第25話 お泊まり回

寮の俺の部屋に帰って来た後、どうするか考える。


先ずは飯の準備だ。


「何か食いたい物ある?」


俺は前世で一人暮らしをしていた為、簡単な料理くらいなら作れる。料理を始めた理由は自炊をすれば無駄に金を使わずに済み、カードやパックを買えるからだ。


俺が質問をするとサリアは


「肉」


シズネは


「魚です」


と答えた。


我儘な意見に俺は再びこいつら何なの?という感想を持つ。


「どちらか一個にしろ」


「肉ね」


「魚です」


こいつら譲らないの!?


どっちか一個って言ってるのに防戦一方の勝負を繰り返すガキ共を尻目に俺はパスタを作り出した。


パスタは良い。安く、速く味も美味い。


俺は基本朝昼晩全てパスタしか食べない。食べてる最中も頭の中でデッキを回しているので味も基本分かっていない。


二人の言い合いが終わりパスタが茹ってくると匂いに釣られ二人が顔を見せる。


「何でパスタなのよ」


「仕方無いですね」


結局二人はパスタで納得して座る。今度は二人で仲良くテレビを見始める。


仲良いのか悪いのか分からない。


ソースは塩乳というしょっぱい牛乳のような物を使ったカルボナーラみたいなやつだ。


皿に盛り付けできたと言うと直ぐに机に向かって来た。


そして皆んなで食べ始める。


「あんたパスタしか食べないじゃない。これ以外何食べてるの?」


「パスタ以外食べない」


「はあ?健康面考えてないの?」


「考えてない」


和やかに夜ご飯を食べ終わると次は風呂だ。俺は長風呂なので後に入ると言う。


するとサリアに「私達が入った後に何かするんじゃ無いの?」


と言われる。


それは無い。何故なら俺は風呂の中でもチェインの事を考え、頭の中でデッキを回している。


それが理由で長風呂になり偶にのぼせる。


それを言うとサリアにまだそれやってんの?と言われた。


サリアが泊まりに来た時一回のぼせたまま寝てしまいサリアに助けられた。


「今日はならないようにして」


しかしこれはもう癖になってしまっていて止めようにも止められない。これも依存症の弊害だろう。


二人が風呂に入り終え、俺も風呂に入る。


結局のぼせたが自力で出る事が出来た。


「危なかった…一瞬くらっと来た…」


リビングに戻ると二人は何か談笑しているようだった。


邪魔するのも悪いから俺は日課のネット対戦に篭る。


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良い時間帯になって来たので寝るか、と思いシズネをどうするか考える。


サリアは泊まる時いつも俺のベットを奪うのでそこで良いが…サリアの為に買った布団に寝かせるか。


しかし俺の寝る場所が無くなってしまった。仕方無いソファーで寝るか。


この世界の寮は前世とは違い金が掛かっているので豪華だ。前世の四人家族が暮らせるくらいの大きさがある。これも科学の進歩のおかげだ。


二人を寝室に入れ俺はまたネット対戦をする。


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従姉妹の采配でリアンの家に泊まる事になったサリアはリアンのベットを占拠していた。


枕に顔を埋めながらシズネに質問をする。


「どう?リアンは信用できるでしょ?」


「うーん。まだ分からないです」


「なんでよ?」


「頭の中チェインしか考えてなくて怖いです」


「それはまあ…」


サリアは言い返せなかった。


「サリアさんは何故リアンさんをそんなに信用しているのですか?」


「…あいつだけだったのよ」


シズネが何がですかと聞く。


するとサリアは意を決したように話し始める。


「昔、リアンをいじめてたのよ。でもそれが親や先生にバレて塾や家にも居場所が無くなった。よくある話よ」


シズネは静かに聞き役に徹する。


「あいつはそんなの関係無いとばかりに塾で話しかけてきたり、家に来てチェインしたりしたわ。親も子供がいじめていた相手が遊びに来て驚いていたわ」


サリアは昔を懐かしむように天井を見る。


「…でもそれで親とまた話すようになって…あいつだけは私を見てくれていた。それで私は助けられたのよ。だから私はリアンを信じてるし、困ったら助けたいと思ってるわ」


「そう…でしたか」


シズネは優しい笑みを浮かべていた。


「なら、サリアさんが信じるリアンさんを信じます」


「何それ?」


「私を助けてくれたのはサリアさんですから!」


と満面の笑みをシズネはしていた。


それから二人は談笑しつつ眠りに着いた。


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二人が寝静まった頃、俺はずっとパネルを弄っていた。こうでも無い、ああでも無いとデッキを弄っていく。


『そろそろ休んでは?お二人はもう寝てしまいましたよ』


「もう少し」


玄野は『はぁ…』といつもの事に溜息を吐きつつリアンを見た。


リアンは真剣な表情でパネルを触っていた。


『マスターはこれからどうするおつもりですか?』


「これから?うーん、カンザキに行ってフロードさんのお母さんを助けるんだろ?」


『危険では?それにマスターがカンザキに行く必要は無いかと』


「でも、行ったら沢山チェインできそうだしね」


『マスターは何も考えていないのですね…』


またも玄野は諦めたような声で言う。


そして何度か話をしたあとリアンは寝落ちした。


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リアンが寝落ちした後、玄野はこの人間と契約をしたのは間違いだったか?と考えていた。


しかし今までの人間達は自分の一族を馬鹿にするだけで理解しようとしなかった。


しかしこの人間だけはコンセプトを理解していた。だから契約をしたが結果は全然封印を解きに行こうとしないし厄介ごとを引き受けてしまった。


しかも流される様に。


しかしそれで良い。そう言う人間を探していた。


玄野にとって扱いやすい人間の方が都合が良かったのだ。契約をする時、チョロと声に出そうなのを何とか我慢した。


『マスター。私の計画のために働いて下さいね?』


リアンの腕に巻き付いていた時計が怪しく水色の光を放っていた。

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