第21話 シズネの過去

スタジアムに向かう道中、どこの国かも分からない人間に勝負を仕掛けられたがヘレン先輩が全員返り討ちにした。ヘレン先輩強い!俺もいつかやってみたいな。


「そういえば選抜戦の日、サリアに大変だったって聞いたんですけど何があったんですか?」


「サリアから聞いてないの?」


「はい」


「まったくあの子は…」


「どうかしたんですか?」


「あの子は全部一人で終わらせる気なんだよ」


ヘレン先輩はそう言って選抜戦の日の事を話してくれた。


「あの後、生徒会専用の飛行機でウメハラが君を探しに来たんだよ。それでさっき説明したチェイナーを持ち出して来てね。危うく犠牲者が出るところだったよ」


確かにあんな場で腕や足が引き千切られていたら大変な事になってたな。


「それで、サリアがウメハラを押し倒してシズネが裏切り者だって言ったんだよ」


カルナを知ってるのは俺とサリアとシズネとグレイ。だが何故グレイは候補から外れたんだ?


「グレイがカンザキに加担してる可能性は無いの?」


「グレイ君の国はグランミディアと同盟を組んでいる。それに実際に会った事もある。あまりああいう事に加担するような人間には見えなかったよ。現にあの後、応援としてオーザンの飛行機が来てくれたからね」


「なるほど」


「それでシズネ・フロードについて調べたんだよ。出生記録や戸籍を。でも分かったのは普通のことだけ。戸籍はグランミディアで間違いなかった」


ヘレン先輩は真剣な表情をする。


「でも、一つ気になる点があった。彼女の出生記録が無かったんだ」


出生記録が無い?どういう事だ?


「出生記録が無いなんて事あるんですか?」


「普通は有り得ないよ。でも一つだけ可能性があるとすれば…戦争孤児だ」


戦争孤児…?


「それって異世界で戦争してるって言う…」


「そう、そして出生記録が無い理由は彼女が異世界で生まれた可能性がある」


「じゃあシズネは…」


「恐らくカンザキ人だ。確証はないけど」


==================================


私は異世界という場所で生まれました。両親は不便だと言っていましたが私はそんな自然に囲まれているこの世界が好きでした。


両親は優しかったです。父は体が大きくいつも肩車をして遊んでくれたし、それを見ていた母の笑顔はとても優しかったです。


しかし、母と父は同じ国の出身では無いそうでした。敵国同士で戦場で出会い、そして私が生まれました。


でも、戦場で逃げた人間を国は許さず父と母を追いかけました。


父はグランミディア人で母はカンザキという国の生まれらしかったのです。


そんな父と母は逃亡先として異世界で生きる事を決めました。


そんなある日悲劇は起きました。


何処の誰かも分からない人間が急に家に入り込んだのです。


父が「クローゼットに隠れていろ!」と慌てて言うので従いました。


侵入者は父の首と母の左足に鎖を巻き付けました。


その時はあれがチェインだと分かっていなかったのです。


「娘の場所を言え」


「言うわけがないだろ」


「言わなければ家を燃やす」


と侵入者が言うと私はクローゼットから連れ出されました。


そして勝負が終わると鎖は父の首と母の左足を引き千切りました。


血が噴き出す様子を私は見ていることしか出来ず、恐怖で泣くことすら出来ませんでした。


そんな震える私と倒れている母を侵入者は担ぎ車に乗せると何処かへ向かいました。


==========================================


目的地に着くと私と母は降ろされ母は別の場所に連れて行かれました。


「お母さんを連れて行かないで」


私は泣きながらその場所に居た女性に縋り付きました。


今更父親が死んだ事と母が怪我をしていた事を思い出し涙が止まらなくなります。


「大丈夫だよ。お母さんは怪我を治しに行ったんだよ」


と優しい口調で言われました。


そして女性は、母はこの国の皇族で下賤な男に騙されていた事。取り戻す為に父を殺した事を語りました。


「そんなわけ無いもん。お父さん優しいもん」


泣きながら抵抗するが子供の言う事を素直に取り合おうとはしません。


そして私にスパイとしてグランミディアに潜入する事。従わなければ母を殺す事を言われたました。


父が死んだ今、母だけが救いでした。


だから私は承諾しました。


車で異世界のグランミディアの領の近くに降ろされます。


そこから徒歩でグランミディアの戦場につく。


彷徨っている私を近くを通りかかった男性が私を保護し、グランミディアにスパイとして侵入者しました。


そして選抜戦の日、私がカンザキの代表として代表戦に出場する事が決まりました。


命令は代表戦で優勝しろというもの。


無茶な命令だと思ったがやらなければ母が殺される。


そして、代表戦準決勝まであと一時間となった。


相手はサリア・コンティノール。いつもあの男と一緒にいる女子。


私は驚きました。代表戦に出て来るのはあの男だと思っていたのですから。名前も覚えていない、しかし何故か気に食わないあの男。


けど、勝つのは私です。相手なんてどうでも良いのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る