第19話 機械仕掛けの契約
「私が…負けた…?カンザキに生まれた選ばれし人間のこの私が?」
嘘だ!と叫びながら暴れ始める。
しかし段々と怯えた様子になる。
「嫌だ…嫌だ。止めてくれ」と縋るように。
俺が何の事か分からずに疑問に思っているとウメハラが左手に装着している装置から鎖が飛び出す。俺の左手に巻き付いていた鎖だ。
ウメハラは鎖が抑えようと掴むが暴れる。
鎖はウメハラの手から逃れると一気に暴れ始め周りの倉庫や物にぶつかる。
周りには工事中で吊り下がっている物もある為危ないなと思いながら逃げようとする。しかし次の瞬間…。
突如鎖がウメハラの左手に巻き付く。
ギリギリと腕を縛り上げでいく。
グギッという腕が折れる音と共に絶叫が上がる
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」
しかし鎖は縛り付ける力を上げていく。
そして遂に…グシャァァと腕が引き千切られた。血が噴水の様に噴き出す。
またも絶叫が上がる
「あがぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛!!」
俺は突然の事に驚き、えぇ…と困った表情をする。そして思考する。
「まぁいっか」
俺じゃなくて良かった!
とりあえず緊急車を呼ぶ。緊急車とは救急車より速くて万能な車だ。今時病院では無く緊急車で事足りる事が多いらしい。
ウメハラは痛みで気絶してしまった。
止血の仕方は分からないが制服を脱ぎ腕を縛り手で傷口を抑える。
いつの間にか鎖は装置の中に戻っていた。
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緊急車が到着しウメハラは車の中に運ばれて行く。今ならまだ腕が繋がる可能性があるらしい。凄いね未来。
病院に搬送される緊急車を見送り、血塗れの制服を持って…思い出す。
サリアの試合はとっくに始まっている。
「やっべ」
しかしこの血塗れの格好で今から行っても迷惑を掛けるだけだ。
ここは素直に帰って謝ろう。帰り道に言い訳でも考えるか。
歩き出すとギギギギと不穏な音が聞こえて来る。
ふと上を見るとはるか上空から鉄骨が落ちて来るのが見えた。
さっき暴れた鎖がぶつかり不安定になっていたのだろう。
「やっべ」
俺は自分で言うのも何だが頭の回転が速い。しかし反比例するように運動神経はとても悪い。
だからこういう状況に陥った時、起こる事がある。
"見えているのに体が動かない"である。
動いたとしてもこのスピードでは間に合わないという事が理解出来る。
この鉄骨が落ちて来る一秒一秒、思考回路が回る。
あ、母親の顔が見えて来た。
あ!これ違う!俺の頭の回転が速いんじゃない!走馬灯見てるだけだ!
終わった…と思ったところで俺のポケットから鎖が飛び出し鉄骨を弾く。
ガンッ!
金属と金属のぶつかる音が鳴り響く。
ガシャンガシャンと弾かれた鉄骨が横に落ちて来る。
次は何処に電話すれば良いんだよ…
『初めましてリアン・ミーサーク』
女性の電子音声が頭に直接響く。
「へ?」
『ポケットを確認してください』
俺は言葉に従いポケットを探ると先程まで無かった白い時計が出てきた。
「先生!?」
『私は貴方の先生ではありませんが?』
「ごめん。何でもない」
びっくりした!前世でお世話になったスマホに入ってる何でも教えてくれる先生の電子音声が聞こえてきた。
『私の名前は"
「黒乃?」
『イントネーションが違います。クロノです』
「玄野?」
『そうです』
へぇー珍しい、日本の名字みたい。
「そういえば玄野ってカードじゃん!何でチェイン中じゃないのに実体化してるの!?」
俺は興奮気味に質問する。
『私がオリジナルだからです』
「オリジナル?」
「チェインのカードとは元々私のように実在しています。それをカードに封じコピーされた物を貴方達が使っているのです」
「じゃあその印刷元って事か」
『はい』
ならそもそもカードは何処から来てるんだって話になる。この世界の仕組みなんて考えた事無かった。
『色々質問があると思いますが詳しい話は家に帰ってから答えましょう』
俺は鉄骨が落ちた事など忘れ、ついでに代表戦の事も忘れて家に帰った。
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家に帰って来た俺は血塗れの制服を洗濯機に入れ、シャワーを浴びる。
この世界の洗濯機は凄い血液程度直ぐ落とせる。未来って凄い。
「さっきモンスターは実在してるって言ってたけどモンスターって何処にいるの?」
『異世界です』
「へ?」
異世界?また異世界?俺もう転生したよ?いやでも世界が複数ある方が納得しやすいか?
『別の世界に私達は実在していて、それを貴方達の世界の人間が
それ拉致誘拐じゃない?
しかし、カード化するって前世のアニメだと悪役がやってたな。
「カード化は抵抗出来ないの?」
『出来ません。しかし一度カード化され元に戻されたモンスターは
じゃあモンスター取り放題じゃん。
「なら何でこの世界にオリジナルが玄野以外居ないの?」
『契約をしているからです』
「どんな契約?」
『我々のカード化を定期的にさせる代わり、其方の世界は勝手に私達をカード化しないという契約です。しかし、その契約は人間同士のもの、私達モンスターは当て嵌まりません』
俺はシュガーコーヒーを飲みながら話を聞く。
『そこで私達は此方の世界の情勢に乗っかり、種族毎に此方の世界の国と契約をしたのです。そして、その契約の証として渡されるのが鎖の名を持つカードです』
鎖の名を持つカード?
「それって"龍鎖 チェインカルナ"とか?」
『はい。名前の前に種族の特徴を持つ字に鎖をつけた名のカードです』
なるほど!だからカルナはあれだけ狙われていたのか!
カルナを手に入れれば龍種との契約を結べる。
そしてこの国に龍種のカードが多い理由、他の国は別の種族のカードがあり龍種のカードが無い理由の疑問が解けた。
なら俺はかなりまずい状況ではなかろうか。今カルナは俺が持っていると思われている。
ていうかお父さんは何でそんなカード持ってたんだよ。
『そこで我が種族も契約を結びに来たのです』
「へ?ああ、うん」
『リアン・ミーサーク、貴方の試合を観ていました。素晴らしい試合でした。』
「それは、ありがとう」
『貴方が私を使いこなすのを観て貴方に一つ頼みがあります』
「何?」
『私達の種族と契約を結んで頂きたいのです』
「へ?国と契約をするんじゃないの?」
『私達に必要なのは国では無くチェインの強い個人です』
「でも、鎖のカードって狙われるからなー」
『なら私を手放しますか?』
「契約します」
『では契約を締結します。これよりリアン・ミーサークをマスターと定め我等金属生命種はリアン・ミーサークの指揮下に入る事を宣言、契約内容は
やばい普通に詐欺られた。何だよ封印の解放って。
でも、折角手に入れた”
「まぁいっか」
『これからよろしくお願いしますね?マスター』
そう言うと玄野は時計の側面から鎖を伸ばし右手に巻き付き腕時計となった。
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