気。龍種のモンスターの結合力(c)を10上げる」


"龍鎖 チェインカルナ"の炎が"花武将 義宗"と"妖花刀の鞘"を同時に燃やす。


「何!?"妖花刀 薊瓊入媛"の効果が発動しない!?」


「アリシア協定の効果で"花武将 義宗"は破壊されないのよ。だから"妖花刀 薊瓊入媛"の効果も発動しない」


そして100のダメージをアザミノに与える。


winnerサリア・コンティノール


「さっさと退きなさい。私は二人を追いかけるから」


サリアはそう言うとアザミノを蹴り飛ばしドアを出る。


「この僕が負けるなんて!ま、待て!嫌だ!痛いのは嫌アアアァァァァ!」


部屋に絶叫が鳴り響くのを背にサリアは走る。

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