第26話 神咲
寝落ちした次の朝俺は寝不足だった。
うつらうつらとなる頭を無理矢理動かしながら空港に向かう準備は昨日済ませたが、基本彼方で手配してくれるらしい。
空港に到着し、ヘレン先輩と合流する。
集合場所にはヘレン先輩だけでなく他の生徒会の役員達もいた。どうやら今回カンザキに入国する理由としては選抜戦でのカンザキの介入に関する抗議として入国するらしい。
「やあやあ諸君、おはよう。昨日はどうだったかな?」
「何も無かったわよ」
サリアはそっけなく答える。
「楽しかったですよ。初めて友達の家に泊まったので」
「はぁ〜ぁう」
俺は大きな欠伸で答えた。
「あんた昨日夜更かししたでしょ?飛行機乗るってのに何してんのよ」
サリアが厳しい言葉を投げかけて来る。
「飛行機の中で寝れるから」
そう言うと速攻で飛行機に乗り込みさっさとアイマスクをして眠りに着いた。
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肩を叩かれる。アイマスクを外し、目を開けるとどうやらカンザキに到着したらしい。
飛行機を出てロビーに向かう。全員揃った事を確認し、遂にカンザキに入国した。
カンザキに入国して最初に見た風景は木々だった。この世界では珍しく街路樹が何本も立っている。
噴水や池など自然が沢山ある国だった。そして何より目を引くのが花だ。所狭しと並べられた花々が季節関係なく植えられている。
流石、花の国と言われるだけある。
俺達は自然を感じながらとある旅館に入った。この旅館を拠点として動くらしい。
シズネの母親の所在は城と呼ばれる場所にいるらしい。
城というのは一目で分かった。日本の城を現代建築と合わせた何とも不思議な建造物が一際目立って見えていたのだ。
姫路城みたいな城がタワマンみたいになっている。
ヘレン先輩はお偉いさん達に挨拶しに行かなければならないらしいので分かれて行動する。シズネは切り札として今日は連れて行かないらしい。
今日は挨拶をするだけらしく正式な抗議は明日するらしいのでシズネの母親を助けるのは明日だ。
今日はゆっくりカンザキを観光…なんて事はしない。
カンザキのカードショップに回りまくって対策を立てる。主要なカード、危険なカード、使えるカードを全部把握し、メタカードの算出とデッキの調整。
今日の目標が決まった。
俺はさっさと出かける準備をする。
「あんた何処行くの?」
「カードショップ」
「私も行く」
「私も行きます」
サリアとシズネもこれから戦うかもしれない事を考えついて来るらしい。
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めぼしいカードショップは粗方周り使えそうなカードを買い漁った後、旅館に帰るとどうやらヘレン先輩達も帰って来ているらしかった。
「どうでしたか?相手の様子は」
サリアが城の様子を聞く。
「軽くあしらわれたよ。学生だから舐められてるね。でも明日は違うシズネ君を使う。しかし…厄介なのが居たよ」
ヘレン先輩が苦い表情で言う。
「キクスケ・キクチ。戦場で数々の武功をあげた軍人だ。まさか帰って来ているとは…」
どうやら異世界帰りの軍人が居るらしい。異世界を戦場としている彼等はその地特有のカードを持っていたりする。
そういった理由で戦場帰りの軍人と戦うのは危険だと言われている。
しかしそいつを倒さなければシズネの母親を助け出せないかもしれないので気を引き締める。
そしてヘレン先輩から作戦を伝えられる。
内容は簡単に言うと、ヘレン先輩達が話し合いをしている間に俺とサリアでシズネの母親を連れ出す、という作戦だ。
話し合いを終えた後、みんな明日に備えて早く寝た。
しかし、俺はまだ寝ない。何故ならデッキの調整が終わっていないから。
今日のカードショップ巡りで手に入れた情報を基にカードを選出していく。
手に入れた情報は全て玄野が自動でデータ化してくれた。こいつ使えるな。
まず植生種のデッキの特徴としてターン毎に結合力(c)が上がっていくカードが多かった。
これは速攻気質のあるデッキだ。なので
そして、特質的なカードとしてはストーリーカード(コネクトアイテム)が強い。馬鹿みたいに結合力(c)が上がる。
主に装備して殴るデッキが多いのだろう。
しかし、これはサリアが以前使っていた"ガエルロック"で対処する。
『このデッキではライフを削り切れません』
玄野が進言してくる。
「確かに、じゃあやっぱこっちか?」
『悪くありません』
そうやって玄野と話しながらデッキを調整していく。
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次の日、俺達は城の前に居た。緊張してきた。
「じゃあ作戦通りに」
ヘレン先輩が確認を取るとみんなが首を振る。
そして城に入り全員分の許可証を貰う。
そして作戦通りに俺が体調不良で医務室に行きたいと言い案内人と別れる。サリアは付き添い人として同行する事で抜け出す。
そしてエレベーターに乗ろうというところで…
「君達何してるの?」
白衣を着た女性に止められる。
「すいません。道に迷ってしまって…」
サリアがすぐさまフォローを入れる。
しかし彼女は目を細める。
「君達体調不良の子達でしょ、休む場所を用意してるから来な」
俺達はその言葉に従い彼女について行く。声を掛けられて顔を青くしたのが功を奏した。
ある部屋に着き、俺達が部屋に入るのを確認すると彼女は鍵を閉めた。
俺達はそれが何を意味するか理解しすぐにデッキを取り出せるように準備をする。
「まあまあ、そんなに殺気立たないで」
白衣の女性は余裕を持った表情で話を続ける。
「君達、サクラさんを助けに来たんだろ?」
図星を突かれて固まる。シズネの母親の名前はサクラ・フロードだ。
「何の事ですか?」
「惚けても無駄だよ」
惚けてみたが無駄だった。
「流石に怪し過ぎるよ」
速攻でバレたー!まずい!
「そんなに焦らなくても大丈夫だよ、私は君達の味方だ」
「え?」
サリアが疑問の声を出す。
「私の名前はアヤ・アヤメ。サクラさんの主治医をしている」
そう言って白衣の女性は俺達に握手を求める。
握手に応じるじ、サリアが質問する。
「それで味方ってどういう事ですか?」
「私はサクラさんの主治医だからサクラさんから今までの事を聞いたんだよ」
アヤメさんは苦しそうな顔をしながら話す。
「それで、娘さんの話をよくしてくれた。サクラさんの命を脅しに使って、娘さんが今も言いなりになっている事を知った」
アヤメさんは意思を持った表情を浮かべていた。
「だから、私はサクラさんを助ける為に動いていたんだ。そんな時に君達が来た」
なるほど。
「しかし私はチェインに自信が無いんだ…だから君達にお願いがある。サクラさんを救って欲しい!」
アヤメさんが頭を下げる。
俺とサリアは顔を見合わせた。
「分かりました。必ず助けます」
アヤメさんは希望を見出したような表情をした。
「ありがとう!私も協力するからよろしく頼むよ!」
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城のある部屋でヘレンは恰幅の良い男と対峙していた。
この男…私の胸ばっか見やがって!
しかしあの厄介な軍人の姿が見えない。嫌な予感がするな。
「今日はキクチさんはいらっしゃらないのですか?」
すると恰幅の良い男はニヤッと表情を変える。
「ええ、彼には重要な任務がありますからな」
クックッと笑いを堪える男にヘレンは目を細めた。
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